🎻・🎼『とある御夫人の想い出話』
娘の言うことは最もで、そう思うのは当然だ。誰だって、そんな悪印象からどうして互いに想いを寄せ、結婚に至ったのか謎に思うに違いない。
「おとうさんのほかにも、いいひといっぱいいたんでしょ?」
容姿は自分似なのに、こういうはっきりとものを言うところは夫そっくりで、香穂子は苦笑する。
もし、理由があるとするなら──。
恐らく、初めて彼のヴァイオリンを聴いたあの時から、ずっと……。
言うことはきついし。堅いし。冗談は通じないし。すぐ怒るし。無愛想だし。
絶対に、あり得ないとも思っていたのに──。
「それでも、おとうさんを好きになった」
「そうね。確かにいたよ」