🌸『盗賊の巻』

 あかねの冷静な態度に、盗賊はペースを崩される。
 そんな彼をよそに、あかねは話しかける。
「私は元宮あかねです。あなたの名前は?」
しきみ……」
「年は?」
「十六……」
「私と同い年だぁ。偶然だねぇ!」
 あかねにつられ、問われるままについ名前と年齢を喋ってしまった。
「はい、樒君。お茶」
「じゃなくて、あん──」
「ねぇ、樒君」
 樒の言葉を遮るように、あかねが口を開いた。
「なんだよ?」
「炊事場の扉が開いているよ。立て籠っているのに、そこから入られるよ」
 樒は急いで炊事場に向かう。
 あかねの言葉通り、炊事場の扉が開いていた。
 扉を閉め、葛籠などを高く積む阻塞をし戻ってきた樒は、あかねに尋ねる。
「あんた、どうして教えたんだよ!?」
「だって、おもしろくなくなるから」
「は……?」
 あかねの人質とは思えない発言になに考えてんだ、この女と思った。
 その頃、八葉たちはイノリの報告を待っていた。
 そこにイノリが帰ってきて、永泉が尋ねる。
「どうでしたか?」
「だめだった……。扉は完璧に閉じられてた」
「くそっ!」
 天真は怒りの拳を近くの木に打ち付け、頭を掻き毟る。
「もう、打つ手はないのかよ……」
 喉の奥から絞るように呻いた。
 解決策もなく、ただ時だけが過ぎ夕方になる。
 樒は外の様子を窺い、後ろを向くとあかねの姿なかった。
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