🌸『相容れる者』

『逢瀬』


 呼ばれた……。
 呼んだのは誰?
 あなた?
『外へ』
 ──外?
『河原院へ』
 その甘い声に誘われ、私は外を駆ける……。



 低く甘い声に導かれ、
 着いた場所は荒れ果てた屋敷だった。
 そしてあなたは現れた。
 私はあなたに近づいた。
『このように鬼の傍にいて恐ろしくはないのか』
 と美しいひとは言った。
 彼は京の人間ならざるもの。
『怖くない。怖かったら来ないよ』
『──ふ』
 すると、あなたは戯れに私を抱き寄せる。
 美しい鬼は私の耳元で、妖艶に、囁く。
『そなたをこのまま連れてきたいが、それでは少しつまらぬ。しばらく遊んでいるがいい。──怨霊相手な』
 そしたら、
『今日もう戻りなさい。逢瀬というのも悪くないからな』
 そう言って、美しい鬼は去って行った。
 その後ろ姿を見続けた……。
2/7ページ
スキ