🌸・🐲『蔵の巻』

■おまけ・蔵の外のあかね


「う~~ん……」
「どうかなさいましたか、神子様?」
 藤姫が隣を歩くあかねを見上げて尋ねた。
「なにか、大事なものを忘れてるような……」
 心で引っかかるものに、あかねは頭に人差し指を置き、首を捻る。
「大事なもの、ですか?」
 藤姫も頬に手を置いて、同じように首を傾げた。
「うん。そんなんだけど、それがなんなのか思い出せなくて」
 左右に首を傾げて、しばらく考え込むあかねだったが──。
「まっ。思い出せないってことは、大したことじゃないかも」
 そのうち思い出すだろうと、笑顔で軽く思い直しあかねは、藤姫と共に土御門殿へと戻っていってしまうのだった。


──今度こそ、おしまい。
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