🌸・🐲『蔵の巻』

 和やかな空気に包まれた中、ゆっくりと扉が開かれる。
「神子様ー。蔵の掃除は終わりましたか?」
 扉を開けたのは藤姫だった。彼らとって、まさに救いの女神登場だった。
「藤姫ちゃん!」
 あかねは藤姫に駆け寄り、状況を説明した。
「わかりましたわ。取っ手は修理の方に出しておきますわ」
「ごめんね藤姫ちゃん」
 藤姫は「いいえ」と首を振った。
 彼女の心の広さに、あかね感謝し笑顔を向けた。
 それから八葉たちの方を見る。
「それじゃみんな、先に出るね」
 あかねと藤姫を見送った彼らは笑っていた。
「本当、不思議な方だね。我らの姫君は」
「ええ、本当に」
 一安心した彼らは、急に腹が減ってきた。
「なんか、お腹が減ってきちゃった!」
「俺、団子買ってきたから、みんなで食おうぜ!」
 八葉たちはイノリが買ってきた団子を食べはじめるが、詩紋が不意になにか気づき、後ろを向くと──。
「あ────!」
「どうした、詩紋!」
「扉が閉まってる──!」
「「なにぃぃぃぃぃ!?」」
 天真とイノリは急いで扉に駆け寄る。
「「あかね────────────!!」」
 天真とイノリの叫び声が蔵の内部に、虚しく響き渡る。
 そんなこと、あかねは知る由もなかった。


──終わり。

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