🌸・🐲『蔵の巻』

「ありがとうございます、神子殿」
「いえ」
「ありがとうね、神子殿。しかし、こんな所で神子殿が淹れてくれた茶が飲めるとは嬉しいねぇ」
 友雅の言葉に、あかねは赤面にする。
「そんな大したことしてませんよ」
 照れるあかねの頭を友雅が撫でる。
「神子殿はかわいいねぇ」
「もうー!」
「友雅殿、お戯れが過ぎますよ」
 鷹通が友雅をやんわりと窘める。
「わかったよ。今日はこの辺にしておくよ」
 友雅は少し残念そうな顔をしながら、茶を啜った。
 するとまた、人の足音が聞こえてきた。
 扉が開けられ、そこから顔を出したのは永泉と泰明だった。
「神子、ここにいたか」
「藤姫から、神子がここにいるいるとお聞きしまして」
 永泉と泰明が中に入ってきて、先ほどの鷹通同様に永泉が扉を閉めようとするが。
「スト────プ!」
 天真が永泉を止め、『どけ!』『どけ!』と身振り手振りで二人を退かせ、扉の所まで行こうとした時──。
「よう! あかねいるか? 団子買ってきたから、みんなと食おうぜ!」
 バタン!
 入ってきたイノリが、勢いよく扉を閉めた。
「あぁあああ!」
 天真は脱力し頭を抱え込み、その場に力なく膝を着く。
「なんだ、みんないるじゃん! 一緒に団子食おうぜ──って……」
 イノリはなんだか、ただならぬ空気を感じた。
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