🌸・🐲『蔵の巻』

「俺たちは、中に閉じ込められたんだ!」
「あっ! そうか」
 わかってもなお、冷静なあかねに天真はさらに唖然となった。
「お前……本当に状況を把握してんのか……!?」
「失礼だね、天真君。分かってるよ」
 ──あかね……お前……。
 天真は、あかねの天然っぷりに呆れるやら驚くやらで。
 それは頼久と詩紋も同じことを思った。
「さてと──」
 当の本人はそう言って、両手を叩き気合いを入れるとまた片づけをはじめる。
「考えてても仕方がないし、取りあえず散らかっている物を片づけようよ」
 あかねの言葉に天真たちも賛同して、片づけをはじめるのだった。
「ふーう。なんとか片づいたね」
「さすがに二度は疲れるな」
「こんなことで疲れるとは、まだまだ鍛練が足りないな」
 天真はムッとした顔で頼久を見た。
「ところで、今日は友雅さんたちどうしたの?」
「みんな、あとで来るとかって藤姫ちゃんが言ったよ」
「ここに?」
「うん」
「ってことは──」
 それを聞いて天真が、なにか思いついたように口を開く。
「どうしたの、天真君」
「友雅たちが来るってことは、考えなくても助けが来るってこと」
「なるほど」
 一安心したあかねたちは、詩紋の入れた茶をまた飲みはじめた。
 すると頼久がなにかに気づく。
「頼久さん、どうしたんですか?」
 あかねが尋ねる。
「近づいて来ます」
 足音は蔵の扉の前で止まった。
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