夢見る力

「んん……! んく……っ!」
 ぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱた。
 さっきよりも頬を赤くして力を入れて羽ばたかせるが先ほどより少しは浮いたが、あまり大差ない。
 疲れて地面に両足を着ける。
「ふっ。なかなか、てごわいじゃあねえか」
「「「「「「五センチしかういてないしっ!」」」」」」
 真弘を除く、珠紀を含めた六人が同時にツッコミを入れる。
「おれに、ひとちゅかんがえがある」
 そう言って、拓磨が一歩前に出る。
 拓磨の考えは、だるま落としの要領で木の幹だけを落として木を低くするものだった。
「お……らあ!」
 拓磨は、思い切り右の拳を幹に叩き込む。
 ご──────────ん!
 周りに大きな音が響いたが、木はびくともしなかった。
 …………。
「き、きょうはこれぐらいでかんべんしてやるっ」
 拓磨は小さく涙を目に溜めながら、赤くなった右手を擦りながら言った。
((((((とってもいたかったんだなあ……))))))
 拓磨の明らかな痩せ我慢に、みんなは気づいて脳内で同じことを思う。
「ここはぼくに、まかせてくだちゃい」
 三番手の慎司が前に出て、珠紀からヒナを受け取る。
「──ふゆう!」
 慎司が凛とした声で言葉を発すると、ヒナの身体が慎司の手から二センチだけふわりと浮き上がる。
「──ちょうやく!」
 言葉を発すると、一センチだけヒナが浮くのだが、それだけだった。
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