Caligula
ユートピア探し(主鍵)
2018/04/03 16:43主鍵現実
「ていうか、僕だって別にビールそこまでメチャクチャおいしいとは思ってないよ。まあ不味くもないけど」
「え、そんなもんですか?」
「うん。たまに飲みたいかなー程度だし、飲んだら飲んだでこんなもんかー、って思う」
ハタチになった鍵介は、お酒と言ったら甘いジュースのようなチューハイくらいしか飲まないけど、それでもたまに僕のビールをちょびっと舐めてみて、それから「うーん」みたいな顔をする。やっぱり、そんなにすぐおいしさが分かるようなものではないよな、と思いながら、僕は鍵介が返してくれたビールの缶を受け取る。
「お酒もいいけど、それより僕は鍵介が休みの日に淹れてくれるミルクティーがあれば幸せ」
「あんな簡単なのでいいんですか?」
「君ねえ、わかってないなあ」
鍋で沸かした温かい紅茶と牛乳に、たっぷりの砂糖とちょっぴりの生姜を淹れたミルクティー。もうすぐ休みが終わってしまう憂鬱な日曜の夜に少しの元気をくれる、世界一おいしいミルクティーだ。君が「あんなの」なんて言いながら簡単に作ってくれるものに僕がどれほどの価値を感じているのか、やっぱりはっきり言葉にしないとだめだな。
「その『あんな簡単なの』でどうしようもなく幸せになれちゃうくらい、僕は君のことが好きでたまらないって話だよ」