はじまり

「おはよう、オーナーさん。……なんだ?寝不足か?」
「>だ、大丈夫です!」
「そうか?クマがすごいぞ?」
とりあえず隠したつもりだったが、バレてしまった。
「今日はあまり遅くならないようにしよう。と、言っても……俺たちの見所は、夜にもあるんだが」
「>あ!夜景!」
「そうだ。夜景はビルたちがつくる景色。昼間は見上げない人たちでも、夜は見上げてくれるからな」
そんな会話をしながら、大名古屋ビルヂングについて行く。
朝のこの街は忙しない。皆ビルのことなんて気にせずに、職場や学校……自分の持ち場に急ぐ。
(今日は見学って言ってたけど、どこを見学するんだろう)
駅の前。大名古屋ビルヂングを背に、目の前のビルを見上げる。
(ええと、この双子みたいなビルがJRセントラルタワーズ。隣の四角いのがJRゲートタワー)
渡されたアナログ地図と見比べてみる。
「>気にしたことなかったですけど、ビルって大きくてかっこいいですね」
「……!ああ、そうだよな」
大名古屋ビルヂングが隣で頷く。

ビルに入る。会わせたい人がいるんだ、と大名古屋ビルヂングに言われてJRゲートタワーのエスカレーターに乗る。
「>ビル擬人ですか?」
「そうだ。フランクなヤツだから、気楽に構えていていいぞ」
JRゲートタワー……高級感溢れるそのつくりとは裏腹に、中にいるお客さんは若者や子連れが多い。最新の『バズる』店から全国チェーン定番の雑貨屋まで、気楽に買い物が楽しめる施設である。
「おお!すっげえ、これ『バズってる』コスメだよな?男でも使えるってのが、最新って感じだよな!」
店員に話しかけている、長身の男性。なんとなくだが、あの人がそうな気がする。
「ゲートタワー」
「ビルヂングじゃねえか!おっ、彼女連れか?お前にもついに出来たか……!」
「ち、違う違う。新しいオーナーだ。俺たちの」
「おおっ!あの話マジだったのかよ。昨日セントラルタワーズも話してたぜ。まさかとは思ってたけどよ……」
「さすが情報がはやいな」
「それが取り柄だからな。よろしくな!オーナーさん。俺様はJRゲートタワーだぜ」
褐色肌に真っ白なハットがよく映える若者だ。強気な瞳の色は赤である。
「>よろしくお願いします!」
「元気でいいじゃねえか。ビルヂング、セントラルタワーズの2人にはもう会ったか?」
「いや、それがまだなんだ」
「じゃあ、俺様が一番だな」
「ミッドランドスクエアに昨日会ってるぞ」
「うわ、アイツかよ〜……くう〜っ!また先越されちまった!悔しいぜ!」
「俺に負けるのはいいのか?」
「ビルヂングはほぼ同期だし、気になんねえよ」
なにか張り合っているらしい。
「で、何か買っていくかい?オーナーさん。今なら開店セールで安くなってるぜ。ミッドランドスクエアよりも安く買えるぜ!」
やっぱり張り合っているらしい……。
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