1つ目の『廃棄本丸』の対処
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「そうか……」
山姥切長義が自身に絡みついてきている百合を斬りほどくと、周囲の空気がズシリと一層重くなる。百合の花たちは強風に吹かれているかのようにざわめきだった。同時にどこかからつんざくような悲鳴や、なにかが大勢押し寄せてきているかのような足音が聞こえてきた。
新手かと音のする方を見るも、敵が来ている気配はしなかった。この裏庭以外は静かなままで、荒れ果てたままだ。
「もしかして、あなたは」
山姥切長義がこの本丸に来てからその身に起こったことといえば、百合の匂いで自身の存在が溶かされそうにはなったこと『それだけ』だ。破壊されるような脅威は何一つ起きていない。
山姥切長義は刀を納め、両の腕にゆっくりと近づく。
「すでに限界を迎えているのだろう?」
歩みを進めるたびに、それを阻止しようと百合の花が絡みついてくるが、すぐにぶちっと千切れてしまう。重い空気は変わらずそのままだが、まだ息はできている。怪異となってしまった両腕は、山姥切長義との距離が近づく度になにかを包み込んでいる手のひらに力を入れているようだった。
それはまるで、消して渡さぬように、離さぬように、離れぬようにとする意志そのもの。
周囲の音がさらに大きくなる。気配も実態もないのに、本丸内を荒らすように走る足音やどこかで交戦しているような声と刃のぶつかる音、そして時折、悲痛な声に交じり刀剣男士が折れる音が聞こえてきた。
山姥切長義は両の腕に触れられるほどの近さにまでくると、右手でそっと怪異となった審神者の腕を撫でた。
「あなたに俺を折る力は残っていないんだろう。この肥大してしまっている腕だって」
撫でていた右手をぐっと押し込むと、なんの抵抗もなく手は飲み込まれた。
「俺を騙すための幻覚になり果てている」
入り込んだ右手をそのままに、山姥切長義は両の腕の中心を見つめながら体ごと歩みを進めた。すると濃い霧の中に入っていくかのように、腕の中を歩んでいけた。
この時にはもう、山姥切長義の歩みを阻もうとする百合の花達は纏わりついてこなくなっていた。
ただやはり怪異そのもののの中を進んでいることもある、息苦しさはぬぐえなかった。山姥切長義は自身である刀の存在を、左手で鞘を触りながら確認する。
大丈夫、俺はここにいる。刀剣男士の俺はここに。
10分程度歩いただろうか。外観とはまるで異なる怪異の大きさに、山姥切長義は一抹の不安を覚えたが、それはすぐに払拭されることになった。
視線の先に、なにかきらきらと光っているものが見えた。
「ここにずっと、守られていたのか」
そこにはボロボロに折れた刀の破片が落ちていた。これがおそらく、この審神者が怪異になってまで守りたかったものなのだろう。
刀身だけでなく、刀装具もしっかりと残っていたのだが、どれを見ても敵からの攻撃を受けたのか傷がついていた。想像もしたくないが、おそらく脅威になると判断されて徹底的に壊されたと思われる跡だった。
「刀剣男士として……本科として、お前のこれからの最期を酷いものにはしないと約束しよう」
山姥切長義は自身の外套を外し、その上に砕けた刀や刀装具を拾い集めて丁寧に包み込んだ。
全てを集め終え、山姥切長義は両手で落とさぬようにしっかりと抱え込んだ。
「刀剣男士が最期を迎えるのは日常だ。だからこそ、その最期は大切に扱うさ」
山姥切長義が入り込んでいった怪異、両の腕は霧が風に流されていくようにふわっと消えた。息苦しさも緩和され、ハッと息を吐き出した。
「あなたの勇気にも敬意を示そう。怪異となってまで刀剣男士を守ろうとするその姿勢は……そうだな、俺達『刀剣男士』として誇りに思う」
山姥切長義が自身に絡みついてきている百合を斬りほどくと、周囲の空気がズシリと一層重くなる。百合の花たちは強風に吹かれているかのようにざわめきだった。同時にどこかからつんざくような悲鳴や、なにかが大勢押し寄せてきているかのような足音が聞こえてきた。
新手かと音のする方を見るも、敵が来ている気配はしなかった。この裏庭以外は静かなままで、荒れ果てたままだ。
「もしかして、あなたは」
山姥切長義がこの本丸に来てからその身に起こったことといえば、百合の匂いで自身の存在が溶かされそうにはなったこと『それだけ』だ。破壊されるような脅威は何一つ起きていない。
山姥切長義は刀を納め、両の腕にゆっくりと近づく。
「すでに限界を迎えているのだろう?」
歩みを進めるたびに、それを阻止しようと百合の花が絡みついてくるが、すぐにぶちっと千切れてしまう。重い空気は変わらずそのままだが、まだ息はできている。怪異となってしまった両腕は、山姥切長義との距離が近づく度になにかを包み込んでいる手のひらに力を入れているようだった。
それはまるで、消して渡さぬように、離さぬように、離れぬようにとする意志そのもの。
周囲の音がさらに大きくなる。気配も実態もないのに、本丸内を荒らすように走る足音やどこかで交戦しているような声と刃のぶつかる音、そして時折、悲痛な声に交じり刀剣男士が折れる音が聞こえてきた。
山姥切長義は両の腕に触れられるほどの近さにまでくると、右手でそっと怪異となった審神者の腕を撫でた。
「あなたに俺を折る力は残っていないんだろう。この肥大してしまっている腕だって」
撫でていた右手をぐっと押し込むと、なんの抵抗もなく手は飲み込まれた。
「俺を騙すための幻覚になり果てている」
入り込んだ右手をそのままに、山姥切長義は両の腕の中心を見つめながら体ごと歩みを進めた。すると濃い霧の中に入っていくかのように、腕の中を歩んでいけた。
この時にはもう、山姥切長義の歩みを阻もうとする百合の花達は纏わりついてこなくなっていた。
ただやはり怪異そのもののの中を進んでいることもある、息苦しさはぬぐえなかった。山姥切長義は自身である刀の存在を、左手で鞘を触りながら確認する。
大丈夫、俺はここにいる。刀剣男士の俺はここに。
10分程度歩いただろうか。外観とはまるで異なる怪異の大きさに、山姥切長義は一抹の不安を覚えたが、それはすぐに払拭されることになった。
視線の先に、なにかきらきらと光っているものが見えた。
「ここにずっと、守られていたのか」
そこにはボロボロに折れた刀の破片が落ちていた。これがおそらく、この審神者が怪異になってまで守りたかったものなのだろう。
刀身だけでなく、刀装具もしっかりと残っていたのだが、どれを見ても敵からの攻撃を受けたのか傷がついていた。想像もしたくないが、おそらく脅威になると判断されて徹底的に壊されたと思われる跡だった。
「刀剣男士として……本科として、お前のこれからの最期を酷いものにはしないと約束しよう」
山姥切長義は自身の外套を外し、その上に砕けた刀や刀装具を拾い集めて丁寧に包み込んだ。
全てを集め終え、山姥切長義は両手で落とさぬようにしっかりと抱え込んだ。
「刀剣男士が最期を迎えるのは日常だ。だからこそ、その最期は大切に扱うさ」
山姥切長義が入り込んでいった怪異、両の腕は霧が風に流されていくようにふわっと消えた。息苦しさも緩和され、ハッと息を吐き出した。
「あなたの勇気にも敬意を示そう。怪異となってまで刀剣男士を守ろうとするその姿勢は……そうだな、俺達『刀剣男士』として誇りに思う」