1つ目の『廃棄本丸』の対処
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山姥切長義が赤くなった鳥居をくぐれば、一瞬視界にグリッチノイズが走る。不快な感覚に目を細めたが、すぐに視界は開けた。
青い空が広がっていた。穏やかな風も吹いていて、その風に乗って百合の香りがした。動物や人の声、刀剣男士の気配は一切ない。ただただ穏やかに、百合の匂いが本丸内を満たしているみたいだった。
顔だけを動かしあたりを見渡せば、本丸を囲っていたであろう塀らしきものが見えるが、時間遡行軍との戦闘時に壊されてしまったのだろうか、ボロボロに砕けてしまい、もはや防衛の役割は果たせそうにない。
他にも屋敷そのものや柱など、見えるものすべてがボロボロではあったが、なぜか悲壮感は感じさせなかった。誰かが壊れてしまったものすべてに対して慈しみを抱いているような、不思議な感覚を抱かせられた。
「赤の管狐、この本丸の地図を」
呟けばジジッとした機械音がした後、山姥切長義の顔のすぐ下あたりにスクリーンが浮かび上がった。青一色ではあるが、この本丸を俯瞰して見せている地図だった。
地図を見るに今山姥切長義がいる場所はこの本丸の正門付近にあたる。そう大きくは見えなかった本丸なのだが、どうやら広大な裏庭があるらしい。
山姥切長義は手でスクリーンをさっと掃うような仕草をとれば、地図はすぐに消えた。
「失礼する」
一度深く礼をした。
グラグラになってしまった玄関の扉を開ければ、廊下を挟んですぐのところの壁が壊されていたせいで。中庭とつながってしまっていた。
「これは……」
中庭に植わっていたものは、真っ白な百合の花だった。それも地面が見えないほどに一面に咲き誇っていた。
本丸内に漂っていた香りの原因はこれかと中庭を眺めた。すべての花が裏庭のほうに向かって花を咲かせていた。
「赤い管狐、この本丸のゆがみの大本は裏庭だな。危険性は?」
また山姥切長義がつぶやけば、機械音がしたのちにスクリーンが浮かび上がる。そしてその画面には文字でこう書かれていた。
「『政府役員は全員帰還済、後に精神異常検知。死者は無し。』……なるほど」
山姥切長義はため息交じりにつぶやいた。
おそらく、怪異の有無が検知できないまま、職員がこの廃棄本丸に送られてしまったのだろう。実際、山姥切長義が政府に所属していた時に、怪異と対峙してしまい心神喪失、精神異常を起こす人間は少なくなかった。刀剣男士の中にでさえ、影響をうけることもあった。
「堀川国広が几帳面な人間でよかったよ、まったく」
山姥切長義が自身の本体を軽くたたく。自身の銘に刻まれた在り方がなければ、きっとすでに何かしらの影響を受けていたに違いない。
左右に分かれた廊下の左へと進んでいけば、最期となった戦闘の傷がすべて残っていた。大広間に残されたひっくり返されたかのように汚れている食事、刀傷のついた柱の数々、廊下に残る血の足跡や手形。障子は概ね破れ、壊れてしまっていた。
一つ一つに胸を痛めることはできなくなってしまった山姥切長義だが、かつてここで奮闘していた刀剣男士と、この本丸で共に戦っていたであろう審神者に心の中で祈りをささげた。
青い空が広がっていた。穏やかな風も吹いていて、その風に乗って百合の香りがした。動物や人の声、刀剣男士の気配は一切ない。ただただ穏やかに、百合の匂いが本丸内を満たしているみたいだった。
顔だけを動かしあたりを見渡せば、本丸を囲っていたであろう塀らしきものが見えるが、時間遡行軍との戦闘時に壊されてしまったのだろうか、ボロボロに砕けてしまい、もはや防衛の役割は果たせそうにない。
他にも屋敷そのものや柱など、見えるものすべてがボロボロではあったが、なぜか悲壮感は感じさせなかった。誰かが壊れてしまったものすべてに対して慈しみを抱いているような、不思議な感覚を抱かせられた。
「赤の管狐、この本丸の地図を」
呟けばジジッとした機械音がした後、山姥切長義の顔のすぐ下あたりにスクリーンが浮かび上がった。青一色ではあるが、この本丸を俯瞰して見せている地図だった。
地図を見るに今山姥切長義がいる場所はこの本丸の正門付近にあたる。そう大きくは見えなかった本丸なのだが、どうやら広大な裏庭があるらしい。
山姥切長義は手でスクリーンをさっと掃うような仕草をとれば、地図はすぐに消えた。
「失礼する」
一度深く礼をした。
グラグラになってしまった玄関の扉を開ければ、廊下を挟んですぐのところの壁が壊されていたせいで。中庭とつながってしまっていた。
「これは……」
中庭に植わっていたものは、真っ白な百合の花だった。それも地面が見えないほどに一面に咲き誇っていた。
本丸内に漂っていた香りの原因はこれかと中庭を眺めた。すべての花が裏庭のほうに向かって花を咲かせていた。
「赤い管狐、この本丸のゆがみの大本は裏庭だな。危険性は?」
また山姥切長義がつぶやけば、機械音がしたのちにスクリーンが浮かび上がる。そしてその画面には文字でこう書かれていた。
「『政府役員は全員帰還済、後に精神異常検知。死者は無し。』……なるほど」
山姥切長義はため息交じりにつぶやいた。
おそらく、怪異の有無が検知できないまま、職員がこの廃棄本丸に送られてしまったのだろう。実際、山姥切長義が政府に所属していた時に、怪異と対峙してしまい心神喪失、精神異常を起こす人間は少なくなかった。刀剣男士の中にでさえ、影響をうけることもあった。
「堀川国広が几帳面な人間でよかったよ、まったく」
山姥切長義が自身の本体を軽くたたく。自身の銘に刻まれた在り方がなければ、きっとすでに何かしらの影響を受けていたに違いない。
左右に分かれた廊下の左へと進んでいけば、最期となった戦闘の傷がすべて残っていた。大広間に残されたひっくり返されたかのように汚れている食事、刀傷のついた柱の数々、廊下に残る血の足跡や手形。障子は概ね破れ、壊れてしまっていた。
一つ一つに胸を痛めることはできなくなってしまった山姥切長義だが、かつてここで奮闘していた刀剣男士と、この本丸で共に戦っていたであろう審神者に心の中で祈りをささげた。