銀魂夢の短編集
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曇天という言葉が似合う日だ。大きく息を吸い込もうにも、空気全体が体にじっとりと張り付いているようで、吸えた気がしなかった。
今日も政府軍や天人達によって仲間が死んだ。そして同じように殺した。
私達に明るい未来がないことは分かりきっているが、それでもこの脚は、体は、魂は戦いを止めるけどことを許してくれない。
刀を突き刺しただけで、そこには何も無いお墓をぼんやりと眺める。どこかで無理矢理にでも止まれていたのなら、こんな運命にならなくて済んだんだろうか?この私の思考は、戦場において正しいものなのだろうか。
そんな問に誰が応えられる訳もないのに、こんなことに限って私の脚は、答えを欲するかのようにその場から動こうとしてくれなかった。
「おい」
「んー?」
「『んー?』じゃなくて。そろそろ飯の時間だとよ」
「もうそんな時間なんだ、そっか」
私はしゃがみ込んだまま、声のするほうに振り返った。するととても冷えてきたというのに、薄い着流し姿の銀さんが私を呼びに来てくれていた。この寒さだと雪でも降るのだろうか。銀さんの鼻の頭は少し赤くなっていた。
「そんな格好でさ、銀さん寒くないの?」
「そっくりそのままお前に返してやるよ。……戻ってきてからずっとこの墓地にいるだろ」
「……まあね。戦場から戻った後ってセンチメンタルな気分になっちゃってね!参った参った!」
元医療班にいた身としては、拠点に生きて戻ってきてくれることさえできれば何かしてあげれる可能性がある。だから帰ってきて欲しいと、何度も行ってきた。
けれど、実際の戦場はそんなに甘くなかった。
はじめ私が前線部隊に行くと言った時には仲間の皆に猛反対されたのだが、仲間を説得できるだけの力は身につけていた。だから今日、はじめて前線に出て戦った。
どれほどの人間が死んだ?帰ることも許されず、冷たい土の上に叩きつけられたまま放置されてる死体はいくつある?
この人は助からない、この人は今すぐ治療をすれば助かるが時間が無い、帰れさえすれば治療できるけど敵が多すぎるからきっと……。そんな光景をどれほど見たのか数え切れない。
「飛鳥はなんでまた前線に出ようなんて思ったんだよ」
銀さんが真面目な顔をして尋ねてきた。この顔の時は逃がしてくれないことを私はよく知っていたし、嘘が通用しないのも分かりきっていたので素直に応えた。
「もしかしたら助けられる人がいるんじゃないかって、夢見てたから」
「……」
「馬鹿でしょ?」
しゃがみこんでいた私は立ち上がって、銀さんの顔を見ないようにしたまま彼の手を握った。
この手の冷え方は、たぶん私に話しかけるタイミングをずっと見計らってたんだろうな。
「……指先が冷たいね、待たせちゃってごめん。もう行こう」
銀さんの顔が見れないのは、呆れられなくなかったから。戦場において助からない仲間を救おうとすることが、どれだけ無意味なのかをよく理解してる。死が決まっている人に施せるのもは何も無いことも、痛いほど分かっていると思っていたのに、自分の目で見るまでは理解しきれていなかった。
握っていた銀さんの手を離そうとすると、今度は銀さんから私の手を握ってきた。
指を絡ませる、という表現を使うには荒々しく不器用だった。
「飛鳥、お前は『馬鹿』のままでいろよ」
「なに、言って」
「そんでもし俺が『馬鹿』でいれなくなった時、そんのきゃ思いっきりぶん殴ってくれや」
『馬鹿』で入れなくなった時……。銀さんが何を言ってくれているのか、正確に受け取れたのかは自信が無い。
けれどもし、この先銀さんが疲れてしまって、仲間のことを助けられないことが「当たり前だ」と切り捨ててしまう日が来るのであれば、助走をつけて殴ってやろう。そう思えた。
落としていた視線を上に向け、銀さんの顔を見た。曇天の中でも曇らない赤い瞳が、私だけを見ていた。
そして気がついてしまった。
「……銀さん、鼻水出てる」
「はぁ!? え、ちょ、タンマ!! せっかくビシィッと飛鳥ちゃんの前でカッコイイ銀さんをお届け出来たと思ったのにー!!」
握ってくれた手をパッと話すと、手のひらで顔を隠していた。
なんだか締まらないな、と思いつつもそれでいっかと思わず笑ってしまった。
余程恥ずかしかったのか、それとも寒さなのか、なんだよ見るなよと耳が真っ赤になっている。
「あはは!ごめんね、ありがとう!夕飯食べて体あっためよ!」
そう言いながら銀さんの背中を押し、私はようやく脚を動かして墓地から離れることができた。
今日も政府軍や天人達によって仲間が死んだ。そして同じように殺した。
私達に明るい未来がないことは分かりきっているが、それでもこの脚は、体は、魂は戦いを止めるけどことを許してくれない。
刀を突き刺しただけで、そこには何も無いお墓をぼんやりと眺める。どこかで無理矢理にでも止まれていたのなら、こんな運命にならなくて済んだんだろうか?この私の思考は、戦場において正しいものなのだろうか。
そんな問に誰が応えられる訳もないのに、こんなことに限って私の脚は、答えを欲するかのようにその場から動こうとしてくれなかった。
「おい」
「んー?」
「『んー?』じゃなくて。そろそろ飯の時間だとよ」
「もうそんな時間なんだ、そっか」
私はしゃがみ込んだまま、声のするほうに振り返った。するととても冷えてきたというのに、薄い着流し姿の銀さんが私を呼びに来てくれていた。この寒さだと雪でも降るのだろうか。銀さんの鼻の頭は少し赤くなっていた。
「そんな格好でさ、銀さん寒くないの?」
「そっくりそのままお前に返してやるよ。……戻ってきてからずっとこの墓地にいるだろ」
「……まあね。戦場から戻った後ってセンチメンタルな気分になっちゃってね!参った参った!」
元医療班にいた身としては、拠点に生きて戻ってきてくれることさえできれば何かしてあげれる可能性がある。だから帰ってきて欲しいと、何度も行ってきた。
けれど、実際の戦場はそんなに甘くなかった。
はじめ私が前線部隊に行くと言った時には仲間の皆に猛反対されたのだが、仲間を説得できるだけの力は身につけていた。だから今日、はじめて前線に出て戦った。
どれほどの人間が死んだ?帰ることも許されず、冷たい土の上に叩きつけられたまま放置されてる死体はいくつある?
この人は助からない、この人は今すぐ治療をすれば助かるが時間が無い、帰れさえすれば治療できるけど敵が多すぎるからきっと……。そんな光景をどれほど見たのか数え切れない。
「飛鳥はなんでまた前線に出ようなんて思ったんだよ」
銀さんが真面目な顔をして尋ねてきた。この顔の時は逃がしてくれないことを私はよく知っていたし、嘘が通用しないのも分かりきっていたので素直に応えた。
「もしかしたら助けられる人がいるんじゃないかって、夢見てたから」
「……」
「馬鹿でしょ?」
しゃがみこんでいた私は立ち上がって、銀さんの顔を見ないようにしたまま彼の手を握った。
この手の冷え方は、たぶん私に話しかけるタイミングをずっと見計らってたんだろうな。
「……指先が冷たいね、待たせちゃってごめん。もう行こう」
銀さんの顔が見れないのは、呆れられなくなかったから。戦場において助からない仲間を救おうとすることが、どれだけ無意味なのかをよく理解してる。死が決まっている人に施せるのもは何も無いことも、痛いほど分かっていると思っていたのに、自分の目で見るまでは理解しきれていなかった。
握っていた銀さんの手を離そうとすると、今度は銀さんから私の手を握ってきた。
指を絡ませる、という表現を使うには荒々しく不器用だった。
「飛鳥、お前は『馬鹿』のままでいろよ」
「なに、言って」
「そんでもし俺が『馬鹿』でいれなくなった時、そんのきゃ思いっきりぶん殴ってくれや」
『馬鹿』で入れなくなった時……。銀さんが何を言ってくれているのか、正確に受け取れたのかは自信が無い。
けれどもし、この先銀さんが疲れてしまって、仲間のことを助けられないことが「当たり前だ」と切り捨ててしまう日が来るのであれば、助走をつけて殴ってやろう。そう思えた。
落としていた視線を上に向け、銀さんの顔を見た。曇天の中でも曇らない赤い瞳が、私だけを見ていた。
そして気がついてしまった。
「……銀さん、鼻水出てる」
「はぁ!? え、ちょ、タンマ!! せっかくビシィッと飛鳥ちゃんの前でカッコイイ銀さんをお届け出来たと思ったのにー!!」
握ってくれた手をパッと話すと、手のひらで顔を隠していた。
なんだか締まらないな、と思いつつもそれでいっかと思わず笑ってしまった。
余程恥ずかしかったのか、それとも寒さなのか、なんだよ見るなよと耳が真っ赤になっている。
「あはは!ごめんね、ありがとう!夕飯食べて体あっためよ!」
そう言いながら銀さんの背中を押し、私はようやく脚を動かして墓地から離れることができた。
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