1.紅桜編
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天人が一斉に襲い掛かってくる。
三人の中で一番初めに動いたのは芳野だった。そして素早く二人から距離をとるように敵を斬り、走った。
「芳野‼」
「大丈夫、死なない‼」
背中合わせではなく、一人で戦おうとする芳野に銀時が怒ったように名前を呼んだが、芳野は距離をとることをやめようとはしなかった。
そして案の定、一人孤立している芳野を狙おうと多数の天人が銀時たちから離れていった。
「アイツ‼」
「銀時、後にしろ。行くぞ‼」
「だァ、くそっ‼」
桂が走り出したことを確認してから、銀時は芳野から視線を外した。そしてすぐ左から斬りかかってくる天人を右から左、真一文字に切り伏せると、その体に残る回転力のまま体を回して、後方から襲い掛かて来ていた天人の一撃を刀で受け止めた。
天人と銀時の力は拮抗、それどころか銀時のほうが劣勢気味ではあったのだが、銀時は相手の受け止めていた一撃を自身の切っ先の方へと滑らせるように、柄を持つ左腕を上にあげた。そのことで天人の体勢が崩れたことを見て、銀時は上げた左腕はそのままに、両手で刀を構えた。天人も負けじと攻撃を防ごうとしたが、銀時は上段から真っすぐ斬るようフェイントを混ぜたかと思えば、横に天人の胴体を斬り捨てた。
直後銀時の正面からまたも天人が襲い掛かるも、銀時は蹴りを入れて相手を吹き飛ばし、追撃を入れるため駆け出した。
一方、桂も同じように天人の攻撃をいなしては反撃をしていた。正面からくる天人の斬撃を受け止めたかと思えばすぐに弾き返し、体勢が崩れたところに一撃を入れる。
しかし直後すぐに別の大型の天人が桂を襲った。なんとか一撃を受け止めた桂だったのだが、刀で受け止めたところでお互いぎりぎりとにらみ合うことしかできない具合だった。
その様子を見た天人が桂を後ろから斬り殺そうと武器を振り上げた。
そこに走りこんできたのは離れたところで戦っていた芳野だった。桂を切ろうとした天人を自身の刀で斬るも、入りが浅かったようでよろめくだけで生きていた。芳野が刀を構えなおしたところで銀時が横からその天人を蹴り飛ばした。
そして、銀時と芳野は一瞬目配せをして、蹴り飛ばされた天人を追うように駆け出す。
桂もその二人の跡に続くために、体いっぱいに力を込めて対峙している大型の天人の刀を弾き飛ばした。そして弾き飛ばされたことにより、がら空きとなった胴体を真っ二つに斬ると、桂も二人の元へと駆け出した。
「坂田くん」
「あァ⁉」
「この後の逃げ道、なんとなく確保してくるね」
「この状況で単独で動こうなんざ、余裕あるじゃねェか」
銀時と背中合わせで戦う芳野は、空に浮くこの船から飛び降りる覚悟を決めていた。現在の位置から船の端まで、かなり数の減った鬼兵隊、天人たちではあるがまだまだ強行突破するには多いほど残っている。
会話をしてはいるものの、敵からの攻撃の手が緩むことはなく、芳野は天人が横に振った剣を姿勢を低くして避けた後、脚を引っ掛けて転ばせた。
「余裕がないからやるんだって‼」
そしてそのまま天人の胸に刀を突き立てた。
芳野は桂がこちらに走ってきていることを確認した上で、現在の位置から最短の距離にいる天人を引き離すため、桂とすれ違うように駆け出した。
「芳野‼」
「大丈夫‼ 坂田くんをよろしく‼」
桂や銀時ですら力負けするような天人がいる中、芳野の体には確かに疲労が積み重なっていた。そのうえ自身が女であることを餌にして、二人よりも多くの敵を相手取っていたことにより、浅くはあるが受けた傷も少なくなかった。
芳野は天人と交戦しながらも、桂と銀時が合流したことを視界の端に捉えたた。
「皮一枚、生き残れそうってところかな」
天人を切り伏せながら、芳野はつぶやいた。もうあと20秒程度、おそらく時間を稼げば逃げ出す流れになるだろうと、芳野は奥歯を噛みしめて体に鞭を打った。
右から来る天人の剣が届く前に体に回転をつけながら切れば、斬った後からは血液が芳野の刀の動きに合わせて広がった。そのまま芳野は体を回して背後から襲い掛かってきていた天人の腹部をしっかりと指し、そのまま刃を横に寝かせると腹を裂くように横動かして体内から刀を抜く。痛みに耐えきれず、切り裂かれた天人は武器を手から落として仰向けに倒れこんだ。
「っ‼」
しかし、その倒れこんだ天人は痛みを堪えてすぐに起き上がり、背を向けた芳野に手を伸ばた。それは春雨にもかかわらず、人間の小娘一人にやられてしまったことへの怒りと、せめて一矢報いたいという思いからのものかもしれない。
芳野はすぐに振りむき、伸ばされた腕を避けた。そしてそのまま天人の腕を切り落とし、頭と胴を切り離すように一太刀入れた。
「熱くなんなって、必死すぎ」
容赦のない殺し方に、芳野を取り囲む天人が尻込み始めたその時、桂と銀時の声が聞こえた。
「高杉ィィィ‼ そーいうことだ!」
芳野は刀をその場に捨てると、二人を間に挟んだ直線上の船の端へと全速力で走り出す。
「俺達ゃ、次合った時は仲間もクソも関係ねェ‼ 全力で……」
「「てめェをぶった斬る‼」」
「せいぜい、街でバッタリ会わねーよう気を付けるこった!」
芳野が二人の場所までたどり着いたのと同時に、桂と銀時も同じ方向へと走り出し、そのまま船から飛び降りた。
船上にいる天人や鬼兵隊の人間たちは動揺し、三人が飛び降りた場所から下を確認する。
「ブハハハハ! さ~らばァァ‼」
彼らが下を見ると、エリザベスの顔がデザインされたパラシュートがふわふわとゆっくり降下していた。先ほどまでの重苦しい雰囲気をすべて消し去るような桂の笑い声に、船上では撃ち落とせ!と叫ぶ声が聞こえる。
銀時は左脇に芳野を抱えた状態のまま、パラシュートをつけている桂にしがみついていた。
「用意周到なこって、ルパンかお前は」
「ルパンじゃないヅラだ、あっ間違った桂だ」
「間違えることあるんだ」
「なに、伊達に今まで新選組の追跡をかわしてきたわけではない」
振ってくる砲弾をひらりとよけながら降下する桂の言葉の信ぴょう性は高かった。1点気になることといえばパラシュートのデザインなのだが、銀時と芳野は口に出すことはしなかった。
「しかし」
桂は自身の胸元から、斬られた冊子、かつての学び舎で使っていた教科書を取り出した。
「まさか奴もコイツをまだ持っていたとはな……」
「高杉くんも、か」
「……始まりはみんな同じだった。なのに、随分と遠くへ離れてしまったものだな」
芳野の知っている高杉と、桂、銀時が知っている高杉はおそらく別だろう。しかしそれでも、今回のこの紅桜の一件で攘夷戦争時代の彼から大きく反れてしまっているような、それでいて当時の思考にとらわれ続けているような……。もう二度と背中を預けて戦うことはできないのだろうと思えてしまった。
「……坂田くんは」
「あ?」
「まだ持ってるの?」
ぐちゃぐちゃな気持ちをごまかすように芳野は自身を抱える銀時に尋ねた。
「ああ、ラーメンこぼして捨てた」
びゅうっと吹いた冷たい海風が、銀時の本音を飛ばそうとしているようだった。
―――紅桜編 完了―――
三人の中で一番初めに動いたのは芳野だった。そして素早く二人から距離をとるように敵を斬り、走った。
「芳野‼」
「大丈夫、死なない‼」
背中合わせではなく、一人で戦おうとする芳野に銀時が怒ったように名前を呼んだが、芳野は距離をとることをやめようとはしなかった。
そして案の定、一人孤立している芳野を狙おうと多数の天人が銀時たちから離れていった。
「アイツ‼」
「銀時、後にしろ。行くぞ‼」
「だァ、くそっ‼」
桂が走り出したことを確認してから、銀時は芳野から視線を外した。そしてすぐ左から斬りかかってくる天人を右から左、真一文字に切り伏せると、その体に残る回転力のまま体を回して、後方から襲い掛かて来ていた天人の一撃を刀で受け止めた。
天人と銀時の力は拮抗、それどころか銀時のほうが劣勢気味ではあったのだが、銀時は相手の受け止めていた一撃を自身の切っ先の方へと滑らせるように、柄を持つ左腕を上にあげた。そのことで天人の体勢が崩れたことを見て、銀時は上げた左腕はそのままに、両手で刀を構えた。天人も負けじと攻撃を防ごうとしたが、銀時は上段から真っすぐ斬るようフェイントを混ぜたかと思えば、横に天人の胴体を斬り捨てた。
直後銀時の正面からまたも天人が襲い掛かるも、銀時は蹴りを入れて相手を吹き飛ばし、追撃を入れるため駆け出した。
一方、桂も同じように天人の攻撃をいなしては反撃をしていた。正面からくる天人の斬撃を受け止めたかと思えばすぐに弾き返し、体勢が崩れたところに一撃を入れる。
しかし直後すぐに別の大型の天人が桂を襲った。なんとか一撃を受け止めた桂だったのだが、刀で受け止めたところでお互いぎりぎりとにらみ合うことしかできない具合だった。
その様子を見た天人が桂を後ろから斬り殺そうと武器を振り上げた。
そこに走りこんできたのは離れたところで戦っていた芳野だった。桂を切ろうとした天人を自身の刀で斬るも、入りが浅かったようでよろめくだけで生きていた。芳野が刀を構えなおしたところで銀時が横からその天人を蹴り飛ばした。
そして、銀時と芳野は一瞬目配せをして、蹴り飛ばされた天人を追うように駆け出す。
桂もその二人の跡に続くために、体いっぱいに力を込めて対峙している大型の天人の刀を弾き飛ばした。そして弾き飛ばされたことにより、がら空きとなった胴体を真っ二つに斬ると、桂も二人の元へと駆け出した。
「坂田くん」
「あァ⁉」
「この後の逃げ道、なんとなく確保してくるね」
「この状況で単独で動こうなんざ、余裕あるじゃねェか」
銀時と背中合わせで戦う芳野は、空に浮くこの船から飛び降りる覚悟を決めていた。現在の位置から船の端まで、かなり数の減った鬼兵隊、天人たちではあるがまだまだ強行突破するには多いほど残っている。
会話をしてはいるものの、敵からの攻撃の手が緩むことはなく、芳野は天人が横に振った剣を姿勢を低くして避けた後、脚を引っ掛けて転ばせた。
「余裕がないからやるんだって‼」
そしてそのまま天人の胸に刀を突き立てた。
芳野は桂がこちらに走ってきていることを確認した上で、現在の位置から最短の距離にいる天人を引き離すため、桂とすれ違うように駆け出した。
「芳野‼」
「大丈夫‼ 坂田くんをよろしく‼」
桂や銀時ですら力負けするような天人がいる中、芳野の体には確かに疲労が積み重なっていた。そのうえ自身が女であることを餌にして、二人よりも多くの敵を相手取っていたことにより、浅くはあるが受けた傷も少なくなかった。
芳野は天人と交戦しながらも、桂と銀時が合流したことを視界の端に捉えたた。
「皮一枚、生き残れそうってところかな」
天人を切り伏せながら、芳野はつぶやいた。もうあと20秒程度、おそらく時間を稼げば逃げ出す流れになるだろうと、芳野は奥歯を噛みしめて体に鞭を打った。
右から来る天人の剣が届く前に体に回転をつけながら切れば、斬った後からは血液が芳野の刀の動きに合わせて広がった。そのまま芳野は体を回して背後から襲い掛かってきていた天人の腹部をしっかりと指し、そのまま刃を横に寝かせると腹を裂くように横動かして体内から刀を抜く。痛みに耐えきれず、切り裂かれた天人は武器を手から落として仰向けに倒れこんだ。
「っ‼」
しかし、その倒れこんだ天人は痛みを堪えてすぐに起き上がり、背を向けた芳野に手を伸ばた。それは春雨にもかかわらず、人間の小娘一人にやられてしまったことへの怒りと、せめて一矢報いたいという思いからのものかもしれない。
芳野はすぐに振りむき、伸ばされた腕を避けた。そしてそのまま天人の腕を切り落とし、頭と胴を切り離すように一太刀入れた。
「熱くなんなって、必死すぎ」
容赦のない殺し方に、芳野を取り囲む天人が尻込み始めたその時、桂と銀時の声が聞こえた。
「高杉ィィィ‼ そーいうことだ!」
芳野は刀をその場に捨てると、二人を間に挟んだ直線上の船の端へと全速力で走り出す。
「俺達ゃ、次合った時は仲間もクソも関係ねェ‼ 全力で……」
「「てめェをぶった斬る‼」」
「せいぜい、街でバッタリ会わねーよう気を付けるこった!」
芳野が二人の場所までたどり着いたのと同時に、桂と銀時も同じ方向へと走り出し、そのまま船から飛び降りた。
船上にいる天人や鬼兵隊の人間たちは動揺し、三人が飛び降りた場所から下を確認する。
「ブハハハハ! さ~らばァァ‼」
彼らが下を見ると、エリザベスの顔がデザインされたパラシュートがふわふわとゆっくり降下していた。先ほどまでの重苦しい雰囲気をすべて消し去るような桂の笑い声に、船上では撃ち落とせ!と叫ぶ声が聞こえる。
銀時は左脇に芳野を抱えた状態のまま、パラシュートをつけている桂にしがみついていた。
「用意周到なこって、ルパンかお前は」
「ルパンじゃないヅラだ、あっ間違った桂だ」
「間違えることあるんだ」
「なに、伊達に今まで新選組の追跡をかわしてきたわけではない」
振ってくる砲弾をひらりとよけながら降下する桂の言葉の信ぴょう性は高かった。1点気になることといえばパラシュートのデザインなのだが、銀時と芳野は口に出すことはしなかった。
「しかし」
桂は自身の胸元から、斬られた冊子、かつての学び舎で使っていた教科書を取り出した。
「まさか奴もコイツをまだ持っていたとはな……」
「高杉くんも、か」
「……始まりはみんな同じだった。なのに、随分と遠くへ離れてしまったものだな」
芳野の知っている高杉と、桂、銀時が知っている高杉はおそらく別だろう。しかしそれでも、今回のこの紅桜の一件で攘夷戦争時代の彼から大きく反れてしまっているような、それでいて当時の思考にとらわれ続けているような……。もう二度と背中を預けて戦うことはできないのだろうと思えてしまった。
「……坂田くんは」
「あ?」
「まだ持ってるの?」
ぐちゃぐちゃな気持ちをごまかすように芳野は自身を抱える銀時に尋ねた。
「ああ、ラーメンこぼして捨てた」
びゅうっと吹いた冷たい海風が、銀時の本音を飛ばそうとしているようだった。
―――紅桜編 完了―――
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