1.紅桜編
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―芳野飛鳥 視点―
激化する戦闘の音をBGMに二人の話がぼんやりと聞こえてくる。
私は残念なことに松下村塾のことは知らないし、桂くんたちが師としている松陽先生のこともほとんど知らない。だから二人の会話には入れないし、入れたとしても理解はできないんだろうと思う。
反対に、きっと戦後に私がしてきたことだって理解されなし、されなくたっていい。
高杉くんには呆れられていたっぽいけど、その感性はかなり全うだと思う。だって、あなたの大事な人を殺してしまいましたが遺品となった持ち物だけでも返しに来ましたなんて、酷いことをしたと思う。「私が殺しました」とは言えなかったけれど、それでもたくさんの非難や怒り、悲しみを見てきた。
『戦争になんて出さなきゃよかった』『見殺しにしたんですか?』『どうして助けてくれなかったの』
普通なら私に言われても、って思えるのかもしれないけれど。私の場合はそうもいかない。だって全員私が殺したのだから。誰かがやらなきゃいけにとはいえ、事実は変わらない。
『届けてくださりありがとうございます』
ありがとうの言葉が、こんなに突き刺さると思わなかった。お願いだから感謝なんかしないで。遺品を届けるたびに、知らないが故の感謝の言葉に身が裂かれそうだった。
『あの人は最期まで立派な侍でいれたのでしょうか?』
……私はなんて答えたんだっけ。
高杉くんとの会話をきっかけに、思い出したくない、それでも逃げてはいけない記憶が次々に浮かんでくる。最悪な気分だ。
2人がもし殺し合いを始めようものなら全力で止めようと考えていたのだけれど、今のところ本気でやり合う気はなさそうだった。桂くんも刀は納めているけれど、常に警戒を解いていないように見える。
高杉くんはわからない。刀は抜いているみたいだけれど、桂くんに向ける気は一切ないみたいだ。私のことはしっかり殺す気だったくせにね。もしかして嫌われてたりするのかも。
考えたいことはたくさんあるのだけれど、聞きなれない音と気配が急激に増えた上に近づいてきていた。嫌な予感がする。
私が桂くんの元へ駆け寄ろうとしたその時、私の前に天人が飛び降りてきた。
嫌になる本当に。
「退路は……あっちか」
私が刀を抜くと、天人も武器を構えたようだ。
「命知らずがよ、すまないが死んでくれ」
―芳野飛鳥 視点終了―
芳野が天人と対峙している時と同時刻、桂の頭上、張り出している瓦屋根の上に2体の天人が構えていた。下品な笑みのようなものを顔に浮かべながら、桂を見下ろしていた。
「天人⁉」
「ヅラ、きいたぜ。お前さん 以前銀時と一緒にあの春雨相手にやらかしたらしいじゃねーか」
天人がいるにも関わらず、高杉は刀を収めて縁に寄りかるような体勢をとった。
桂は高所から飛び降りてきた天人のほうへ振り返り、刀に手をかけた。
「俺ァねェ、連中と手を結んで後楯を得らねーか苦心してたんだが……おかげでうまく ことが運びそうだ。お前達の首を手みやげにな」
「高杉ィィ!」
離れた場所にいた芳野は、天人を切り伏せながら桂の方へと向かってきていた。
「桂くん!撤退しよう! 私たちは大丈夫かもしれないけど、他の人達は数の暴力で一瞬で押し切られる!」
「くそっ!行くぞ芳野!」
桂を襲った2体のうち1体を芳野が、もう1体を桂が一瞬で切り伏せ、勢いのままその場を走り抜ける。
芳野は高杉の前を通り抜けるとき、横目で様子をうかがってみた。しかし、高杉は空を見上げているだけで何を考えているのかは分からなかった。
とにかく何かを言わなければと芳野は思うも言葉は出てこず、自身の臆病さに刀を握る手に力が込められた。
激化する戦闘の音をBGMに二人の話がぼんやりと聞こえてくる。
私は残念なことに松下村塾のことは知らないし、桂くんたちが師としている松陽先生のこともほとんど知らない。だから二人の会話には入れないし、入れたとしても理解はできないんだろうと思う。
反対に、きっと戦後に私がしてきたことだって理解されなし、されなくたっていい。
高杉くんには呆れられていたっぽいけど、その感性はかなり全うだと思う。だって、あなたの大事な人を殺してしまいましたが遺品となった持ち物だけでも返しに来ましたなんて、酷いことをしたと思う。「私が殺しました」とは言えなかったけれど、それでもたくさんの非難や怒り、悲しみを見てきた。
『戦争になんて出さなきゃよかった』『見殺しにしたんですか?』『どうして助けてくれなかったの』
普通なら私に言われても、って思えるのかもしれないけれど。私の場合はそうもいかない。だって全員私が殺したのだから。誰かがやらなきゃいけにとはいえ、事実は変わらない。
『届けてくださりありがとうございます』
ありがとうの言葉が、こんなに突き刺さると思わなかった。お願いだから感謝なんかしないで。遺品を届けるたびに、知らないが故の感謝の言葉に身が裂かれそうだった。
『あの人は最期まで立派な侍でいれたのでしょうか?』
……私はなんて答えたんだっけ。
高杉くんとの会話をきっかけに、思い出したくない、それでも逃げてはいけない記憶が次々に浮かんでくる。最悪な気分だ。
2人がもし殺し合いを始めようものなら全力で止めようと考えていたのだけれど、今のところ本気でやり合う気はなさそうだった。桂くんも刀は納めているけれど、常に警戒を解いていないように見える。
高杉くんはわからない。刀は抜いているみたいだけれど、桂くんに向ける気は一切ないみたいだ。私のことはしっかり殺す気だったくせにね。もしかして嫌われてたりするのかも。
考えたいことはたくさんあるのだけれど、聞きなれない音と気配が急激に増えた上に近づいてきていた。嫌な予感がする。
私が桂くんの元へ駆け寄ろうとしたその時、私の前に天人が飛び降りてきた。
嫌になる本当に。
「退路は……あっちか」
私が刀を抜くと、天人も武器を構えたようだ。
「命知らずがよ、すまないが死んでくれ」
―芳野飛鳥 視点終了―
芳野が天人と対峙している時と同時刻、桂の頭上、張り出している瓦屋根の上に2体の天人が構えていた。下品な笑みのようなものを顔に浮かべながら、桂を見下ろしていた。
「天人⁉」
「ヅラ、きいたぜ。お前さん 以前銀時と一緒にあの春雨相手にやらかしたらしいじゃねーか」
天人がいるにも関わらず、高杉は刀を収めて縁に寄りかるような体勢をとった。
桂は高所から飛び降りてきた天人のほうへ振り返り、刀に手をかけた。
「俺ァねェ、連中と手を結んで後楯を得らねーか苦心してたんだが……おかげでうまく ことが運びそうだ。お前達の首を手みやげにな」
「高杉ィィ!」
離れた場所にいた芳野は、天人を切り伏せながら桂の方へと向かってきていた。
「桂くん!撤退しよう! 私たちは大丈夫かもしれないけど、他の人達は数の暴力で一瞬で押し切られる!」
「くそっ!行くぞ芳野!」
桂を襲った2体のうち1体を芳野が、もう1体を桂が一瞬で切り伏せ、勢いのままその場を走り抜ける。
芳野は高杉の前を通り抜けるとき、横目で様子をうかがってみた。しかし、高杉は空を見上げているだけで何を考えているのかは分からなかった。
とにかく何かを言わなければと芳野は思うも言葉は出てこず、自身の臆病さに刀を握る手に力が込められた。