1.紅桜編
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芳野と高杉のひやりとした空気感に、誰一人として動けずにいた。
「高杉くんさぁ、変わらないね」
「芳野、てめえにはそう見えてるか?」
「うん。何も変わってない。攘夷戦争のとき、私が最後に見ていたドロドロな高杉くんのままだ」
「『ドロドロ』か……、ククッ、違いねェ」
芳野が見た最後の高杉、いや松下村塾に通っていた彼らの姿は悲しみや後悔、諦め、怒り。まとまらない思考に飲み込まれかけていた姿だった。そしてそのまま飲まれてしまった姿が、きっと今の高杉なのだろう、そう寂しくなった。
「高杉くんが最終的に何をしたいのか私はわからないんだけどさ、今のやり方だと傷つく人が多いことだけはわかる」
「てめぇがそれを言うか?何人の裏切り者をその手で斬ってきた」
「それは……」
「元諜報員の芳野が『傷つく人』なんぞ、甘っちょろいこと言えるもんかよ」
「高杉‼」
高杉の言葉に芳野の眉間にギュッとしわが寄った。
怒ろうとしてくれた桂の言葉を芳野は制しつつ、首を横に振った。
「桂くんいいんだ、全部事実だから。言い返せる理由がない」
芳野飛鳥はかつて攘夷戦争では諜報員として活動していた。その活動内容の一つとして、裏切り者の始末を行っていた。
政府や天人に仲間を売ろうとしたもの、寝返ろうとしたもの、逃げようとしたもの……。元々仲間として共に戦っていた者を、芳野は何人と殺してきた。内部からの崩壊を防ぐには必要不可欠ではあると、誰もが理解はしていたが、よく思われることはなかった。直接芳野へ嫌悪を示すものはいなくとも、陰口を言われない日はなかった。
芳野は、この話を新八や、まだ話したことのない神楽に聞かれてしまったことがいたたまれなく、胸が痛んだ。面白い話でもない、できれば隠しておきたいと願ってしまっていたのだ。
芳野が何も言えずにいると、桂が艦の中央をちらりと見た後に背筋を伸ばした。
「高杉、似蔵が貴様の差し金だろうが、奴の独断だろうが関係ない。だか、お前のやろうとしていることを黙って見過ごすワケにもいくまい」
その時、艦の中央が大爆発を起こした。艦の上にいた者たちの視線が、全て爆発もとに集まった。
予想外だったのか、高杉の目も見開かれていた。
「貴様の野望、悪いが海に消えてもらおう」
鬼兵隊の隊員たちは、爆破されたことに動揺し声を荒げた。「工場がァァ!」「紅桜がァァ!」の叫び声に、桂が紅桜の向上を爆破させたと気が付き、芳野は思わず笑ってしまう。
「あっはは!まじでか!桂くんやるなぁ!」
「ふっ、江戸の夜明けをこの目で見るまでは死ぬ訳にはいかん」
芳野は桂に視線が集まっているうちに、新八と神楽の近くに駆け寄り怪我の有無を確認した。
「志村くんと……神楽ちゃん? 怪我は?」
「芳野さん!」
「よくここまで頑張ってるね、もうちょい頑張れそう?」
「ッはい!」
「よし」
新八は芳野の「頑張ってるね」の言葉に涙が滲んだが、すぐに体に力を入れなおした。その間、神楽が不思議そうに芳野と新八のやり取りを見ていた。
「新八の知り合いアルか?」
「一方的に名前を知っていて申し訳ないんだけど、自己紹介はまた今度にしよう。ちょっと状況が騒がしすぎるや」
「わかったヨ、絶対後で教えるネ」
「うん、後で」
神楽は不満そうではあるが、芳野の後での言葉を信じて立ち上がる。
そして立ち上がったかと思えば桂の方にゆらりと近づいていく。芳野はなにか不穏な雰囲気を感じ取り、汗をかいた。どうにも喜びの抱擁は声掛けには見えなかった。
「高杉くんさぁ、変わらないね」
「芳野、てめえにはそう見えてるか?」
「うん。何も変わってない。攘夷戦争のとき、私が最後に見ていたドロドロな高杉くんのままだ」
「『ドロドロ』か……、ククッ、違いねェ」
芳野が見た最後の高杉、いや松下村塾に通っていた彼らの姿は悲しみや後悔、諦め、怒り。まとまらない思考に飲み込まれかけていた姿だった。そしてそのまま飲まれてしまった姿が、きっと今の高杉なのだろう、そう寂しくなった。
「高杉くんが最終的に何をしたいのか私はわからないんだけどさ、今のやり方だと傷つく人が多いことだけはわかる」
「てめぇがそれを言うか?何人の裏切り者をその手で斬ってきた」
「それは……」
「元諜報員の芳野が『傷つく人』なんぞ、甘っちょろいこと言えるもんかよ」
「高杉‼」
高杉の言葉に芳野の眉間にギュッとしわが寄った。
怒ろうとしてくれた桂の言葉を芳野は制しつつ、首を横に振った。
「桂くんいいんだ、全部事実だから。言い返せる理由がない」
芳野飛鳥はかつて攘夷戦争では諜報員として活動していた。その活動内容の一つとして、裏切り者の始末を行っていた。
政府や天人に仲間を売ろうとしたもの、寝返ろうとしたもの、逃げようとしたもの……。元々仲間として共に戦っていた者を、芳野は何人と殺してきた。内部からの崩壊を防ぐには必要不可欠ではあると、誰もが理解はしていたが、よく思われることはなかった。直接芳野へ嫌悪を示すものはいなくとも、陰口を言われない日はなかった。
芳野は、この話を新八や、まだ話したことのない神楽に聞かれてしまったことがいたたまれなく、胸が痛んだ。面白い話でもない、できれば隠しておきたいと願ってしまっていたのだ。
芳野が何も言えずにいると、桂が艦の中央をちらりと見た後に背筋を伸ばした。
「高杉、似蔵が貴様の差し金だろうが、奴の独断だろうが関係ない。だか、お前のやろうとしていることを黙って見過ごすワケにもいくまい」
その時、艦の中央が大爆発を起こした。艦の上にいた者たちの視線が、全て爆発もとに集まった。
予想外だったのか、高杉の目も見開かれていた。
「貴様の野望、悪いが海に消えてもらおう」
鬼兵隊の隊員たちは、爆破されたことに動揺し声を荒げた。「工場がァァ!」「紅桜がァァ!」の叫び声に、桂が紅桜の向上を爆破させたと気が付き、芳野は思わず笑ってしまう。
「あっはは!まじでか!桂くんやるなぁ!」
「ふっ、江戸の夜明けをこの目で見るまでは死ぬ訳にはいかん」
芳野は桂に視線が集まっているうちに、新八と神楽の近くに駆け寄り怪我の有無を確認した。
「志村くんと……神楽ちゃん? 怪我は?」
「芳野さん!」
「よくここまで頑張ってるね、もうちょい頑張れそう?」
「ッはい!」
「よし」
新八は芳野の「頑張ってるね」の言葉に涙が滲んだが、すぐに体に力を入れなおした。その間、神楽が不思議そうに芳野と新八のやり取りを見ていた。
「新八の知り合いアルか?」
「一方的に名前を知っていて申し訳ないんだけど、自己紹介はまた今度にしよう。ちょっと状況が騒がしすぎるや」
「わかったヨ、絶対後で教えるネ」
「うん、後で」
神楽は不満そうではあるが、芳野の後での言葉を信じて立ち上がる。
そして立ち上がったかと思えば桂の方にゆらりと近づいていく。芳野はなにか不穏な雰囲気を感じ取り、汗をかいた。どうにも喜びの抱擁は声掛けには見えなかった。