1.紅桜編
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空では岡田似蔵が、紅桜の一太刀で幕府の戦艦を落としていて、戦艦内では多くの負傷者が通路を埋め尽くしていた。
その中でも一等盛り上がっているの鬼兵隊の戦艦、甲板上に立つのは桂小太郎だった。
似蔵の話では死んでいたはずが、たしかにここにいる。
一方で高杉は桂の刀を受けて倒れこんでいる。悲鳴に近い声を上げた来島また子が、倒れてしまった高杉の背を支えていた。
桂は皮肉を込めるように言葉を紡ぐ。
「この世に未練があったものでな、黄泉帰ってきたのさ。かつての仲間に斬られたとあっては死に切れぬというもの……」
「桂くん不死身じゃん」
「なっ⁉ 芳野か‼」
「うん、お久しぶり。高杉くんも起きなよ。そっちもなかなか死にきれないくせに」
芳野が少し離れた場所から桂に声をかければ、桂は目を見開いて驚いていた。きっとここが戦いの場でなければ再開を喜び合っていただろう。
芳野から起きろと言われた高杉は喉の奥で笑いながら体を起こす。
高杉の体には浅く刀傷がついていた。そして斬られた浴衣の胸元からは、古びた教科書がのぞいていた。その教科書が高杉の体を守ったかのように、ざっくりと代わりに斬られてしまっていた。
「仲間ねェ……まあそう思ってくれていたとはありがた迷惑な話だ」
自嘲を込めつつ、桂も同じような教科書を取り出した。
「まだそんなものを持っていたか。お互いバカらしい」
高杉と桂にしかわからない事情に茶々を入れる気も起きず、芳野は口をつぐんでいた。
攘夷戦争時代、共に戦っていた時に話を聞いたことはあるがそれだけ。芳野にとっての松下村塾は、かつて仲間だった者たちが通っていたらしい寺子屋。それ以上でも以下でもなかった。
ただ、こんな頑固な彼らの心を作った師という存在は気になっていた。
教科書でさえも、彼らを守ったのだから。どんな場所で、どんな人だったのだろうか。
芳野がぼんやりと彼らの教科書をじっと見ていれば、桂が芳野を呼んだ。
「芳野! 二人のことを頼めるか?」
桂は、神楽を縛り付けていた拘束を刀で壊した。ようやく自由になった神楽は体を伸ばしたり手首を回している。芳野は桂に「もちろん」と返そうとしたのだが、新八と神楽の様子がおかしいことに違和感を持っていた。なぜなら、桂が生きていたというのに、喜ぶ様子が一切なかったからだ。
鬼兵隊員に斬りかかられないよう注意しながら、桂と新八、神楽のもとへと移動しようとすれば、高杉がじろりと芳野を視線で貫いた。
芳野はその視線を気にしつつ、目線が合わないよう顔をそらした。
「つれねえなァ」
「高杉くん、お喋りが好きなタイプじゃないじゃん?」
芳野の知っている高杉から、何一つ変わっていなかった。それがひどく芳野にとっては怖かった。
その中でも一等盛り上がっているの鬼兵隊の戦艦、甲板上に立つのは桂小太郎だった。
似蔵の話では死んでいたはずが、たしかにここにいる。
一方で高杉は桂の刀を受けて倒れこんでいる。悲鳴に近い声を上げた来島また子が、倒れてしまった高杉の背を支えていた。
桂は皮肉を込めるように言葉を紡ぐ。
「この世に未練があったものでな、黄泉帰ってきたのさ。かつての仲間に斬られたとあっては死に切れぬというもの……」
「桂くん不死身じゃん」
「なっ⁉ 芳野か‼」
「うん、お久しぶり。高杉くんも起きなよ。そっちもなかなか死にきれないくせに」
芳野が少し離れた場所から桂に声をかければ、桂は目を見開いて驚いていた。きっとここが戦いの場でなければ再開を喜び合っていただろう。
芳野から起きろと言われた高杉は喉の奥で笑いながら体を起こす。
高杉の体には浅く刀傷がついていた。そして斬られた浴衣の胸元からは、古びた教科書がのぞいていた。その教科書が高杉の体を守ったかのように、ざっくりと代わりに斬られてしまっていた。
「仲間ねェ……まあそう思ってくれていたとはありがた迷惑な話だ」
自嘲を込めつつ、桂も同じような教科書を取り出した。
「まだそんなものを持っていたか。お互いバカらしい」
高杉と桂にしかわからない事情に茶々を入れる気も起きず、芳野は口をつぐんでいた。
攘夷戦争時代、共に戦っていた時に話を聞いたことはあるがそれだけ。芳野にとっての松下村塾は、かつて仲間だった者たちが通っていたらしい寺子屋。それ以上でも以下でもなかった。
ただ、こんな頑固な彼らの心を作った師という存在は気になっていた。
教科書でさえも、彼らを守ったのだから。どんな場所で、どんな人だったのだろうか。
芳野がぼんやりと彼らの教科書をじっと見ていれば、桂が芳野を呼んだ。
「芳野! 二人のことを頼めるか?」
桂は、神楽を縛り付けていた拘束を刀で壊した。ようやく自由になった神楽は体を伸ばしたり手首を回している。芳野は桂に「もちろん」と返そうとしたのだが、新八と神楽の様子がおかしいことに違和感を持っていた。なぜなら、桂が生きていたというのに、喜ぶ様子が一切なかったからだ。
鬼兵隊員に斬りかかられないよう注意しながら、桂と新八、神楽のもとへと移動しようとすれば、高杉がじろりと芳野を視線で貫いた。
芳野はその視線を気にしつつ、目線が合わないよう顔をそらした。
「つれねえなァ」
「高杉くん、お喋りが好きなタイプじゃないじゃん?」
芳野の知っている高杉から、何一つ変わっていなかった。それがひどく芳野にとっては怖かった。