1.紅桜編
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新八が姉である妙に電話をかけて、受話器を置いたすぐあとぐらいのこと、万事屋の玄関を強くたたく音が聞こえた。
芳野は熱に冒され始めている体に鞭を打ち、息を殺して玄関へと向かった。
「……ん?」
追手だとすれば、場合によっては勝ち目がない。犠牲になってでもこの場所を守ると決意を決めていた芳野だが、玄関のガラス窓に透けて見えるのは、おおよそ人とは思えなサイズの大きな影だった。耳をそばだてれば人間より早めの息遣いが聞こえてくる。
このまま身をひそめるべきかと様子をうかがっていると、その大きな影は手のようなもので戸口を叩いた。
「誰だ」
芳野は声を低くし、扉向こうの何かに声をかけた。もしこれが追い詰められている状況になっているのだとしたら、隠れていたもしょうがないと見切りをつけた。
芳野の声に反応したのか、扉向こうの影が大きく「ワン!」と吠えた。
「犬の鳴き声⁉」
「っ!定春!」
「志村くん待っ――」
鳴き声を聞いて新八が玄関へと走ってきた。そしてそのまま芳野が止める間もなく、新八は玄関の扉を開けた。
扉を開けると白い大きな犬が新八に飛びついた。大きなしっぽは喜びでぶんぶんと横に振られていた。
そんな光景に気を張っていた芳野は力を緩めつつ苦笑した。噛まれている新八の叫び声を右から左に聞き流しつつあることに気が付いた。
「噛まれているところ申し訳ないんだけど、このわんころ……えっと定春?なにか持ってきてるみたいだけど」
芳野がそういうと定春は新八をペッと吐き出した。唾液と流血でべとべとなまま、新八は定春の足元に落ちてる三つ折りにされた紙を拾い上げた。
「なんだろう、これ……」
新八が紙を開くと、簡易的な地図のようなものが書かれていた。ところどころ濡れていて字がつぶれてしまっているが、おおよその場所は把握できるぐらいにはしっかりしていた。
芳野は新八のそばから紙を覗き見て、示されている場所のことを考え、思考を巡らせた。
芳野が持っている情報が正しければそこに鬼兵隊の艦が、攘夷志士 高杉晋助がいるはずなのだ。
「なあ志村くん、この地図の場所に行くつもり?」
芳野が自身の体が倒れないよう、壁に寄りかかりながら新八に尋ねた。芳野の体調として、正直なところ助太刀できるような状態ではない。
新八は芳野のほうへ振り向くと、まっすぐな顔で答えた。
「定春と一緒にいたはずの神楽ちゃんは帰ってこないし……。それに銀さんだって動けないんです、なら僕が助けに行くしかないんです!だって万事屋の仲間なんだから!」
全体に信念を曲げない、芯をまっすぐに持った侍の姿勢だった。その雰囲気に、今は倒れて寝込んでいる坂田銀時の影が色濃く見えた。
朝日が顔を出してきたのか、空が明るみ始めてきていた。
「そうかい。こりゃ『私が行くから待ってろ』とか言ってもダメそうだ。ちなみに、その「神楽ちゃん」はどんな子?もし私のほうが先に見つけたら救助しておくよ」
「‼ 神楽ちゃんは夜兎族の女の子で」
「夜兎族⁉」
『夜兎族』という言葉に芳野は目を丸くさせ、大きな反応を示した。
うとうととしていた定春も、芳野の声にうるさそうに視線を向けた。
「ああいや、ごめん。ちょっと夜兎族とは縁があって。続けて?」
「本当に芳野さんって何なんですか?……えっと神楽ちゃんは――」
芳野は新八から夜兎族の女の子、神楽の話を聞きながら、今の自分が彼女をどう助けるか算段を頭の中で立てていた。夜兎であるなら最低限は戦えるとして、殺しは絶対にさせたくない。
鬼兵隊の船の中にいるのであれば探す場所が絞られるのでまだいいが、もしいなかったとしたら?見切りをつけるタイミングは?それに桂の安否だって確認が取れていない、どこにいるのかさえ分からない状況だ。
そうして、新八から話を聞いていると万事屋に続く階段を上る足音が聞こえてきた。
「芳野さん」
「ん?」
「『紅桜』のこと、姉上には……」
「秘密にしてほしい?」
「……はい」
「いいよ、黙ってる」
大怪我の坂田銀時に、血の付いた服を着ている自身の弟の姿なんて見たらひどく心配をするだろうにと、芳野は思ったが、口に出すことはしなかった。なぜなら芳野自身が反面教師になったことが過去の経験で多々あったたため、新八の気持ちが痛いほどわかってしまうのだったから。
芳野は熱に冒され始めている体に鞭を打ち、息を殺して玄関へと向かった。
「……ん?」
追手だとすれば、場合によっては勝ち目がない。犠牲になってでもこの場所を守ると決意を決めていた芳野だが、玄関のガラス窓に透けて見えるのは、おおよそ人とは思えなサイズの大きな影だった。耳をそばだてれば人間より早めの息遣いが聞こえてくる。
このまま身をひそめるべきかと様子をうかがっていると、その大きな影は手のようなもので戸口を叩いた。
「誰だ」
芳野は声を低くし、扉向こうの何かに声をかけた。もしこれが追い詰められている状況になっているのだとしたら、隠れていたもしょうがないと見切りをつけた。
芳野の声に反応したのか、扉向こうの影が大きく「ワン!」と吠えた。
「犬の鳴き声⁉」
「っ!定春!」
「志村くん待っ――」
鳴き声を聞いて新八が玄関へと走ってきた。そしてそのまま芳野が止める間もなく、新八は玄関の扉を開けた。
扉を開けると白い大きな犬が新八に飛びついた。大きなしっぽは喜びでぶんぶんと横に振られていた。
そんな光景に気を張っていた芳野は力を緩めつつ苦笑した。噛まれている新八の叫び声を右から左に聞き流しつつあることに気が付いた。
「噛まれているところ申し訳ないんだけど、このわんころ……えっと定春?なにか持ってきてるみたいだけど」
芳野がそういうと定春は新八をペッと吐き出した。唾液と流血でべとべとなまま、新八は定春の足元に落ちてる三つ折りにされた紙を拾い上げた。
「なんだろう、これ……」
新八が紙を開くと、簡易的な地図のようなものが書かれていた。ところどころ濡れていて字がつぶれてしまっているが、おおよその場所は把握できるぐらいにはしっかりしていた。
芳野は新八のそばから紙を覗き見て、示されている場所のことを考え、思考を巡らせた。
芳野が持っている情報が正しければそこに鬼兵隊の艦が、攘夷志士 高杉晋助がいるはずなのだ。
「なあ志村くん、この地図の場所に行くつもり?」
芳野が自身の体が倒れないよう、壁に寄りかかりながら新八に尋ねた。芳野の体調として、正直なところ助太刀できるような状態ではない。
新八は芳野のほうへ振り向くと、まっすぐな顔で答えた。
「定春と一緒にいたはずの神楽ちゃんは帰ってこないし……。それに銀さんだって動けないんです、なら僕が助けに行くしかないんです!だって万事屋の仲間なんだから!」
全体に信念を曲げない、芯をまっすぐに持った侍の姿勢だった。その雰囲気に、今は倒れて寝込んでいる坂田銀時の影が色濃く見えた。
朝日が顔を出してきたのか、空が明るみ始めてきていた。
「そうかい。こりゃ『私が行くから待ってろ』とか言ってもダメそうだ。ちなみに、その「神楽ちゃん」はどんな子?もし私のほうが先に見つけたら救助しておくよ」
「‼ 神楽ちゃんは夜兎族の女の子で」
「夜兎族⁉」
『夜兎族』という言葉に芳野は目を丸くさせ、大きな反応を示した。
うとうととしていた定春も、芳野の声にうるさそうに視線を向けた。
「ああいや、ごめん。ちょっと夜兎族とは縁があって。続けて?」
「本当に芳野さんって何なんですか?……えっと神楽ちゃんは――」
芳野は新八から夜兎族の女の子、神楽の話を聞きながら、今の自分が彼女をどう助けるか算段を頭の中で立てていた。夜兎であるなら最低限は戦えるとして、殺しは絶対にさせたくない。
鬼兵隊の船の中にいるのであれば探す場所が絞られるのでまだいいが、もしいなかったとしたら?見切りをつけるタイミングは?それに桂の安否だって確認が取れていない、どこにいるのかさえ分からない状況だ。
そうして、新八から話を聞いていると万事屋に続く階段を上る足音が聞こえてきた。
「芳野さん」
「ん?」
「『紅桜』のこと、姉上には……」
「秘密にしてほしい?」
「……はい」
「いいよ、黙ってる」
大怪我の坂田銀時に、血の付いた服を着ている自身の弟の姿なんて見たらひどく心配をするだろうにと、芳野は思ったが、口に出すことはしなかった。なぜなら芳野自身が反面教師になったことが過去の経験で多々あったたため、新八の気持ちが痛いほどわかってしまうのだったから。