絶望のオフィウクス
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1 邂逅
魔法魔術学校で魔法薬学を教えるセブルス=スネイプはマグル界のとある孤児院に来ていた。
イギリスの田舎町の一角に建つ陰気な孤児院はさびれた雰囲気が漂っている。
お世辞にも綺麗とは言い難く、おおよそ、子供が健やかに明るく暮らせるとは到底思えない風情の建物だ。
マグルに嫌悪感を持っている自分に、今の状況は苦痛以外の無いものでもなった。
しかし、セブルスにはそれに耐えてでもこの目で確認したい事と、仕事があった。
院の職員に案内されるまま廊下を進む。
―――今から10年ほど前の事だ。
暗黒の時代を築いた一人の男が無力な一人の赤ん坊によって倒された。
その時、世間から姿を隠した一人の女がいた。
その女はそれまで世間では全く知られてもいなかった闇の帝王ヴォルデモート卿の妻だった。
闇の陣営内では“女王”と呼ばれ、夫である闇の帝王と共に崇拝される存在であった。
アズカバンに投獄され、裁判にかけれ自己保身に走った死喰い人達らによって世に知れ渡った“女王”存在。
当時、魔法界中が大いに驚いた。
ヴォルデモート卿と唯一渡り合う事の出来たダンブルドアの推測から決して人を愛さないと謳われてきたあの闇の帝王がよもや結婚していようとは…。
だが、どういう訳かどの死喰い人も、“女王”の素性を憶えていなかった。
顔立ちは勿論、どんな顔立ちで、髪の色は、瞳の色は、どんな魔法を使えるのか。
誰一人として、記憶していた者はいなかった。
ただ、存在だけが大きく死喰い人達の中に根付いていた。
“女王”という恐ろしくも強大な存在だけが。
人々は戦慄した。
闇の帝王という大きな恐怖の存在が倒されたというのに、その影にあった同格ともいえる未知に包まれた存在。
闇の帝王没後、依然姿を消したままのそれは、まだ闇に潜むかもしれない者を警戒し続けなければならないという事だ。
闇が晴らされたという束の間の安息に狂喜していた者たちは再び震えあがった。
人々は信じていた。
その“女王”は一度崩れた体制をすぐさま立て直し、まだ狩られていない死喰い人の残党の指揮を取り、再び世を暗黒の時代に落と仕入れるのだと。
しかし、1年経とうと、2年経とうと、それらしい動きは全くなかった。
それから5年、7年、10年の月日が流れ、人々は安穏とした安寧と平和に溺れ、その存在を忘れてしまった。