それから3人で雑談をしていると、鴆を伴って首無がやってきた。

「夢主、怪我見せてみろ」
「鴆くん！ごめんなさい、こんなことで呼び出して。身体は大丈夫？」
鴆の登場に、本当に申し訳なさそうな夢主。

「いいから。猩影、どういう状況だった？」
猩影は再び、ガラクタ市であったこと、遭遇した妖怪について話した。

「夢主、袖をまくれ」
鴆は話を聞くとすぐに夢主に指示を出した。手の傷は毛娼妓がすでに治療済だ。夢主は言われた通り、制服の袖をまくった。

「あ、」
呟いたのは誰だったか。
夢主の腕は青く腫れ上がっていた。

「夢主ー！」
猩影はこの期に及んで怪我を隠していた夢主に苛立った。

「でも見た目ほど痛くないし、」
鴆が夢主の腕をとってよく診たあと、そっと青あざを押さえた。

「いっ！」
「打撲だな。手を握ったり開いたりしてみろ」
鴆はあざを軽く押さえながら夢主に促した。

「どうだ？」
「…痛い、です」
夢主は周りで見守る猩影たちの様子を伺いながら答えた。

はあ、と見守る3人がため息をついたのは言うまでもない。

「他には？ふっ飛ばされて首とか背中とか打たなかったか？」
「それは大丈夫！荒鷲組の人が助けてくれたから」
「ふぅん。俺たち少し出るから着替えついでに全身確認してもらえ」
鴆が目配せすれば、猩影と首無は立ち上がり、部屋を出た。毛娼妓は夢主の着替えを手伝い、背中や首の後ろにあざや傷がないことを確認した。

「夢主様、今回のことは仕方ない部分もありますけど、私たちの気持ちもわかってくださいね」
毛娼妓は夢主の着物を整えながら言った。

「うん」
「逆の立場だったらどうです？猩影が怪我をしたのに隠していたら」
「それは…」
夢主は俯いた。

「はい、顔を上げて。みんなわかってますよ。夢主様が何を思ってそういう行動に出たのか」
毛娼妓が夢主に微笑みかける。

「夢主様は三代目の奴良組を、リクオ様の言うようにしていきたいんでしょう？」
「毛娼妓…」
「わかってますよ」
人に仇なすことを許さないと宣言したのを夢主も知っている。リクオがなぜそう思っているのかも、同じように人間として生活している夢主は1番理解しているつもりだ。

「だけどその上で、貴女のことを大切に思っている私たちのことも覚えておいてくださいね」
夢主は胸が温かくなるのを感じた。

「うん。ありがとう、毛娼妓」