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その二十三
夢主の名前
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辺りに響く、低い声。ぞくり、と身を震わした者も少なくはない。
上空から現れたのは、百鬼夜行を破壊する畏れを持つ――土蜘蛛。左右の腕は3本ずつ、般若のようなツラの上には角が2本・・・・・・まさに異形の者である。
強大な破壊力を秘めた8つの手足で着地と同時に放った一撃は、伏目稲荷大社を一瞬にして地獄と化した。
突然の奇襲に、あっけに取られる者、勇敢にも立ち向かう者・・・奴良組も遠野も花開院も混乱していた。
「俺の名は・・・・・・土蜘蛛。強ぇやつとやりに来た次第。こんだけいりゃあ誰か骨のある奴ぁーいるんじゃあねーか?」
土蜘蛛は順繰りに手練の顔を舐めるように見る。
「女でもいいぜ、戦える奴ァ全員俺の敵だ」
その挑発に、女妖怪たちは逆上してしまう。リクオが先頭を切って土蜘蛛に突っ込んだ。そこからは、早かった。
夢主は、目の前で繰り広げられる襲撃がまるで現実のものではないように思えた。
よく知っている。首無も黒田坊も河童も・・・リクオの側近、いや奴良組の妖怪は強い。小さいときから見ていた。
当のリクオだって決して弱くはないだろう。牛鬼のときだって、四国のときだって、リクオは己の力でもって乗り越えてきた。それに、遠野で修業をしてきたという。
そんな彼らが、こんなにもあっけなく伏せられていく。こちらの刃が土蜘蛛に届くよりも早く、その長いリーチと圧倒的破壊力で百鬼夜行が壊れていった。
そのうち攻撃は夢主のもとへも迫ってきた。
動けなかった。怪我をしている云々ではなく、土蜘蛛の畏れの前に身体が竦み、逃げることもままならなかった。
「・・・っ夢主、大丈夫か」
気がつくと夢主は猩影にすっぽりと抱きかかえられていた。辺りは仄暗く、狭い。かろうじて相手の顔が確認できる。
おそらく瓦礫の下にいる。猩影が顔を歪める。
「猩くん・・・っ」
「大丈夫だ!夢主はどこも打ってないか」
「私は、大丈夫」
ほっとしたように息をつく猩影。
「わりぃな、夢主・・・もうちょい、待って。上に乗ってる瓦礫が退かせない」
猩影は両の腕で夢主を抱きしめるように守っている。夢主は猩影が支え、作り出してくれる空間がなければ生き埋めになってしまうだろう。
両手が使えない今、外からの救援を待つ以外、ふたりが瓦礫から抜け出す手立てはない。
外からは激昂の叫びが聞こえる。何かが地面に叩きつけられる音やガラガラと崩れ落ちる音が聞こえる。まだ戦いは終わっていない。
突然現れた脅威に、果敢にもリクオやその百鬼は挑んでいった。夢主からはその光景が見えないが、苦戦を強いられていることが伝わってくる。
「・・・死な、ないで・・・みんな」
そんなはずないと思いながらも、願ってしまう。その声は心のうちに留められることなく、こぼれ落ちた。
土蜘蛛が去り、ふたりはがれきの下から助けられた。息つく間もなく見せつけられる惨状に目を逸らしたくなる。
ふらりと立ち上がった夢主の腕を猩影が捕まえる。
「放して」
「だめだ。夢主」
夢主がこれから何をしようとするのかわかる。猩影はやるせない思いでその腕を掴む手に力を込めた。痛みに夢主が顔を歪める。
「いい加減にしろ!よく考えろ、今お前が治癒の力を使ったらどうなるかわかってるだろうっ!」
「だけど、このままじゃ・・・」
「お前は狙われてんだ、力を使えば京妖怪を呼び寄せる。それに、こんな状態で治癒すればお前がぶっ倒れる。ただでさえ、怪我してんのに・・・・・・いい加減、わかってくれよ」
こんなに悲痛な表情の猩影を見たことがあるだろうか。猩影の手が夢主の腕を放しても、夢主はその場を動かなかった。
「俺は、悔しいんだよ。いつもいつも傷つくのは夢主で、俺はそんな時夢主の側にいない。それがどんなにつらいか、わかってくれよ」
上空から現れたのは、百鬼夜行を破壊する畏れを持つ――土蜘蛛。左右の腕は3本ずつ、般若のようなツラの上には角が2本・・・・・・まさに異形の者である。
強大な破壊力を秘めた8つの手足で着地と同時に放った一撃は、伏目稲荷大社を一瞬にして地獄と化した。
突然の奇襲に、あっけに取られる者、勇敢にも立ち向かう者・・・奴良組も遠野も花開院も混乱していた。
「俺の名は・・・・・・土蜘蛛。強ぇやつとやりに来た次第。こんだけいりゃあ誰か骨のある奴ぁーいるんじゃあねーか?」
土蜘蛛は順繰りに手練の顔を舐めるように見る。
「女でもいいぜ、戦える奴ァ全員俺の敵だ」
その挑発に、女妖怪たちは逆上してしまう。リクオが先頭を切って土蜘蛛に突っ込んだ。そこからは、早かった。
夢主は、目の前で繰り広げられる襲撃がまるで現実のものではないように思えた。
よく知っている。首無も黒田坊も河童も・・・リクオの側近、いや奴良組の妖怪は強い。小さいときから見ていた。
当のリクオだって決して弱くはないだろう。牛鬼のときだって、四国のときだって、リクオは己の力でもって乗り越えてきた。それに、遠野で修業をしてきたという。
そんな彼らが、こんなにもあっけなく伏せられていく。こちらの刃が土蜘蛛に届くよりも早く、その長いリーチと圧倒的破壊力で百鬼夜行が壊れていった。
そのうち攻撃は夢主のもとへも迫ってきた。
動けなかった。怪我をしている云々ではなく、土蜘蛛の畏れの前に身体が竦み、逃げることもままならなかった。
「・・・っ夢主、大丈夫か」
気がつくと夢主は猩影にすっぽりと抱きかかえられていた。辺りは仄暗く、狭い。かろうじて相手の顔が確認できる。
おそらく瓦礫の下にいる。猩影が顔を歪める。
「猩くん・・・っ」
「大丈夫だ!夢主はどこも打ってないか」
「私は、大丈夫」
ほっとしたように息をつく猩影。
「わりぃな、夢主・・・もうちょい、待って。上に乗ってる瓦礫が退かせない」
猩影は両の腕で夢主を抱きしめるように守っている。夢主は猩影が支え、作り出してくれる空間がなければ生き埋めになってしまうだろう。
両手が使えない今、外からの救援を待つ以外、ふたりが瓦礫から抜け出す手立てはない。
外からは激昂の叫びが聞こえる。何かが地面に叩きつけられる音やガラガラと崩れ落ちる音が聞こえる。まだ戦いは終わっていない。
突然現れた脅威に、果敢にもリクオやその百鬼は挑んでいった。夢主からはその光景が見えないが、苦戦を強いられていることが伝わってくる。
「・・・死な、ないで・・・みんな」
そんなはずないと思いながらも、願ってしまう。その声は心のうちに留められることなく、こぼれ落ちた。
土蜘蛛が去り、ふたりはがれきの下から助けられた。息つく間もなく見せつけられる惨状に目を逸らしたくなる。
ふらりと立ち上がった夢主の腕を猩影が捕まえる。
「放して」
「だめだ。夢主」
夢主がこれから何をしようとするのかわかる。猩影はやるせない思いでその腕を掴む手に力を込めた。痛みに夢主が顔を歪める。
「いい加減にしろ!よく考えろ、今お前が治癒の力を使ったらどうなるかわかってるだろうっ!」
「だけど、このままじゃ・・・」
「お前は狙われてんだ、力を使えば京妖怪を呼び寄せる。それに、こんな状態で治癒すればお前がぶっ倒れる。ただでさえ、怪我してんのに・・・・・・いい加減、わかってくれよ」
こんなに悲痛な表情の猩影を見たことがあるだろうか。猩影の手が夢主の腕を放しても、夢主はその場を動かなかった。
「俺は、悔しいんだよ。いつもいつも傷つくのは夢主で、俺はそんな時夢主の側にいない。それがどんなにつらいか、わかってくれよ」