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その二十二
夢主の名前
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「夢主がいない!」
首無率いる一手は慌てていた。
「どこで逸れたか、心当たりはあるのか?」
「いや、それが・・・ここに入ったときにはもう」
猩影が繋いでいたはずの手を握り締める。知らぬ間に、夢主がいなくなっていた。境内に入ったときからふらふらと歩き回る夢主を咎め、しっかりと繋いだはずの手。それが離れたことにも猩影は気がつかなかった。
鳥居の道を遡り、その入り口までやってきた。
「一旦、リクオ様たちと合流しよう」
一行はリクオたちが進んだルートを辿る。
「今・・・なんつった・・・夢主、黒田坊」
淡島の表情が変わる。
「諦める?・・・女だから泣く・・・?だぁ!?オレぁ”天邪鬼”だぜ!?逆だろ?夢主」
「はい、淡島さん」
夢主も淡島の横に並んだ。
「面白くってしょーがねぇんだよ!!京の妖にぁ・・・」
自分の畏を魅せなきゃぁあ、勝てねぇよぉだからなぁ!!
二十七面千手百足が地を這うような姿勢をとる。
「夢主、まずはオレだってよ、下がってな」
槍を構える。
「でも」
「遠野の産土で培ったオレの畏、京妖怪に通じるか楽しみだぜ!」
淡島は舞う。
「乙女淡島は天女のように舞うんだよ」
”鬼發” 戦乙女演舞
「古来より戦の前にゃー乙女が舞いを舞い、勝利を呼び込むもの」
しくしくとすすり泣く声を聞き淡島と夢主は振り返る。すると先ほどの子どもがしゃがみこんでいる。
「おい・・・まだ泣いてんか・・・」
ズンっと何かが貫かれる音がする。
「あ、あわしまさん・・・!」
百足が背後から淡島を複数の手で刺している。夢主は思わずその場に座り込んでしまう。至るところから血しぶきがあがる。
ガハァっと口からも血を吐く淡島。夢主は震える身体に鞭を打って立ち上がる。
「うわ・・・うわああぁん」
子どもの泣き声が強まった。
「くおおおおお」
淡島が斬っても斬っても・・・妖怪は倒れない。
「君」「貴様」
「「「「お前ではこの迷いの森を出られない。我はこの地脈の守護者・・・」」」
うろたえる淡島を妖怪は容赦なく斬る。
「うわああああああ」
剣という剣が淡島を貫く。
「ううううわああお母さんどこぉお」
這い蹲りながらも子どもの泣き声が耳に入る。泣くたびに妖が強くなる、そんな気さえする。
「(こいつを斬ればいいんじゃねーか?)」
険しい顔つきの淡島。妖怪から攻撃がくる、夢主はその前に飛び出して淡島に抱きつく。
「淡島さん!!」
「おい、夢主!お前・・・」
夢主のわき腹を百足が貫く。夢主は構うことなく、淡島へ治癒の力を発動する。あたたかさに包まれる感覚、癒される身体。
どさり、夢主の身体から力が抜ける。
「夢主!おい、夢主!!」
へにゃりと笑んだ夢主をゆっくりと地へ寝かす。
「一か八か・・・やってみるか」
淡島は子どものもとへ駆け寄る。
「おい!いつまでもピーピー泣いてんじゃねー!!」
「ひぃ、ごめんなさい」
あまりの迫力に子どもの涙も引っ込む。
「泣くんなら、俺の胸で泣けーーー!!」
淡島は子どもをしっかりと抱きしめた。
天女の”鬼憑” 完全なる母性――”イザナミ”
「おい」「お前」「貴様」
「「「「てめぇ何してやがる・・・敵に背を向けていいのか・・・?」」」」
天女の羽衣を纏ったようなあたたかく優しい雰囲気。
「安心しなさい。私が守ってあげるから、必ず助けてあげるから・・・ね?」
「うん・・・お母さん」
子どもの涙は完全に止まる。それと同時に妖怪にひびが入る。今まで淡島が斬ったはずの部分が音を立てて崩れていく。
「やっぱそーか。この世界、こいつが作った世界なんだな」
鋭く睨む。
「見てな、ガキンチョ・・・この妖怪、兄ちゃんがたたっ斬ってやるからな!!」
鬼神の”鬼憑” 完全なる父性――”イザナギ”
淡島の一太刀が今度こそ百足を切り伏せた。
畏れが薄れて世界が破綻する。
「夢主様!淡島!!」
夢主と淡島は二十七面千手百足の畏れから抜け出すことができた。夢主は淡島に支えられている。
「おおーおめーら!」
「夢主!?」
「どうしてここに!?」
怪我を負った夢主を見つけ、リクオと鴆が駆け寄る。
淡島から夢主を受け取ると鴆がその場に横たわらせるよう指示する。
そこへ夢主を探した首無、猩影の一手が合流する。
「夢主!!・・・どういうこった!?」
同じくぼろぼろになっている淡島に猩影が突っかかろうとする。
「猩くん、待って。淡島さんは違うの」
起き上がろうとする夢主をリクオが支える。
「無理すんな」
鴆に断りを入れて、夢主はリクオの手を借りて起きる。
「この姿で治癒の力を使ったから、だから・・・」
妖怪の姿のとき、陽の力である治癒は使えない。無理に使えば身体の内で陰と陽の力が相殺しあってしまう。
「オレたちぁ一匹妖怪倒してきたんだ、なぁ、夢主?」
「でもどうして夢主が!」
「猩影、あまり夢主様を責めてやるな」
黒田坊が助け舟を出す。
「それより夢主は治療が先だろ?鴆」
リクオが夢主の肩口を指して言う。
猩影は夢主に背を向ける。鴆の治療を受ける夢主はその背中を見つめるだけだった。