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その二十一
夢主の名前
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京妖怪が、その能力で船に巻きつくといよいよ船は落下を始めた。
そこかしこで火が出ていて、水を操れる者によって必死に消火が行われている。
朝日を浴びてもなぜか、昼の姿に変わらなかったリクオ、淡島、イタク。そのわけは、雲の下まで下降したとき明らかになる。
「どーなってんだ・・・・?こりゃ・・・・」
雲の下は京都の街が広がっていた。そこには禍禍しい柱が竜巻のようにそびえている。
「なんだ・・・ありゃあ」
「京都が・・・・」
猩影と夢主も変わり果てた京の都を前に驚きを隠せないでいた。
しかし今はそれどころではない。船は落下を続けている。
「まずいぞ!京につっこんじまう!!」
「このまま落ちたら飛べねぇ妖怪は全滅だ!!」
「頼むぞ宝船!!山だ!山に向きを変えてスピードを落としながら不時着しろ!!」
鴆が進路を指示する。それに宝船が答えた。
「ヒィ~~痛いけど・・・ガーマーン!!」
未だ妖怪に巻きつかれている宝船は縛られる痛みに必死に耐えているようだった。
「こいつしゃべれんのかよ!!」
必死に団扇を使って進路を変える。
「夢主?!」
進路を変えた宝船は、ほんの数瞬の間、安定した。そのわずかな時間に夢主は猩影の腕からすり抜ける。
「山沿いになった!!」
猩影が追いかけようとしたとき、宝船が不安定に揺れる。
船体にしがみつかざるを得ない状況で猩影は夢主を追いかけることができない。
「夢主!!・・・くっそ!・・・」
「安心するな!このままじゃ・・・船が分解するぞ!!」
首無が甲板を走り、船の前に飛び出した。そして自身の得意とする紐遣いで船が分解するのを防ごうとする。
「ギャアアアア痛いーーー!」
しかしそれは宝船の悲痛な訴えで緩められる。
そこへ付け入るように、先ほどから巻きついている妖怪、ヘマムシ入道がさらに、船を痛めつける。船がバラバラになる。
その時、鎌鼬のイタクが船首に躍り出た。鬼憑、レラ・マキリ!!
結ぶ者と斬る者の共闘が船の分解の危機を救った。
「俺の鎌の前で首なんて伸ばしてっからだ」
ヘマムシは倒したが、船の落下は止まらない。イタクはそのまま森に向かって鎌を投げる。すると、斬られた木の皮が、まるでネットのように宝船を受け止める。
「わああああ速度は落ちたけど、間に合わねぇ!!」
京妖怪は、全滅を見込んで去っていく。
誰もが絶望を覚悟したとき、船が淡い光に包まれた。
「こ、これは・・・!」
「なんだこの光!!」
奴良組、遠野勢、両者の驚き方は正反対だった。その光の正体を知るものは、その光にあやかった。知らぬ者は得たいの知れぬその光に警戒を示した。
「夢主様だ!!」
「夢主様!!!」
船の支柱、猩影に支えられながら、夢主が船を癒していた。
「宝舟も・・・生きてる、なら・・・!」
宝船も妖怪、それならば治癒の力が使えるはずだ。
「遠野勢、案ずるな!この光は夢主様の癒しの能力だ」
夢主の治癒によって傷ついた船体が徐々に回復し始める。
「川だ!川があるぞ!!」
「宝船!そこまでなんとか飛んでくれ!」
ザバーンと大きな音と衝撃を伴なって、宝船は鴨川に着水する。
しかし、勢いが強すぎた。このままでは川を曲がりきれない。
「止まれ!宝船!」
「ムーリーー!」
「おしまいだあああああ」
二度目の絶望を覚悟したとき、
本来の姿に戻った猩影が船の進行を止めるべく、船首を越えて船の前へ飛び出した。
ドンっと舳先へ手をついて、その勢いを止めようとする。
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
冷麗が川の水を凍らせ、猩影に加勢する。船の周りが凍りついた頃、漸くその進行は止まったのだった。
「止まったああああああ!!」
船員が喜びの声をあげたり、安堵の溜息をつく中、夢主はまっすぐに猩影の元へむかった。
「猩くん!!!」
身を乗り出さんばかりの夢主をリクオが後ろから支えた。
「夢主!危ねぇ、落ちるぞ」
「チッ・・・最初からこんな調子じゃ先が思いやられるぜ」
ぼそり、猩影の呟きは船上の誰にも届くことはなかった。
船は鴨川に着水した。
夢主はすぐさま猩影の元に向かうと、その身体を癒し始める。
「猩くん、怪我はない?」
「夢主、その力もう使うな」
猩影が夢主の手を下げさせる。
「・・・ここはもう、京都だ」
ザシュ・・・猩影が素手で何かを斬ったのがわかった。夢主の後ろには、川から出てきた京妖怪が伏していた。
「それに、さっきのあれだって」
あれ、とは船を治癒したことだろうか。
「だって、船が・・・。みんなの命が掛かってた」
「だったら、どうしてひとりで行くんだよ」
猩影が言いたいのは、夢主が一人で行動したことだった。
「そんなの、咄嗟だったから」
「咄嗟だったからって、敵がまだ船の上にいたのに」
「夢主様!猩影!」
船首にいた首無の呼びかけに、二人の意識はそちらに持っていかれる。
「猩影!すごいじゃないか!」
首無が呼んでくれたことにほっとしたのは他でもない、夢主だった。