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その二十一
夢主の名前
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リクオの頭が粉々に打ち砕かれた、かのように見えた。
ぬらり、白蔵主のすぐ側にリクオが姿を現した。
「なるほどな、これが畏をまとった者同士の戦い、か」
「『妖怪のくせにビビっちゃいかん』大昔、じじいがそう言ってた本当の意味がわかったよ、そうだろう?夢主」
「リクオ・・・鏡花、水月?」
夢主は猩影の腕の中で脱力した。猩影も、ふっと安堵の息を漏らす。
「ど、どういうことですか、夢主様?さっきも確か私の手からすり抜けて」
「常州の弦殺師首無!オイラーがリクオの畏おしえてやるよ!」
この場でリクオの為した技を知っているのは、夢主と遠野勢だけだろう。雨造がその説明を買って出た。
「ありゃあねーちゃんが言った通り、
鏡花水月っつってよーそこにいるに、そこにいない。敵認識をずらすって技らしいぜー!」
「言っちまえば妖戦は化かしあい。妖怪同士がお化け屋敷で合戦だ」
「どういうことだ!?お主・・・なにをした!?」
「なんだか・・・オレぁ今あんたのこと恐くねーな」
リクオがゆらりと敵に向かっていく。
「畏を断ち切った方が勝つ――そしたらそんな”畏(やり)”はよ・・・」
白蔵主がリクオを突きに来る。それに合わせリクオが祢々切丸を構える。
「一瞬でコナゴナだ」
首無は以前仕えた大将を想起していた。
二代目――私はあなたの言葉を、忠実に守っているつもりでした・・・
「首無、オレはこいつらに選ばせたいと思ってんのよ」
あれは夕方だった。
「人か、妖か」
二代目鯉伴はまだ幼い姉弟を連れて、庭に出ていた。
「一度、妖怪任侠の世界に入っちまったら、もう戻れねぇ。半妖のオレは妖を選んだが、夢主やリクオには妖の血が四分の一しか流れてねぇ」
鯉伴に手を引かれた夢主は眠そうだった。その日も世話係の目を盗んで屋敷の外へと遊びに出ていた彼女はさぞ疲れていたのだろう。
「こいつらの人生はこいつら自身が選ぶんだ・・・」
鯉伴が夢主を抱き上げる。それを見てリクオが自分もと父に縋る。
「しかし・・・もしものことがあったら!」
「首無ィ~お前さんはホント真面目だねぇ~」
両手に子どもを抱えて鯉伴が言う。
「『将軍様の御膝下』でもねぇ『帝都』でもねぇ。『東京』になってまた闇は薄まった・・・」
――まるでこいつらの血みてぇに
「ワシの茶枳尼が・・・それが噂に聞く、祢々切丸・・・か」
船上の戦は大将同士のぶつかり合いが終盤を迎えていた。猩影は、夢主を後ろから抱きながら、若頭の戦いを目に焼き付けていた。
「思ってもみなんだわ!!これほどまでにワシが容易くやられるとは!!」
突然開き直った白蔵主にリクオは拍子抜けする。
「首を斬れい!相棒なくして生きてはゆけぬ!!」
「へ?」
「この首級をとり堂々正面から京に入るがいい!!どうした早くせんか!!」
すげぇ・・・。京妖怪に勝ってしまった。
猩影がリクオの戦う姿を見たのは、四国のとき以来だった。あのときのような、玉章に押され、重症を追っていたリクオではない、しっかりと畏れの意味を理解した戦いをしている。
白蔵主が辞世の句だ、なんだとやっているうちに、彼の仲間であるはずの妖怪が攻め込んできた。
「最初からこんな船など、落せばよかったのだよ・・・」
今度こそ、四方、いや、360度敵に囲まれた船はピンチだった。容赦ない攻撃が宝船を襲う。
「狙え!底だ」
「船ごと落としてしまえば楽に殺せる!!」
大将であるはずの白蔵主がいくら静止を呼びかけてももう空の妖怪は止まらなかった。
「耐えろ!もうすぐ夜明けだ!」
「夢主!」
猩影は夢主を片腕で支えながら、京妖怪の攻撃を交わしていた。
「猩くん!私はいいから!」
「ダメだ!」
「でも・・・!」
「俺は夢主を一人にはできない」
「猩くん・・・」
夢主は俯くと唇を噛んだ。
「それは私が、弱いから?」
「夢主?」
――私が、重荷になってる・・・