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その二十一
夢主の名前
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「ってぇー頭ぶった」
「静かに!ばれちゃうでしょ」
「でもよぉ・・・こんな広いんだからもう少し広がっても・・・」
「ダメなの。私の畏れじゃあこれが限界。本当はもっとくっついて欲しいくらい」
「(これ以上くっつけるわけねぇ・・・猩影に殺される)」
宝船某所、物陰に隠れるのは、薬師一派頭領の鴆と奴良家長子の奴良夢主であった。二人がここに隠れている理由を少しばかり説明しよう。
京都に行くといったリクオを見送った夢主は、しかし大人しく留守番をするようなことはなかった。
「鴆くん、リクオが出入りに行くらしいよ」
「なに?!」
案の定、鴆はリクオが京都に行くことを知らされていなかった。鴆を除いた、リクオと盃を交わした妖怪たちには集合がかかっていたのにも関わらず、だ。
「リクオのやつ、また俺を置いていくつもりだな・・・って夢主、お前何してんだ?」
「出入りの準備?」
きょとん、と当然でしょう?とでも言いたげな顔で鴆を見つめ返す。
「待て待て待て!お前は病み上がりだろうが」
「もう平気だって言ってるでしょ?」
「だめだ。俺が認めるまでは絶対安静」
「でも鴆くん、出入り着いて行くのよね?主治医がいない間に、悪化したらどうしよう・・・」
「夢主、おまえ・・・」
どうにかこうにか丸め込まれた鴆は、夢主の畏れを借りてこうして船内へと潜り込んだ。もちろん、夢主も一緒に。
船が出港して暫くたったころ、甲板では首無と遠野妖怪のイタクが意見の食い違いから武力でのぶつかり合いをはじめた。
その光景を目にした鴆は、我慢の限界を迎えた。船を破壊するほどの激しい争い。これでは本当に京都に着く前に、船が落ちてしまう。
リクオの出入りを邪魔する輩を鴆は成敗するために飛び出した。
「鴆くん待って!ばれちゃう、よ・・・」
夢主の静止も聞かずに、鴆は首無とイタクに傷薬を浴びせた。
「くるぁあああぁ!!何しとんじゃああああああ!!」
思いもよらない人物の登場に甲板にいた妖怪は固まる。
「京に着く前にぃぃ――!?船がぶっこわれちまうだろーーがああボケェエ!!」
鴆の持つ液体(傷薬)を浴びたことに、首無は慌てる。まさか、毒ではないだろうな・・・?
「安心しな首無!!そいつぁ俺の毒じゃねぇ。それで終い!!これ以上味方同士の傷にゃつける薬は、この鴆持ち合わせてねーんだぜ!!」
屋根の上からかっこよく、勇ましく登場した鴆は、その場にいた全員の度肝を抜いた。お陰で首無とイタクの争いは収まったのだが・・・。
ドンっと甲板に降り立った鴆の頭を、リクオは容赦なくポかりと殴る。
「・・・・・・何しに来た、鴆」
「こら・・・てめーリクオ、また俺をおいていこうとしやがったな!!」
「オメー体弱ぇんじゃねーのかよ」
「だからって明日あさって死ぬわけじゃねーんだよ!!」
「何の屁理屈だ、そりゃー。血反吐はいて倒れたってしらねーぞ」
「バカ言え!むしろ本望だな。てめーが三代目になんの見届けられんならよ~~!」
まったく、夢主に着いてきて正解だったぜ、ぼそりと鴆が言い放った一言に、またも甲板が硬直する。
「夢主様に!?」
「着いてきて!?」
「・・・はぁ、姉貴、出て来いよ」
道理で、あっさりと自分を送り出したものだと、リクオは妙に納得した。
「鴆くんのばか!」
そう言い放った夢主をやっと他の者が認識した。
「夢主様、本当にいらしたとは・・・」
「夢主様!」「夢主!」
声をそろえて夢主を呼ぶのは、首無と猩影。
「どういうことですか、夢主様?」
「夢主、本家で待ってるって言わなかったっけ?」
夢主は仁王立ちのふたりに見下ろされている。
「・・・私だって」
「半月前のことを忘れたわけではないでしょう。先ほど話しましたよね?ああ、そういえば四国のときも貴女はひとりで危険なことをしましたね、まったく夢主様!ご自分の命が狙われていることの自覚はあるのですか!!?」
珍しい首無の剣幕に、夢主は一歩後ずさる。
「く、首無!」
首無が言い放ったのは事実であるが、それゆえに聞かれたくない相手が側にいることを配慮して欲しかった。しかしその聞かれたくない相手は、事実を知っても動揺を見せなかった。
「・・・まさか、猩くん」
知っているの?恐る恐る聞いてみる。
「俺が知らないとでも?俺は牛鬼の小父貴や総大将に夢主のことを任されてんだぜ」
「夢主様、どうしてそうと知りながら、危険な京に行こうとするのです」
「・・・羽衣狐の姿を、私ははっきりと覚えている。それに、その腹心のような妖怪のことも」
「それは夢主が自ら出て行く理由にはならない」
「ねぇ、それは、私が・・・」
夢主が言いかけたとき、船に大きな衝撃が走った。揺れる船の上、乗員はとっさに踏ん張りながら身構える。夢主は猩影に支えられ、なんとか立っていることができた。