すべての夢小説で共通です。
その十七
夢主の名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
・・・思い出した。
私は、あの時、見せられていた。
父の最期から目を逸らすことを許されず、その絶望を心に刻まれた。身体を固定され、顔を押さえられ、目を閉じることを許されず、涙を流すことも叫び声を挙げることも禁じられた。
そうだ・・・私は、父の、二代目の死の真相を見ていた。
「おとぅ、さん・・・ごめ、ごめんなさいっ」
「夢主、辛いことを思い出させましたね」
己の心を守るため、夢主は父の死とそれを見せられた恐怖のうち、後者を忘れることで精神を保った。しかしその代償として、心を閉じ込めてしまった。それはその少し後に猩影によって救われることとなる。
父の死を断片的に記憶したまま、状況を忘れた夢主は、その死の真相は忘れていた。
急に溢れてきた記憶に、唇を噛み締めて耐える。涙が溢れそうだ。しかし今更泣いたところで、忘れたことの罪滅ぼしにもならない。どうして忘れていたのか、夢主は自分を責める。
悔しい。
そんな肝心なことを忘れなければならなかった自分の弱さが、何より悔しい。
「違うのです、夢主。貴女を責めたくてこの話をしたのではありません」
珱姫は夢主を抱きしめ、孫娘の手を握り背を軽く叩いて、宥める。
「貴女に思い出して欲しかったことは、治癒の力を受け継いだ貴女が狙われているということです。400年前、私は妖様、貴女の祖父に助けていただきました」
当時の京の都には、私を含め、不思議な力を持った姫が幾人かおりました。あるとき、その姫たちが大阪城に集められたのです。その天守閣にいたのは、羽衣狐でした。羽衣狐は生き肝信仰の妖です。不思議な力を持った姫たちの生き肝をその力に変えていたのです。夢主、どういうことかわかりますね。現代再び、羽衣狐が蘇り、そして400年前果たせなかった宿願を果たそうと動き出しました。
「夢主、気をつけ・・・」
そこまで言うと珱姫の姿が急におぼろげになった。夢主は、咄嗟に珱姫に手を伸ばすが、それは空を切ることになる。
「おばあちゃん・・・?」
「怪我はもう癒えたようですね。夢主、身体を大切にしなさいね。妖様によろしく伝えてください・・・」
そうして微笑んだ珱姫は白の世界に溶けるように消えていった。
残された夢主もまた、この白の世界には長く居れないようだ。何かに引き上げられるような感覚が襲う。
目が覚める、唐突にそう思い、そして身を委ねた。