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その七
夢主の名前
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丑三つ時を過ぎたころ、夢主はこっそりと屋敷を抜け出そうとしていた。
しかし、ここは妖怪屋敷。夜だからといって家の者がみんな眠っているわけではない。草木も眠るこの時間こそ、彼らは活発になる。
夢主は畏を発動し、誰にも認識されることなく、堂々と本家の門をくぐる。
抜け出すことなど、容易い。
そう考えていたとき、夢主を呼び止めるべく声を掛けてくる者がいた。
「おじい、ちゃん」
ぬらりひょんである。
「おい、夢主。お前、どこへ行くつもりだ。わざわざ明鏡止水まで使ってよぉ」
同じ畏れを持つぬらりひょんには、夢主の畏れなど通用しなかった。
「あの、それは・・・」
「ちょいと、散歩に付き合えや」
有無を言わさず、ぬらりひょんは夢主を促した。
「それで、どこ行こうとしてたんじゃ?」
「友達のところ」
ぬらりひょんの横で、ひどく落ち着かない様子の夢主。
「こんな時間にか」
「こんな時間だから、みんなに隠れて出てきたの」
「そうか・・・。何をそんなにピリピリしておるのじゃ、夢主らしくなかろうに」
「・・・そんなこと・・・」
何を言ったところでいい訳じみている。
夢主はそれを自覚して言葉を続けるのをやめた。
「狒々の息子と何かあったんじゃな」
「どうして、それを・・・」
「カラスの息子に聞いたぞ」
「黒羽丸・・・」
まじめな黒羽丸のことだ、日常の報告の折に言及したのだろう。
「のぅ、夢主。その友達ってのは・・・人間か?」
夢主は息を呑む。
その様子にぬらりひょんはゆっくりと瞬きをして話を続ける。
「牛鬼の件、一歩間違えばどうなっていたか、わからんわけではあるまい」
それは、相手が牛鬼だったから大事には至らなかったというのか、それとも、説得が成功したからという意味なのか。
「・・・おじいちゃん、お願い。私、自分にできることをしたいの」
「お前さんにできること?」
「誰かが、傷つくのをもう見たくない」
「ダメじゃダメじゃ。お主、全然わかっとらん」
「?」
「まあ行くというのなら、止めはせん。’’自分にできること’’をやってみたらいい」
「おじいちゃん!」
ありがとう、そう言って夢主は駆けていく。
夢主はわかっていない。自分がしようとしていることで、傷つく誰かがいるということを。だから、これはぬらりひょんにとって、賭けだった。
「そしたら、本当に’’夢主のすべきこと’’がわかるじゃろ」