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その六
夢主の名前
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「おっと、邪魔が入ったね」
言葉とは裏腹に、玉章は夢主から離れようとはしない。
猩影の登場に微塵も動揺していないようである。
「てめぇ、今すぐ夢主様から離れろ!じゃないと・・・」
「猩くんやめて!ここは学校よ!」
猩影の登場に動揺したのは、夢主のほうだった。
大丈夫だと、釘をさしたのに、どうして追ってきたのか。
「夢主様、危険です!今、俺が」
夢主の思いは猩影にはわからなかった。
状況を、玉章に迫られる夢主を見て、猩影は最善を判断する。
「ここで僕とやり合うってのかい?僕が勝ったら夢主を僕にくれるというのなら、」
「てめぇ!ふざけたこと抜かしてんじゃねぇえええ!」
夢主に手出しはさせない。
叫ぶとともに猩影は駆け出す。
「猩影!」
凛とした声が響く。猩影の動きがぴたりと止まる。
「夢主様・・・」
「やめてって、言ってるでしょ」
気が付くと夢主はすぐ隣にいた。それには玉章も驚いたようだ。
「すみま、せん・・・」
「あと、敬語も。ね」
私なら大丈夫だからと夢主。
「ほう・・・それがぬらりひょんの畏か。ますます君がほしくなったよ。君が僕の隣に来てくれるなら、ここから手を引くことを考えてもいい」
「させるかよっ!夢主は、渡さねぇ!」
猩影は夢主をぐいっと引き寄せた。
「猩くん」
「まあ、時間の問題だよ」
余裕の表情を崩すことなく、玉章は教室に戻っていった。
夢主は猩影からいい加減離れようとするが、猩影は離さない。
「夢主、どうして危険だとわかっていながら、ついていった?」
「あの場で、断ることはできなかったからよ」
「だけど、どうして俺を呼ばない」
夢主は、玉章が妖怪であるとわかっていたはずだ。自分の立場も。
それなのに、一人で敵かもしれない相手についていった。
猩影はそれが許せない。
「猩くんはすぐ手が出るでしょ、だから」
視線を外して夢主はぼそぼそと呟く。
「当たり前だろ!”夢主様”に何かあったらどうすんだ!」
”夢主様”。二人のときは、恋人として一緒にいるときは、生まれながらの立ち位置は抜きで。
だから敬称はなしよ。
ずっと前に約束した。
遠く感じるから。
猩影がそれを使うとき、それは本家と貸元の立場を弁えているとき。でもそれは無意識に近い。
「・・・『本家に示しがつかない』?」
「はっ!ちがっ・・・」
夢主の言葉にはっとする。
「ここに来てくれたのは、私が本家の娘だから?」
「そうじゃ・・・」
今、俺はどっちにいた。夢主の恋人という位置か、貸元の位置か。
「猩くんは、私のこと恋人として見てくれてると思ってた。だけど・・・私が”奴良夢主”だから一緒にいてくれた、の?」
「そうじゃねぇ!俺は夢主を」
・・・守るために。
「私は猩くんをひとりの人として、見てたのに」
「夢主!!」
夢主は駆けていってしまった。
何のために一緒にいるのか。守るために。それはどの立場から?
屋上に取り残された猩影は、玉章と夢主が出て行った扉をただじっと見つめた。