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その五
夢主の名前
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「 牛鬼!リクオ!」
牛鬼の居た部屋に戻ってきた夢主は、部屋中に飛び散った血に思わず膝をつく。
牛鬼は倒れている。リクオも深手を負っている。
どうすればいいのかわからない。牛鬼はリクオの意志を確かめると言っていた。
夢主は牛鬼を止められなかった自分を恨んだ。
これは、私の所為?リクオと牛鬼がこんなに怪我をしているのは、私の所為。
「夢主?!」
居るはずのない姉の登場に驚くリクオ。
「・・夢主様、お目覚めですか」
仰向けに倒れた牛鬼だけは表情を崩さなかった。
「牛鬼、てめぇ夢主に何をした」
「夢主様には少し眠っていただいただけ、ですよ」
「リクオ・・・牛鬼・・・」
夢主は頭が混乱していた。
目の前の惨状は、どうして起こった?私にもっと力があれば・・・。わかってたのに。何もできなかった自分が悔しい。
「牛鬼、オレを殺してそれからどうする」
「お前を殺して、私も死ぬのだ。・・・リクオ、きけ。捩目山は奴良組の最西端。ここから先、奴良組の地は一つもない」
その時、表に通じる戸が開いた。黒羽丸とトサカ丸だ。
「リクオ様ぁぁ!?っ夢主様!」
「な・・・なんだぁぁ!?この状況は!?」
二羽も夢主と同様、部屋の中の状況を見て驚いていた。惨劇だ。
「そこにいるのは・・・・・・牛鬼だな!?」
駆け寄ろうとする二羽をリクオは手で制した。
「この地にいるからこそよくわかるぞ、リクオ。・・・内からも外からも・・・いずれこの組は壊れる」
牛鬼は倒れたまま語り続ける。
「私の愛した奴良組を・・・つぶす奴が許せんのだ。たとえリクオ、お前でもな・・・」
「逆臣・牛鬼!リクオ様と夢主様・・・本家に直接刃を向けやがった・・・!」
「当然だとは思わんか。奴良組の未来を託せぬうつけが継ごうというのだ。・・・しかしお前には、器も意志もあった。私が思い描いた通りだった。夢主様がおっしゃった通りだった」
そうして牛鬼はゆるりと起き上がる。
「もはやこれ以上は考える必要もなくなった」
「リクオ様危のうござる!」
「っリクオ!牛鬼!もうやめて!」
夢主はそう叫ぶことしかできなかった。
身体が動かない。胸が苦しい。また目の前で・・・
「これが私の結論だ!!」
牛鬼は刃を自分の方へ向け一直線に沈めようとする。
夢主は思わず目をつぶった。