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その四
夢主の名前
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捩目山山頂、牛鬼組屋敷。
「牛鬼、リクオたちはどこ?」
正直夢主には、黙って本家を出てきたことを考える余裕など露ほどもなかった。
「リクオ様なら、今頃、牛頭丸と戦っておりましょう」
先ほどの慌てぶりはどこへやら、牛鬼は夢主を振り返ると、ゆっくりと落ち着き払った態度でそう告げた。
「・・・どういうこと?」
「夢主様、あなたは頭がいい。この状況、どういうことかわかっておられるのでは」
「そう・・・。私の勘違いだったらよかったのだけど」
そういうと夢主は妖怪へと変化した。
薄々理解していた、''無事''ではないだろうと。
「なぜです。なぜ、力がありながら、三代目を継がないのです」
牛鬼が刀を抜いた。それを見て夢主も戦闘態勢に入る。
「三代目はリクオよ。リクオにはその器がある」
言い切った夢主に牛鬼は納得がいかぬと刀を振るう。
「どこを見て、そうお思いか。昼のリクオ様は変化されたときのことを覚えていないご様子。それではまるで別人だ。人間に、妖怪の総大将は任せられない」
交わった刃がギチギチと音を立てる。
両者とも一歩も譲る気配がない。
「それは・・・」
「私はあなたの考えが聞きたいのです。あなたも総大将の血を四分の一も継いでいる。仮に三代目に名乗り上げれば、あとに続く者もございましょう」
「リクオが人間だというのなら、私も人間よ」
夢主の核心をずらした応えに牛鬼はさらに刀を握る手に力をこめる。それを受け止めるのが夢主には精一杯だった。
「またそうやってかわすのですか、のらりくらりと。あなたはいつもそうだ、肝心なことは口にしない」
「・・・」
「夢主様、このままでは奴良組は弱体化する一方。総大将の血を継いだあなたなら、三代目になれるのです。なぜ・・・」
「・・・」
「それとも、大猿会若頭のためか」
「っ違う!猩影は関係ない!!」
夢主は牛鬼の刃を跳ね返し、刀を大きく振り下ろす。しかし牛鬼はそれをなんなくかわす。かわされた刃が床に突き刺さる。
夢主はそれを引き抜くことなく、あきらめたように語りだした。
牛鬼もそれに倣い刀を下ろす。
「・・・私は・・・、強くない、からよ。妖怪に変化できても戦う力はないわ。今だって、牛鬼なら私くらい殺すことは簡単でしょう?戦えない大将には誰も付いてこない。大将になれるのは、下の者を導き、守ることができる者でなければならないわ。それが、リクオにはあると、私は思ってる」
「・・・それがあなたの答え、意思ですか」
「納得、してくれたかしら」
牛鬼が刀を鞘におさめたことで、夢主は微笑む。それに牛鬼は一瞬目を見開いて、だがすぐに厳しい表情になる。
「しかしそれは、やはりリクオ様の意志を見極める必要があります。これは私が長い間考えて出した『結論』です。止めようとしても無駄です」
「っ何をするつもりなの・・・?」
牛鬼を止められたと思っていた夢主はその発言を聞いて焦る。
「私の目で確かめるのです。リクオ様に、夢主様のおっしゃる”器”があるのかどうか・・・」
夢主は息を呑む。
「そしてリクオ様に三代目となる器がないと判断したときには、奴良組のため、消えてもらいます」
「そんなことをしたら、牛鬼、あなただってただでは済まない。破門されてもおかしくない」
「わかっています。それでも、奴良組のため・・・」
「牛鬼、お願い、やめて!今ならまだ・・・っ」
「・・・もう遅いのです」
牛鬼は倒れこんでくる夢主をそっと受け止める。幻術で眠らせたのだ。
もう遅いのです。あなたを本家から連れてきたのだから。引き返せない状況を作るためにあなたを巻き込んだことを、どうかお許しください。
牛鬼前編。