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その一
夢主の名前
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奴良組本家では総会が行われていた。
「そのことなら、前々から言っておる通り、奴良組72団体構成妖怪1万匹を率いる三代目はわしの孫、リクオをおいて他にない」
三代目の跡取りについて切り出した一つ目入道に対してぬらりひょんはこう答えた。
「ですがリクオ様はまだ幼い子どもです」
「漏れ聞くところに寄れば、リクオ様にはその気がない」
その場が騒然となる。
「総大将、それは真でございますか」
「妖怪に覚醒したのも、4年前に1度きりと聞いておる」
「とあらば、リユキ様はいかがか」
「成人したとはいえ、リユキ様とてまだ幼い」
「さらにリユキ様は、後方支援型。治癒はできても戦闘には不向きじゃ」
「だが、リクオ様のまだ見ぬ才を待つよりは・・・」
「そうですな、一度リユキ様の意見も聞きとうございます」
リクオの姉であるリユキの名前が出てその場はさらに騒がしくなった。そこへ今まで沈黙を守っていた牛鬼が声をあげる。
「みなの言うことはもっともだ。されど、『畏』とは鬼が鞭を持つと書く。それすなわち、闇の世界の主なり。待つのだ、リクオ様がその手に鞭を握る日を。真の畏を纏う日を」
「猩くん帰ろー!」
HR終了とともにリユキが猩影のところへやってきた。
「はい、リユキ様」
「む。様付けしないで、それと敬語も」
「う、しかし」
「猩くん」
リユキはじとっと猩影を見る。猩影はリユキに上目遣いで見つめられ、言葉につまる。
「あ、ああ。わかり、わかったよ。リユキ…帰ろう」
「今変な間があったけど心の中で敬称つけたでしょ」
「はぁ~、負けたよ。リユキ、帰るぞ」
「うん!」
にっこり笑ってリユキは猩影の大きな手を取った。それに猩影も軽く握り返す。
リユキは奴良組本家の大事な跡取り候補ではあるが、リユキにはリクオのように護衛が付いていない。それは本人の希望であり、その代わりにということで猩影がリユキと登下校を共にしている。理由はそれだけではなく、二人は小中高とずっと同じ学校に通う謂わば幼馴染であり、今では恋人という関係なのである。
「ねえ猩くん、駅前にクレープ屋さんができたって聞いたんだけど、行ってみない?」
「でもあんまり遅くなるわけには」
「ちょっとだよ。クレープ食べたらすぐ帰るから」
お願いと小首を傾げられては、猩影は断れない。そんなことを知ってか知らずかリユキはにこっと笑った。
クレープ屋はオープンしたばかりということもあって行列ができていた。しかし並んでいる間、リユキと猩影は学校での出来事や友達のことを話していたのであっという間に順番が回ってきた。
近くのベンチに座ってクレープを食べる。さすが話題になっているだけのことはあって味はなかなかのもの。
「猩くん一口ちょーだい!私のもあげる」
はいっとクレープを差し出されて、リユキは一口食べた。
「チョコもおいしいね!はい、こっちも食べてみて」
「・・・」
猩影は一瞬迷ったが、リユキのクレープを一口もらった。
「うまい」
「でしょ、キャラメルおいしいよねー」
きらきらと笑うリユキに猩影は顔が赤くなるのを自覚した。それを隠すために自分のクレープに噛み付く。だが思いっきり噛み付いたために中身が飛び出して、手に付いてしまった。
「うわっ」
「あーやっちゃたね。待って今ハンカチ出すね」
「いや、いい。あそこの水道で洗ってくる」
なんだか妙に慌てていた猩影にリユキは頭にハテナを浮かべる。
水道は目と鼻の先にある。しかし、水道を使っているときは、自然とベンチに背を向けることになる。
ちょうどその時だった。
「ねえ、君ひとり?」
「僕らと遊ばない?」
「あ、それあそこのクレープでしょ、一口ちょーだいよ!」
リユキは、高校生かそれよりも年上の男3人組みに囲まれてしまった。
「あの、連れが・・・」
連れがいますと言いかけた時、3人組みの後ろに猩影が戻ってきた。
「あ、」
リユキの呟きと視線に、男たちは振り返る。
「う、うわでけー」
「おいてめぇら、何してやがる」
猩影が低い声で3人を睨みながら言う。
「ひ、ひえー」
「男連れかよ」
猩影に圧倒された3人はびくびくしながら走り去っていった。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、何もされてないし。それより敬語」
リユキはまたむっと口を膨らませた。
「・・・よかった。悪かったよ、ひとりにして」
「心配しすぎよ。はい、ハンカチ」
「さんきゅ」
そのあと二人はクレープを食べ終えて帰路についた。
「おお、リユキ帰ったか」
「ただいま、おじいちゃん!」
部屋に向かう途中の縁側で祖父であり妖怪の総大将でもある、ぬらりひょんがお茶をすすっていた。
「今日は少し遅いんじゃないか」
「駅前にクレープ屋さんができたの。だから帰りに寄っちゃった」
「なんじゃと!それはぜひわしも食べてみたいのう」
「とってもおいしかったよ」
「・・・なあ、リユキ」
「何?おじいちゃん」
「お前さん、ワシのあとを継ぐか?」
「何いってるの。それはリクオでしょ」
「ははは、そうじゃったな」
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