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｢引っ越す……？｣


『ゔん"』







夜遅く、家を抜け出して万次郎の家まできた私はボロボロと涙を零しながら万次郎と手を繋いでいた。そんな私の口から出た言葉は私と万次郎の距離を離すものだった。







｢なんで……｣


『お父さんが、転勤するからって』







『万次郎と離れたくないよぉっ……』泣いてもどうにもならない、そんなこと分かっている。けれど、泣かないと今でも心が折れてしまいそうだった。







｢すみれ｣







名前を呼ばれたかと思うと、ふわりと大好きな香りに包まれる。そして、安心させるかのように私を優しく抱きしめる。







『まんじろぉ……』







私は目を腫らすほど、万次郎の腕の中で泣いた。キラリと耳にあるピアスが輝いた。