愛すべきもの…。守るもの…。
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私は清田まどか。現在年齢は20代後半。
夫の清田信長とは高校一年生の頃に出会い、夫がバスケ部員、私がマネージャーという形で…交際を始めた。
高校1年生時代ー
海南大付属バスケ部は、夜遅くまでの練習が日常茶飯事。
マネージャーになりたての頃は、キツく感じたことが多かったけど、慣れてきて尚且つ大好きな彼氏と一緒に過ごせる時間となると、「大変!」とか「嫌だ!」って、ぼやきたくなることはほぼ無かった。
ある夜の帰り道…その日は星が綺麗だった。
私は偶然、流れ星を見つけた。子供の頃に一回見たことがあるかないかだったので、つい…
「あっ!流れ星!早く願い事お祈りしなきゃ!」とはしゃいで、すぐに手を合わせてお祈りした。
「ったく高1にもなって、いつまでもガキみてぇなことしてんじゃねぇよ!」
彼氏の信長が、皮肉っぽく言った。
「何よ!王者・海南バスケ部マネージャーであっても…私だって普通の女の子なんだから、こういうことの一つや二つしたって良いじゃないの!」
強気な口調で、女の子アピールをする。
「で、願い事何にしたんだよ?まどか?」
「秘密♡教えたら意味ないでしょ⁉︎ 何、ノブそんなに知りたいの?エッチ‼︎」
夜遅く、学校付近で戯れあい騒ぐ…。
「あんなハードな練習したのに…清田、まだ元気有り余ってんのか。しかも違う方に…笑」
キャプテンの牧先輩から、ちょっと下品な発言をされた。
「一年生は元気があって良いことだけど…することするときは、使うものはしっかり使うようにね♡」
爽やかな風貌とは裏腹に、神先輩はなんとなく痛いところを突くような事を言ってきたかもと思った。
私の願い事…それは…
(信長と結婚して幸せな家庭を築けますように♡)
彼のことが好きでたまらなかったから、かけた願い事。
それから何年もの歳月が過ぎてー
私達は高校卒業、大学進学…二人とも教員免許を取得した。
ノブは体育教諭免許、私は養護教諭免許を取得。
就職活動時に母校・海南大付属高校で保健体育科と養護教諭の採用枠が、それぞれ設けられていた。
私達は絶対採用になりたかった。
たくさんの思い出が詰まった青春時代を過ごした母校で教鞭を取りたいのと…。
実はこの時、私達より少し先に…牧先輩が保健体育科、神先輩が社会科で教員採用されて勤務をしていて、尚且つ二人は恩師・高頭監督のもとで、高校時代の経験を活かして、バスケ部顧問も務めていた。
これだけの条件が揃っていたら、特にノブは、採用試験の勉強を、これでもかと言うくらい熱心に取り組んでいた。
結果は…二人とも『採用』。
二人で涙を流して喜んだ。大学生活の中で一番嬉しかった事だった。
そして海南に赴任し、ノブは牧先輩が指導係についての保健体育科の教師になり、もちろんバスケ部顧問にも。
そして私も、正式に養護教諭に…。
お互いに忙しい毎日を送りつつも、交際は10年近く続いていて、教師2年目の年からは同棲を始めて、高頭監督はじめ学校公認の職場恋愛となった。
26歳の誕生日を迎える年ー
教師になって約4年が経った頃、正式にプロポーズされ、入籍→結婚した。
全校朝礼で婚約会見みたいなことまでして、校内新聞にも、でかでかと載せられた。
そして『藍川 まどか』から、
『清田 まどか』となった。
職場で夫婦別姓にしたくないから、“ まどか先生”と呼ばれるようになった。
新婚の頃は、ついつい職場(学校)で、ラブラブ振りを見せてしまったり、職員室内で少々派手に夫婦喧嘩をしてしまうこともあった。
結婚から1年半前後経過した頃…私の体調に時折異変を感じるようになり、病院へ行ったら妊娠が判明した。
この時の旦那(ノブ)は…
「やったー!よくやったまどか!元気な男を産んで、バスケみっちり教え込んで、高校は王者・海南に入れて、一人前のバスケ選手にさせるぞ!この清田信長様の子供に不可能はない!親子二代でルーキーセンセーションだ!かーっかっかっかっ!」
と、まだ性別すら分からないのに早くも親バカぶりが出まくっていた。
私は…妊娠初期の頃は、つわりが酷かったりとかで、当日欠勤する事が多々あったけど…。
でも学校では…旦那(ノブ)をはじめ、バスケ部員&マネージャーや、旦那(清田先生)・牧先生・神先生が担任しているクラスの生徒達が、私の体を気遣ってくれて、仕事や学校生活を、色々サポートをしてくれた。
そして、ある程度お腹が目立つようになった頃から、“産育休手続”を進め始めた。
産休開始日前日の全校朝礼では…
「この度私『清田まどか』は、本格的に出産準備等に入る為、当分の間、海南大付属高校での養護教諭の仕事をお休みする事となりました。
そして私は…母校であるこの学校の養護教諭になれた事を、本当に嬉しく思っています。
皆さんのこと、忘れません。
元気な赤ちゃんを産んで、仕事と家庭を両立出来る女性になって、またここに帰ってきます。
これを以て、一旦お別れの挨拶とさせて頂きます。」
絶対に泣かないって決めたのに、結局泣いてしまい、他にも涙を流す生徒達や同僚教師も居た。
旦那(ノブ)と、牧先輩・神先輩が顧問を務めるバスケ部からは、大きな花束に皆からのメッセージが沢山書かれた色紙を渡された。
勿論、顧問&高頭監督からのメッセージもあった。
こうして、私は産育休に入った。
そして妊娠期間も、そろそろ10ヶ月目が近づいてきた頃ー
検診では大凡の予定日も伝えられ、経過は順調だったが、性別は未だ不明だった。
一方旦那(ノブ)はと言うと…相変わらず体育教師&バスケ部顧問で、忙しい日々を送っていた。
でも、教師になって5,6年以上は経っているので新米の頃よりかは、大分仕事もできるようになってきて、教師らしさも出てきたと言う話は、ちらほら聞くようになった。
ある日曜日ー
海南バスケ部は昔から変わらず、日曜日も夕方まで練習。
私は朝からお弁当作りをしていた。この日は、なんだか良い気分だった。
「まどか♡弁当作ってくれた?日曜日練習の日は、弁当が楽しみで仕方ないんだよ♡」
と甘々な口調で言ってくる。
「今作ってるわよ。ノブの好きな物いっぱい入ってるから♡それより、テーブルに朝食用意してあるから、早く食べないと練習遅れるわよ!」と言い、急いで朝食を食べる旦那(ノブ)。
「じゃあ、行ってきます!まどか♡早く帰れるようにするからな♡♡♡」
出産が迫ってるせいか、夫婦二人の時間もあと僅かだから、出勤前のキスは少し回数が増えてる。
家事がひと段落して、リビングで休もうかなって思ったら…旦那(ノブ)が、テーブルにお弁当置き忘れ発覚‼︎
「(早くも親バカしまくって浮かれまくって、忘れ物か⁉︎)」って気分だった。
届ける為に身支度をして、お弁当と自分の必要な荷物を持ち、家を出る。
久しぶりに学校へ行くから…マタニティとは言え、なるべく可愛いのを選んで、独身時代と変わらない化粧もしてみた。
髪は…ずっと伸ばして腰までのスーパーロングだったけど、『母』になるための決意として、産休に入ってすぐ、30cm以上は切ってしまった。
でも、伸びるのが早いのでもう肩下まであり、簡単なストレートハーフアップにして、お気に入りのヘアアクセもつけた。
学生時代と赴任したての頃、よく乗ったバス・電車を乗り継いで海南に向かった。
バッグに『妊婦マーク』が付いてるのと、日曜なだけあり、楽々と座れる。
学校に着き、体育館の扉を叩く。
「ちょっとー!バスケ部に用があって来たの!開けてー!」と叫んだ。
「「あれ、この声は…?」」
牧先輩と神先輩がハモったようだった。
すると扉が開いて、旦那(ノブ)が出てきた。
「まどか⁉︎お前、何で体育館に来たんだよ⁉︎そんなにお腹大きいのに、こんなところまで出歩いて大丈夫なのかよ⁉︎」
流石に不安がって聞いてきた。
「何言ってんの?私は、旦那様の忘れ物を届けに来たの♡ほら、お弁当。テーブルに置きっぱなしだったわよ!」
トートバッグを皆に見えるように差し出した。
「「おー!清田先生の愛妻弁当だ!」」
「「まどか先生、お久しぶりです!どうですか?体の方は?」」
「まどか先生、俺2年になってからスタメンになれた!」
「清田先生の奥さん美人!綺麗!可愛い!」
「まどか先生!清田先生、相変わらず…結婚式の写真、デスクに飾りまくってますよ♡最近は、夫婦のツーショット写真が多いけど♡
職員室のノートパソコンの壁紙も、まどか先生とのラブラブな写真で作った壁紙なんですよ♡」
「まどか先生、髪短くした時の写真見てびっくりしたよ!でも今日も可愛い!」
久々に私が学校に来たので、練習そっちのけで、部員達から色々な話が飛んでくる。私は懐かしくて、少し嬉しかった。
すると…
「こらー!そんなに一方的に喋り倒したら、まどか先生がびっくりするじゃないの!今デリケートな時期なんだから、もう少し女性のことを考えた言動・行動をしなさい!」
と大声で強気に、男子に物怖じせずにズバズバ物言いをする女子生徒の声が聞こえた。
勿論、男性陣は皆ビックリして静まり返っていた。
「まどか先生。うちの部員達が驚かせてしまって、すみませんでした。」
謝ってきた女生徒は…目が大きく、髪型は艶のある黒髪セミロングを一つに束ねていて、ちょっとお人形っぽいキレカワな雰囲気であり、でも知的な雰囲気もあり、スラッとしてスタイルも良い。
(でもこの子…なんか見た事があるような…?)
「おう!新城!またやらかしちまったみたいで、悪かったな。」
「清田先生!奥様今デリケートな時期なんですから、あまり心身に負担与えるようなことしちゃ駄目ですよ!」
旦那(ノブ)と女生徒のやりとり後…
「まどか先生。改めてご挨拶させて頂きます。私、海南大付属高校1年A組・新城里紗と申します。バスケ部マネージャーにクラス委員も担当しています。いつも清田先生にはお世話になっております。宜しくお願い致します。」
すごく丁寧な挨拶をされ、「本当にウチの旦那(ノブ)の生徒なの?」と心の中で思ってしまうほどだった。
「あー!新城さん⁉︎旦那(清田先生)から話は聞いてるわ。入学式の写真も見せて貰った。
てか、写真でも可愛らしい子だと思ったけど、実物の新城さん、凄く綺麗ね!モデルみたい!
旦那(清田先生)のクラスで…あなたがバスケ部1年生女子マネで、クラス委員の子ね。
では、こちらも改めて…清田信長先生の妻・清田まどかです。旧姓は藍川です。
産育休前まで養護教諭してました。
こちらこそ、いつも主人がお世話になってます。宜しくね。」
新城さんほどではないが、それなりの挨拶をする私。
旦那(ノブ)は恥ずかしがっているようで、頬をぽりぽり掻いていた。
「ねぇ、清田先生(ノブ)。久々に体育館来たから、少しだけ練習見て行って良い?私の分のお弁当も持って来ちゃったし、帰りは一緒に帰りたいし…。」
ちょっとおねだりする私。
「牧先生、神先生、清田先生…。まどか先生は向こうの椅子に座って、私が付き添ってますから、見学させてあげても良いですか?」
新城さんが顧問3人に、私の為に頼んでくれた。
自分のマネージャー業務があるのにも関わらず…
男性陣は女子マネに頭が上がらないところがあるらしく、OKを出してくれた。
「先生方、ドリンク・救急箱・スコア表etcはいつもの場所に置いてあります。何かあったら、私を呼びに来てください。
さあ、まどか先生行きましょう。」
新城さんは本当に気配りができる子だと、改めて実感しながら、一緒に椅子に腰掛ける。
「新城さんてさ…旦那(清田先生)から、話はよく聞いてたけど、本当に優秀なのね。
海南バスケ部1年生女子マネ、クラス委員…。
更に聞いた話だと、勉強もスポーツも出来て、リーダーシップもあるんでしょ。家でも旦那(清田先生)がね、『俺のクラスの女子・新城里紗は、すげー優秀な生徒だ!バスケ部にとってもクラスにとっても、必要不可欠な存在だ!』って、誇らしげに語ってくるのよ。」
「清田先生、そんなこと言ってるんですか⁉︎」
強気な優等生でも、少し照れていたようだった。
「あとこれはね、牧先生と神先生がついこの間うちに来た時、4人でご飯食べた後男3人で飲みながらね…『新城ほど、“才色兼備”って言葉が似合う女子は居ない。』『ミス海南決定だな。』なんて言ったりもしてたのよ。」
「えぇ⁉︎牧先生に神先生まで⁉︎」
新城さんは更に照れていた。優等生のこう言う一面も可愛いなと思った。
二人で女子トークをしていたら、
「新城!すまないがちょっと来てくれ。スコア表やら練習試合の組合せやら、他にも話したい事があるんだが…。」と牧先輩から呼出しが掛かった。
「分かりました!今行きます。まどか先生、ちょっと外れますね。」と言って、顧問と部員達の所へ走って行った。
それから私は牧先輩と新城さんのやり取りや、部員達のドリブル・シュート・パス練習etcを見たりして、自分の高校時代を思い出したりして懐かしい気分に浸っていた。
その時…
(うっ…痛い!苦しい!まさか…⁉︎)
突然の激しい腹痛に襲われ、お腹を抱え込んでしまった。そして下半身が湿っぽくなってきて、椅子や床、履いていたスカートを派手に濡らしてしまった。
なんとこんな時に、陣痛…そして破水までしてしまったようだ。
ちょうどその時、顧問の指示で10分休憩が始まろうとしていて、新城さんも戻ってきたところだった。
「まどか先生!どうしましたか?気分悪いですか?」と駆け付けて、大声で聞いてきた。
「「おい!どうした!何の騒ぎだ⁉︎」」
牧先輩と神先輩も私の急変に驚き、続いてノブと部員達も駆け寄ってくる。
「まどか!どうした⁉︎気分悪いのか⁉︎それに、スカートも床もびしょ濡れじゃないか⁉︎」
「お腹痛い!苦しい!来ちゃったかも…!」
未だかつてないほど、アタフタしている。
「清田先生!まどか先生のこれ、この間の先生の保健の授業でやった、“陣痛”に“破水”かも…。すぐに病院に連れて行かないと、赤ちゃん産まれちゃう‼︎」
「えぇーっ⁉︎予定日まだもう少し先だろ⁉︎何でいきなりこんな事になんだよ⁉︎」
ノブは結構なパニックになっていた。
「清田!しっかりしろ!お前父親になるんだろ⁉︎」と後ろから牧先輩が、喝を入れた。
続いて新城さんも、
「清田先生!まどか先生、今凄く不安だと思うから…私は左手握ってるから、先生は右手握ってあげて。」
新城さんに言われて、ノブは右手を握ってくれた。
彼女はテキパキと目の前の物事を熟し、
「まどか先生。かかりつけの産婦人科の連絡先とか分かりますか?」と聞いてきて、私のバッグの財布の一番手前のカード入れに診察券が入ってると伝えると、すぐに取り出した。
「神先生!今すぐこの産婦人科に連絡して、状況説明して、まどか先生を受け入れられるように話を進めて下さい!」と的確な指示を出し、神先輩は携帯を持ち一旦体育館を出た。
「牧先生は、今日用事あって休んでる高頭監督に連絡して、“緊急事態発生”と伝えて下さい!まどか先生には、私と清田先生が付き添います。」と、嘗て帝王と呼ばれた牧紳一にまで強気で指示を出し、牧先輩も携帯を持って体育館を出た。
私は苦しみながらも、彼女の的確な指示と度胸の良さに驚いてた。
やがて、産婦人科経由で来た救急車が到着し、ノブと新城さん、神先輩が同乗した。
「新城!まどか先生と清田を頼んだぞ!神!病院に着いたら連絡くれ!」
牧先輩が叫んだ後、扉が閉まり私は搬送された。
病院へ着いてすぐ、分娩室に運ばれ…
今まさに、女にしか出来ない大仕事が始まった。
「痛い!苦しい!これじゃ私が死んじゃう!」
壮絶な痛みに泣き叫んでいたら…
ドクターが「赤ちゃんの頭が見えてきました!もう少し!赤ちゃんも頑張ってるから、お母さんも頑張って!外ではお父さんも応援してるよ!」と言い、私は渾身の力を込めて出産に挑んだ。
(オギャー!オギャー!)
遂に…生まれた(涙)
「おめでとうございます!元気な男の子です!」
(やったー!遂に…やったー!私とノブの第一子!念願だった男の子!)
苦しみの涙が嬉し涙に変わった。
分娩室の扉が開き、ナースがノブに「清田さん。おめでとうございます。3100gの元気な男の子ですよ。」と赤ちゃんを見せに行った。
ノブは勿論、新城さんと神先輩も喜んで泣いていた。
そして私の病室に来て…
「まどか。よく頑張ったな。お疲れ様。ありがとう。」と泣くノブ。
「まどか先生。お疲れ様でした。」と微笑む新城さん。
「まどか先生に清田先生…二人とも、“お父さん”“お母さん”になったんだな…。」と言う神先輩。
私はこの時、プロポーズされた時と結婚式の時よりも…何十倍以上の感動に浸っていた。
「牧さん、高頭監督と連絡ついたらしいから…。俺もこれから、バスケ部に状況報告しなきゃならないし、一旦ロビーに行くね。」と、神先輩は病室を出た。
病室には私とノブと新城さん…
「まどか。一時はどうなるかと思ったけど、無事に生まれてきてくれて、本当良かった。お疲れ様。ありがとう。」
「ううん。私の方こそ…学校で陣痛が来てから分娩室行くまで、ノブずっと手握っててくれて、凄く嬉しかった。ありがとう。新城さんも。二人の手、温かかった。」
3人で涙ぐんでしまう。
そしてノブが…
「新城…お前がバスケ部マネージャーで、俺のクラスの生徒で良かったと、今心の底から強く思ってるよ。
お前がまどかを支えてくれて、アタフタした俺もお前に支えされた。
俺教師なのに、今日は生徒からいっぱい教わっちゃったな。」
と学生時代から変わらない、束ねた長髪の頭を掻いて、顔を赤くして女生徒に感謝の意を示している。
「新城さん、あなたは素晴らしいマネージャーで、立派な女性だわ。私育児も楽しみだけど、産育休明けて職場復帰するのも、今から凄く楽しみ。これからも私と清田先生、バスケ部のこと宜しくね。今日は本当にありがとう。」とノブに次いで、お礼を言った。
「新米ママに新米パパも、これから二人で協力しあって素敵な家庭を築いて下さい。」
敏腕マネージャーはこう言い残し、病室を出て、ロビーで待っていた神先生のもとに向い、学校へと戻っていった。
付き合って10年以上…結婚して約2年半目に、待望の第一子誕生。
大切な人たちに支えられながら…私達の最高のたからものに巡り会えた。
ノブは、「俺にとって…愛すべきもの、守るものが増えたから…俺今まで以上に強くていい男になるよ♡」
こう言って、私達はキスをした。
この日の夜、病室の窓から綺麗な星空が見えた。
一方携帯には、「出産おめでとう!」のLINEが友人・知人や、バスケ部・学校関係者から絶えなかった。
星空を見て私は、「高1の時、部活帰りに流れ星に願い事したの…なんか懐かしくなっちゃった。」と言った。
「なぁ…あの時の願い事って、一体何だったの?」
旦那(ノブ)に聞かれて、
「“ノブと結婚して幸せな家庭が築けますように♡”って願ったんだよ。」
こう答えた。
ノブは凄く嬉しそうな顔をして、またキスをする私達。
そして…「あっ!また流れ星だ!」。
偶然にも又流れ星を見つけて…あの頃の記憶が、鮮明に私の頭の中によみがえる。
今度は…
(家族3人で世界一幸せな家庭を築けますように♡)
こう願いをかけた。そして繰り返すキス。
私は、この子が大きくなったら…今日のこの日のこと、生まれてきてくれた日のこと、私達夫婦の馴初め等、真剣に話したいと思った。
♪流れ星が導いて
幸せ運んでくる
明日も笑顔絶やさずに
あなたのため生きてる
ずっと描いてたこの軌跡
今は同じ気持ちを
分かち合えること信じてる
二人の過ごした日々を
心の中に重ねて
変わらぬ愛をあなたに
これからも届けたいから
少し照れくさいけれど
少女の頃のように
星空を見上げながら
願いをかけてみたよ
そっと胸の中 焼きつけた
幾つ夜が明けても
素敵なあなたと居れるよね
喜び 悲しみさえも
二人で感じていたい
想い出ひとつひとつを
永遠に大切にして
長く続く道のりを
二人で歩いてゆこう
輝く季節の中で
見つめてる遠い未来を♪
END
夫の清田信長とは高校一年生の頃に出会い、夫がバスケ部員、私がマネージャーという形で…交際を始めた。
高校1年生時代ー
海南大付属バスケ部は、夜遅くまでの練習が日常茶飯事。
マネージャーになりたての頃は、キツく感じたことが多かったけど、慣れてきて尚且つ大好きな彼氏と一緒に過ごせる時間となると、「大変!」とか「嫌だ!」って、ぼやきたくなることはほぼ無かった。
ある夜の帰り道…その日は星が綺麗だった。
私は偶然、流れ星を見つけた。子供の頃に一回見たことがあるかないかだったので、つい…
「あっ!流れ星!早く願い事お祈りしなきゃ!」とはしゃいで、すぐに手を合わせてお祈りした。
「ったく高1にもなって、いつまでもガキみてぇなことしてんじゃねぇよ!」
彼氏の信長が、皮肉っぽく言った。
「何よ!王者・海南バスケ部マネージャーであっても…私だって普通の女の子なんだから、こういうことの一つや二つしたって良いじゃないの!」
強気な口調で、女の子アピールをする。
「で、願い事何にしたんだよ?まどか?」
「秘密♡教えたら意味ないでしょ⁉︎ 何、ノブそんなに知りたいの?エッチ‼︎」
夜遅く、学校付近で戯れあい騒ぐ…。
「あんなハードな練習したのに…清田、まだ元気有り余ってんのか。しかも違う方に…笑」
キャプテンの牧先輩から、ちょっと下品な発言をされた。
「一年生は元気があって良いことだけど…することするときは、使うものはしっかり使うようにね♡」
爽やかな風貌とは裏腹に、神先輩はなんとなく痛いところを突くような事を言ってきたかもと思った。
私の願い事…それは…
(信長と結婚して幸せな家庭を築けますように♡)
彼のことが好きでたまらなかったから、かけた願い事。
それから何年もの歳月が過ぎてー
私達は高校卒業、大学進学…二人とも教員免許を取得した。
ノブは体育教諭免許、私は養護教諭免許を取得。
就職活動時に母校・海南大付属高校で保健体育科と養護教諭の採用枠が、それぞれ設けられていた。
私達は絶対採用になりたかった。
たくさんの思い出が詰まった青春時代を過ごした母校で教鞭を取りたいのと…。
実はこの時、私達より少し先に…牧先輩が保健体育科、神先輩が社会科で教員採用されて勤務をしていて、尚且つ二人は恩師・高頭監督のもとで、高校時代の経験を活かして、バスケ部顧問も務めていた。
これだけの条件が揃っていたら、特にノブは、採用試験の勉強を、これでもかと言うくらい熱心に取り組んでいた。
結果は…二人とも『採用』。
二人で涙を流して喜んだ。大学生活の中で一番嬉しかった事だった。
そして海南に赴任し、ノブは牧先輩が指導係についての保健体育科の教師になり、もちろんバスケ部顧問にも。
そして私も、正式に養護教諭に…。
お互いに忙しい毎日を送りつつも、交際は10年近く続いていて、教師2年目の年からは同棲を始めて、高頭監督はじめ学校公認の職場恋愛となった。
26歳の誕生日を迎える年ー
教師になって約4年が経った頃、正式にプロポーズされ、入籍→結婚した。
全校朝礼で婚約会見みたいなことまでして、校内新聞にも、でかでかと載せられた。
そして『藍川 まどか』から、
『清田 まどか』となった。
職場で夫婦別姓にしたくないから、“ まどか先生”と呼ばれるようになった。
新婚の頃は、ついつい職場(学校)で、ラブラブ振りを見せてしまったり、職員室内で少々派手に夫婦喧嘩をしてしまうこともあった。
結婚から1年半前後経過した頃…私の体調に時折異変を感じるようになり、病院へ行ったら妊娠が判明した。
この時の旦那(ノブ)は…
「やったー!よくやったまどか!元気な男を産んで、バスケみっちり教え込んで、高校は王者・海南に入れて、一人前のバスケ選手にさせるぞ!この清田信長様の子供に不可能はない!親子二代でルーキーセンセーションだ!かーっかっかっかっ!」
と、まだ性別すら分からないのに早くも親バカぶりが出まくっていた。
私は…妊娠初期の頃は、つわりが酷かったりとかで、当日欠勤する事が多々あったけど…。
でも学校では…旦那(ノブ)をはじめ、バスケ部員&マネージャーや、旦那(清田先生)・牧先生・神先生が担任しているクラスの生徒達が、私の体を気遣ってくれて、仕事や学校生活を、色々サポートをしてくれた。
そして、ある程度お腹が目立つようになった頃から、“産育休手続”を進め始めた。
産休開始日前日の全校朝礼では…
「この度私『清田まどか』は、本格的に出産準備等に入る為、当分の間、海南大付属高校での養護教諭の仕事をお休みする事となりました。
そして私は…母校であるこの学校の養護教諭になれた事を、本当に嬉しく思っています。
皆さんのこと、忘れません。
元気な赤ちゃんを産んで、仕事と家庭を両立出来る女性になって、またここに帰ってきます。
これを以て、一旦お別れの挨拶とさせて頂きます。」
絶対に泣かないって決めたのに、結局泣いてしまい、他にも涙を流す生徒達や同僚教師も居た。
旦那(ノブ)と、牧先輩・神先輩が顧問を務めるバスケ部からは、大きな花束に皆からのメッセージが沢山書かれた色紙を渡された。
勿論、顧問&高頭監督からのメッセージもあった。
こうして、私は産育休に入った。
そして妊娠期間も、そろそろ10ヶ月目が近づいてきた頃ー
検診では大凡の予定日も伝えられ、経過は順調だったが、性別は未だ不明だった。
一方旦那(ノブ)はと言うと…相変わらず体育教師&バスケ部顧問で、忙しい日々を送っていた。
でも、教師になって5,6年以上は経っているので新米の頃よりかは、大分仕事もできるようになってきて、教師らしさも出てきたと言う話は、ちらほら聞くようになった。
ある日曜日ー
海南バスケ部は昔から変わらず、日曜日も夕方まで練習。
私は朝からお弁当作りをしていた。この日は、なんだか良い気分だった。
「まどか♡弁当作ってくれた?日曜日練習の日は、弁当が楽しみで仕方ないんだよ♡」
と甘々な口調で言ってくる。
「今作ってるわよ。ノブの好きな物いっぱい入ってるから♡それより、テーブルに朝食用意してあるから、早く食べないと練習遅れるわよ!」と言い、急いで朝食を食べる旦那(ノブ)。
「じゃあ、行ってきます!まどか♡早く帰れるようにするからな♡♡♡」
出産が迫ってるせいか、夫婦二人の時間もあと僅かだから、出勤前のキスは少し回数が増えてる。
家事がひと段落して、リビングで休もうかなって思ったら…旦那(ノブ)が、テーブルにお弁当置き忘れ発覚‼︎
「(早くも親バカしまくって浮かれまくって、忘れ物か⁉︎)」って気分だった。
届ける為に身支度をして、お弁当と自分の必要な荷物を持ち、家を出る。
久しぶりに学校へ行くから…マタニティとは言え、なるべく可愛いのを選んで、独身時代と変わらない化粧もしてみた。
髪は…ずっと伸ばして腰までのスーパーロングだったけど、『母』になるための決意として、産休に入ってすぐ、30cm以上は切ってしまった。
でも、伸びるのが早いのでもう肩下まであり、簡単なストレートハーフアップにして、お気に入りのヘアアクセもつけた。
学生時代と赴任したての頃、よく乗ったバス・電車を乗り継いで海南に向かった。
バッグに『妊婦マーク』が付いてるのと、日曜なだけあり、楽々と座れる。
学校に着き、体育館の扉を叩く。
「ちょっとー!バスケ部に用があって来たの!開けてー!」と叫んだ。
「「あれ、この声は…?」」
牧先輩と神先輩がハモったようだった。
すると扉が開いて、旦那(ノブ)が出てきた。
「まどか⁉︎お前、何で体育館に来たんだよ⁉︎そんなにお腹大きいのに、こんなところまで出歩いて大丈夫なのかよ⁉︎」
流石に不安がって聞いてきた。
「何言ってんの?私は、旦那様の忘れ物を届けに来たの♡ほら、お弁当。テーブルに置きっぱなしだったわよ!」
トートバッグを皆に見えるように差し出した。
「「おー!清田先生の愛妻弁当だ!」」
「「まどか先生、お久しぶりです!どうですか?体の方は?」」
「まどか先生、俺2年になってからスタメンになれた!」
「清田先生の奥さん美人!綺麗!可愛い!」
「まどか先生!清田先生、相変わらず…結婚式の写真、デスクに飾りまくってますよ♡最近は、夫婦のツーショット写真が多いけど♡
職員室のノートパソコンの壁紙も、まどか先生とのラブラブな写真で作った壁紙なんですよ♡」
「まどか先生、髪短くした時の写真見てびっくりしたよ!でも今日も可愛い!」
久々に私が学校に来たので、練習そっちのけで、部員達から色々な話が飛んでくる。私は懐かしくて、少し嬉しかった。
すると…
「こらー!そんなに一方的に喋り倒したら、まどか先生がびっくりするじゃないの!今デリケートな時期なんだから、もう少し女性のことを考えた言動・行動をしなさい!」
と大声で強気に、男子に物怖じせずにズバズバ物言いをする女子生徒の声が聞こえた。
勿論、男性陣は皆ビックリして静まり返っていた。
「まどか先生。うちの部員達が驚かせてしまって、すみませんでした。」
謝ってきた女生徒は…目が大きく、髪型は艶のある黒髪セミロングを一つに束ねていて、ちょっとお人形っぽいキレカワな雰囲気であり、でも知的な雰囲気もあり、スラッとしてスタイルも良い。
(でもこの子…なんか見た事があるような…?)
「おう!新城!またやらかしちまったみたいで、悪かったな。」
「清田先生!奥様今デリケートな時期なんですから、あまり心身に負担与えるようなことしちゃ駄目ですよ!」
旦那(ノブ)と女生徒のやりとり後…
「まどか先生。改めてご挨拶させて頂きます。私、海南大付属高校1年A組・新城里紗と申します。バスケ部マネージャーにクラス委員も担当しています。いつも清田先生にはお世話になっております。宜しくお願い致します。」
すごく丁寧な挨拶をされ、「本当にウチの旦那(ノブ)の生徒なの?」と心の中で思ってしまうほどだった。
「あー!新城さん⁉︎旦那(清田先生)から話は聞いてるわ。入学式の写真も見せて貰った。
てか、写真でも可愛らしい子だと思ったけど、実物の新城さん、凄く綺麗ね!モデルみたい!
旦那(清田先生)のクラスで…あなたがバスケ部1年生女子マネで、クラス委員の子ね。
では、こちらも改めて…清田信長先生の妻・清田まどかです。旧姓は藍川です。
産育休前まで養護教諭してました。
こちらこそ、いつも主人がお世話になってます。宜しくね。」
新城さんほどではないが、それなりの挨拶をする私。
旦那(ノブ)は恥ずかしがっているようで、頬をぽりぽり掻いていた。
「ねぇ、清田先生(ノブ)。久々に体育館来たから、少しだけ練習見て行って良い?私の分のお弁当も持って来ちゃったし、帰りは一緒に帰りたいし…。」
ちょっとおねだりする私。
「牧先生、神先生、清田先生…。まどか先生は向こうの椅子に座って、私が付き添ってますから、見学させてあげても良いですか?」
新城さんが顧問3人に、私の為に頼んでくれた。
自分のマネージャー業務があるのにも関わらず…
男性陣は女子マネに頭が上がらないところがあるらしく、OKを出してくれた。
「先生方、ドリンク・救急箱・スコア表etcはいつもの場所に置いてあります。何かあったら、私を呼びに来てください。
さあ、まどか先生行きましょう。」
新城さんは本当に気配りができる子だと、改めて実感しながら、一緒に椅子に腰掛ける。
「新城さんてさ…旦那(清田先生)から、話はよく聞いてたけど、本当に優秀なのね。
海南バスケ部1年生女子マネ、クラス委員…。
更に聞いた話だと、勉強もスポーツも出来て、リーダーシップもあるんでしょ。家でも旦那(清田先生)がね、『俺のクラスの女子・新城里紗は、すげー優秀な生徒だ!バスケ部にとってもクラスにとっても、必要不可欠な存在だ!』って、誇らしげに語ってくるのよ。」
「清田先生、そんなこと言ってるんですか⁉︎」
強気な優等生でも、少し照れていたようだった。
「あとこれはね、牧先生と神先生がついこの間うちに来た時、4人でご飯食べた後男3人で飲みながらね…『新城ほど、“才色兼備”って言葉が似合う女子は居ない。』『ミス海南決定だな。』なんて言ったりもしてたのよ。」
「えぇ⁉︎牧先生に神先生まで⁉︎」
新城さんは更に照れていた。優等生のこう言う一面も可愛いなと思った。
二人で女子トークをしていたら、
「新城!すまないがちょっと来てくれ。スコア表やら練習試合の組合せやら、他にも話したい事があるんだが…。」と牧先輩から呼出しが掛かった。
「分かりました!今行きます。まどか先生、ちょっと外れますね。」と言って、顧問と部員達の所へ走って行った。
それから私は牧先輩と新城さんのやり取りや、部員達のドリブル・シュート・パス練習etcを見たりして、自分の高校時代を思い出したりして懐かしい気分に浸っていた。
その時…
(うっ…痛い!苦しい!まさか…⁉︎)
突然の激しい腹痛に襲われ、お腹を抱え込んでしまった。そして下半身が湿っぽくなってきて、椅子や床、履いていたスカートを派手に濡らしてしまった。
なんとこんな時に、陣痛…そして破水までしてしまったようだ。
ちょうどその時、顧問の指示で10分休憩が始まろうとしていて、新城さんも戻ってきたところだった。
「まどか先生!どうしましたか?気分悪いですか?」と駆け付けて、大声で聞いてきた。
「「おい!どうした!何の騒ぎだ⁉︎」」
牧先輩と神先輩も私の急変に驚き、続いてノブと部員達も駆け寄ってくる。
「まどか!どうした⁉︎気分悪いのか⁉︎それに、スカートも床もびしょ濡れじゃないか⁉︎」
「お腹痛い!苦しい!来ちゃったかも…!」
未だかつてないほど、アタフタしている。
「清田先生!まどか先生のこれ、この間の先生の保健の授業でやった、“陣痛”に“破水”かも…。すぐに病院に連れて行かないと、赤ちゃん産まれちゃう‼︎」
「えぇーっ⁉︎予定日まだもう少し先だろ⁉︎何でいきなりこんな事になんだよ⁉︎」
ノブは結構なパニックになっていた。
「清田!しっかりしろ!お前父親になるんだろ⁉︎」と後ろから牧先輩が、喝を入れた。
続いて新城さんも、
「清田先生!まどか先生、今凄く不安だと思うから…私は左手握ってるから、先生は右手握ってあげて。」
新城さんに言われて、ノブは右手を握ってくれた。
彼女はテキパキと目の前の物事を熟し、
「まどか先生。かかりつけの産婦人科の連絡先とか分かりますか?」と聞いてきて、私のバッグの財布の一番手前のカード入れに診察券が入ってると伝えると、すぐに取り出した。
「神先生!今すぐこの産婦人科に連絡して、状況説明して、まどか先生を受け入れられるように話を進めて下さい!」と的確な指示を出し、神先輩は携帯を持ち一旦体育館を出た。
「牧先生は、今日用事あって休んでる高頭監督に連絡して、“緊急事態発生”と伝えて下さい!まどか先生には、私と清田先生が付き添います。」と、嘗て帝王と呼ばれた牧紳一にまで強気で指示を出し、牧先輩も携帯を持って体育館を出た。
私は苦しみながらも、彼女の的確な指示と度胸の良さに驚いてた。
やがて、産婦人科経由で来た救急車が到着し、ノブと新城さん、神先輩が同乗した。
「新城!まどか先生と清田を頼んだぞ!神!病院に着いたら連絡くれ!」
牧先輩が叫んだ後、扉が閉まり私は搬送された。
病院へ着いてすぐ、分娩室に運ばれ…
今まさに、女にしか出来ない大仕事が始まった。
「痛い!苦しい!これじゃ私が死んじゃう!」
壮絶な痛みに泣き叫んでいたら…
ドクターが「赤ちゃんの頭が見えてきました!もう少し!赤ちゃんも頑張ってるから、お母さんも頑張って!外ではお父さんも応援してるよ!」と言い、私は渾身の力を込めて出産に挑んだ。
(オギャー!オギャー!)
遂に…生まれた(涙)
「おめでとうございます!元気な男の子です!」
(やったー!遂に…やったー!私とノブの第一子!念願だった男の子!)
苦しみの涙が嬉し涙に変わった。
分娩室の扉が開き、ナースがノブに「清田さん。おめでとうございます。3100gの元気な男の子ですよ。」と赤ちゃんを見せに行った。
ノブは勿論、新城さんと神先輩も喜んで泣いていた。
そして私の病室に来て…
「まどか。よく頑張ったな。お疲れ様。ありがとう。」と泣くノブ。
「まどか先生。お疲れ様でした。」と微笑む新城さん。
「まどか先生に清田先生…二人とも、“お父さん”“お母さん”になったんだな…。」と言う神先輩。
私はこの時、プロポーズされた時と結婚式の時よりも…何十倍以上の感動に浸っていた。
「牧さん、高頭監督と連絡ついたらしいから…。俺もこれから、バスケ部に状況報告しなきゃならないし、一旦ロビーに行くね。」と、神先輩は病室を出た。
病室には私とノブと新城さん…
「まどか。一時はどうなるかと思ったけど、無事に生まれてきてくれて、本当良かった。お疲れ様。ありがとう。」
「ううん。私の方こそ…学校で陣痛が来てから分娩室行くまで、ノブずっと手握っててくれて、凄く嬉しかった。ありがとう。新城さんも。二人の手、温かかった。」
3人で涙ぐんでしまう。
そしてノブが…
「新城…お前がバスケ部マネージャーで、俺のクラスの生徒で良かったと、今心の底から強く思ってるよ。
お前がまどかを支えてくれて、アタフタした俺もお前に支えされた。
俺教師なのに、今日は生徒からいっぱい教わっちゃったな。」
と学生時代から変わらない、束ねた長髪の頭を掻いて、顔を赤くして女生徒に感謝の意を示している。
「新城さん、あなたは素晴らしいマネージャーで、立派な女性だわ。私育児も楽しみだけど、産育休明けて職場復帰するのも、今から凄く楽しみ。これからも私と清田先生、バスケ部のこと宜しくね。今日は本当にありがとう。」とノブに次いで、お礼を言った。
「新米ママに新米パパも、これから二人で協力しあって素敵な家庭を築いて下さい。」
敏腕マネージャーはこう言い残し、病室を出て、ロビーで待っていた神先生のもとに向い、学校へと戻っていった。
付き合って10年以上…結婚して約2年半目に、待望の第一子誕生。
大切な人たちに支えられながら…私達の最高のたからものに巡り会えた。
ノブは、「俺にとって…愛すべきもの、守るものが増えたから…俺今まで以上に強くていい男になるよ♡」
こう言って、私達はキスをした。
この日の夜、病室の窓から綺麗な星空が見えた。
一方携帯には、「出産おめでとう!」のLINEが友人・知人や、バスケ部・学校関係者から絶えなかった。
星空を見て私は、「高1の時、部活帰りに流れ星に願い事したの…なんか懐かしくなっちゃった。」と言った。
「なぁ…あの時の願い事って、一体何だったの?」
旦那(ノブ)に聞かれて、
「“ノブと結婚して幸せな家庭が築けますように♡”って願ったんだよ。」
こう答えた。
ノブは凄く嬉しそうな顔をして、またキスをする私達。
そして…「あっ!また流れ星だ!」。
偶然にも又流れ星を見つけて…あの頃の記憶が、鮮明に私の頭の中によみがえる。
今度は…
(家族3人で世界一幸せな家庭を築けますように♡)
こう願いをかけた。そして繰り返すキス。
私は、この子が大きくなったら…今日のこの日のこと、生まれてきてくれた日のこと、私達夫婦の馴初め等、真剣に話したいと思った。
♪流れ星が導いて
幸せ運んでくる
明日も笑顔絶やさずに
あなたのため生きてる
ずっと描いてたこの軌跡
今は同じ気持ちを
分かち合えること信じてる
二人の過ごした日々を
心の中に重ねて
変わらぬ愛をあなたに
これからも届けたいから
少し照れくさいけれど
少女の頃のように
星空を見上げながら
願いをかけてみたよ
そっと胸の中 焼きつけた
幾つ夜が明けても
素敵なあなたと居れるよね
喜び 悲しみさえも
二人で感じていたい
想い出ひとつひとつを
永遠に大切にして
長く続く道のりを
二人で歩いてゆこう
輝く季節の中で
見つめてる遠い未来を♪
END
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