卒業
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3月某日ー
陵南高校では、卒業式が行われた。
3年前の4月…私が新卒で教師として赴任してきた学校。
赴任2年目の年からクラス担任を受け持ち、一部は持ち上がりで3年生になった生徒達…つまり最初の教え子達が、今日ここから巣立っていった。
社会人経験も浅く、初めてだらけのことが多く、教師として頼りない部分も多かったかなと改めて思う。
卒業式に最後のホームルームを終え、職員室へ戻って夕方になってから、自分が担任していたクラスへ向かってみる。
途中…「毎朝緊張しまくって、出席簿を握りしめながら教室に向かったな。」とか、ついこの間まで当たり前だった事を、懐かしく思っていた。
教室に辿り着き、ドアを開けるとある一人の生徒が居た。
生徒の名前は『仙道彰』。
在学中はバスケ部エースとして、全女生徒の羨望の存在であり、県内はもちろん他県にも名が知れ渡る有名人だった。
3年生の最後の夏にIH出場を決め、国体選手にも選ばれ、進路に関しても多数の大学からスカウトが来るほどだった。
「あれ、藍川先生。何か用?」
仙道君から口を開いてきた。
「ちょっと、教室をもう一回見ておこうかなって思ってね…。
卒業式終わっちゃうと、がらんとして静かだよね。」
相変わらず私は緊張しながら、なんかあやふやなことを言ってるなと我ながら思うのだった。
「2年生の頃から藍川先生のクラスで、凄く楽しかった。ずっと忘れないよ。」
仙道君が微笑みながら言った。
「ありがとう…。
新卒で赴任してきたから、頼りない先生だったけど…。
でもあなた、私のクラスになってから、部活も授業も取り組み方が変わったって、田岡先生や他の先生方からも、よく聞いてたわよ。
あと、私が担任になって間もない頃…学年の意地悪な女生徒達から、トイレでバケツの水かけられて憔悴してた時に、仙道君がジャージを貸してくれて、慰めてくれたこともあったよね…。
あの時の事は、今でも忘れないよ。」
少々情けない思い出話を交えながら、受け答えをした。
♪ 喧嘩して 電話して 泣いたこと あったね
悩んだ日が なぜか懐かしい
喜びも悲しみも 振り向けば 道のり
どんな時も 一人じゃなかった♪
仙道君の学生服を見ると、ボタン・校章…全て無かった。
やっぱりモテる子は違うなと、つくづく思うのだった。
彼は席を立ち、私の方へと近づいてくる。
そしてポケットから何かを取り出し、私の手に差し出した。
「俺の第2ボタン、藍川先生に受け取って貰いたい。」
突然の発言に、驚きと戸惑いしかなかった。
「私の為に、わざわざ残しててくれたの?どうして私に?」
問いかけに対して仙道君は…
「藍川先生が陵南に来た頃から、ずっと好きだった。
2・3年生と担任になってくれて、試合も時々観に来てくれるようになって、もっと好きになった。」
彼のストレートな発言に、真っ赤になってしまう私。
「でも私…仙道君より7つも年上だけど、それでも良いの?」
容姿端麗で何もかもパーフェクトな彼に対し、見てくればかりを気にした発言をする。
「もう卒業したんだよ。
教師と生徒の関係は終わり。
これからは男と女だよ。まどか ♡」
妖艶な表情と口調で、ど直球な仙道君の発言に、何が何だか分からなくなり、
涙も流して言葉に詰まってしまう。
そして第2ボタンを持った手に、彼の手が添えられ…
「今はこんなものしかあげられないけど…
大学でもバスケ頑張って、絶対プロ入りして、それで一人前の男、一人前のバスケ選手になる!
そしたら正式にプロポーズするから、
それまではこのボタン、俺だと思ってて欲しい。
愛してる。まどか ♡」
仙道君からの告白で、更に涙が溢れる。
「はい。宜しくお願いします。」
そう言い、私達は夕暮れの静かな教室でそっと唇を重ねた♡
初めての教え子に卒業式…告白。
一生忘れられない思い出が胸に刻まれた。
♪ 桜の花びらたちが咲く頃
どこかで 希望の鐘が鳴り響く
私たちに明日の自由と 勇気をくれるわ
桜の花びらたちが咲く頃
どこかで 誰かがきっと祈ってる
新しい世界のドアを 自分のその手で開くこと ♪
https://www.youtube.com/watch?v=CCr0kr0EmjI
AKB48 “桜の花びらたち”より。
陵南高校では、卒業式が行われた。
3年前の4月…私が新卒で教師として赴任してきた学校。
赴任2年目の年からクラス担任を受け持ち、一部は持ち上がりで3年生になった生徒達…つまり最初の教え子達が、今日ここから巣立っていった。
社会人経験も浅く、初めてだらけのことが多く、教師として頼りない部分も多かったかなと改めて思う。
卒業式に最後のホームルームを終え、職員室へ戻って夕方になってから、自分が担任していたクラスへ向かってみる。
途中…「毎朝緊張しまくって、出席簿を握りしめながら教室に向かったな。」とか、ついこの間まで当たり前だった事を、懐かしく思っていた。
教室に辿り着き、ドアを開けるとある一人の生徒が居た。
生徒の名前は『仙道彰』。
在学中はバスケ部エースとして、全女生徒の羨望の存在であり、県内はもちろん他県にも名が知れ渡る有名人だった。
3年生の最後の夏にIH出場を決め、国体選手にも選ばれ、進路に関しても多数の大学からスカウトが来るほどだった。
「あれ、藍川先生。何か用?」
仙道君から口を開いてきた。
「ちょっと、教室をもう一回見ておこうかなって思ってね…。
卒業式終わっちゃうと、がらんとして静かだよね。」
相変わらず私は緊張しながら、なんかあやふやなことを言ってるなと我ながら思うのだった。
「2年生の頃から藍川先生のクラスで、凄く楽しかった。ずっと忘れないよ。」
仙道君が微笑みながら言った。
「ありがとう…。
新卒で赴任してきたから、頼りない先生だったけど…。
でもあなた、私のクラスになってから、部活も授業も取り組み方が変わったって、田岡先生や他の先生方からも、よく聞いてたわよ。
あと、私が担任になって間もない頃…学年の意地悪な女生徒達から、トイレでバケツの水かけられて憔悴してた時に、仙道君がジャージを貸してくれて、慰めてくれたこともあったよね…。
あの時の事は、今でも忘れないよ。」
少々情けない思い出話を交えながら、受け答えをした。
♪ 喧嘩して 電話して 泣いたこと あったね
悩んだ日が なぜか懐かしい
喜びも悲しみも 振り向けば 道のり
どんな時も 一人じゃなかった♪
仙道君の学生服を見ると、ボタン・校章…全て無かった。
やっぱりモテる子は違うなと、つくづく思うのだった。
彼は席を立ち、私の方へと近づいてくる。
そしてポケットから何かを取り出し、私の手に差し出した。
「俺の第2ボタン、藍川先生に受け取って貰いたい。」
突然の発言に、驚きと戸惑いしかなかった。
「私の為に、わざわざ残しててくれたの?どうして私に?」
問いかけに対して仙道君は…
「藍川先生が陵南に来た頃から、ずっと好きだった。
2・3年生と担任になってくれて、試合も時々観に来てくれるようになって、もっと好きになった。」
彼のストレートな発言に、真っ赤になってしまう私。
「でも私…仙道君より7つも年上だけど、それでも良いの?」
容姿端麗で何もかもパーフェクトな彼に対し、見てくればかりを気にした発言をする。
「もう卒業したんだよ。
教師と生徒の関係は終わり。
これからは男と女だよ。まどか ♡」
妖艶な表情と口調で、ど直球な仙道君の発言に、何が何だか分からなくなり、
涙も流して言葉に詰まってしまう。
そして第2ボタンを持った手に、彼の手が添えられ…
「今はこんなものしかあげられないけど…
大学でもバスケ頑張って、絶対プロ入りして、それで一人前の男、一人前のバスケ選手になる!
そしたら正式にプロポーズするから、
それまではこのボタン、俺だと思ってて欲しい。
愛してる。まどか ♡」
仙道君からの告白で、更に涙が溢れる。
「はい。宜しくお願いします。」
そう言い、私達は夕暮れの静かな教室でそっと唇を重ねた♡
初めての教え子に卒業式…告白。
一生忘れられない思い出が胸に刻まれた。
♪ 桜の花びらたちが咲く頃
どこかで 希望の鐘が鳴り響く
私たちに明日の自由と 勇気をくれるわ
桜の花びらたちが咲く頃
どこかで 誰かがきっと祈ってる
新しい世界のドアを 自分のその手で開くこと ♪
https://www.youtube.com/watch?v=CCr0kr0EmjI
AKB48 “桜の花びらたち”より。