荒木荘短編集
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「ん……」
夜中、急に目が覚めた、まあ私は吸血鬼だから夜中が動く時なんだけど……
身体を起こしてベッドから降りると皆は寝静まってるようで部屋はシンとしている
「散歩にでも行こうかな……」
一人でそう呟き、私は念の為日傘を持って玄関を開けて外に出た、おそらく後二、三時間で夜明けだろう真っ暗というほどでもないがまだ暗い
私は度々こうして真夜中の散歩に出ているのだ、日頃運動はほとんどしないから運動も兼ねて
「コンビニ行こうかな……お金一応あるし……」
ふとコンビニが目に入り、入ろうとしたが店員が眠そうだったのでやめる事にした
吉良が一度深夜にコンビニで買い物したら寝惚けた店員に会計を間違えられたと言う愚痴を聞いたからだ
手に持っている日傘をクルクルと回し、私は何をしようか考えていた
「一人っていうのも暇だァ……カーズでも誘えばよかった」
普段うるさい部屋にいるからか、なんだか静か過ぎて逆に落ち着かない
でもカーズなんて連れてきたらいつ食べられるのか分かったものじゃないアイツは時々本気で食べに来るから怖い
ブツブツと独り言をボヤいていると、ビルの影がゆっくりと動き出した
「……日の出……か……」
日の出だと理解した途端私の目は自然に細くなった、太陽に全身が当たれば灰になる、それが吸血鬼の運命なのだ悲しいけど……
灰にはなりたくないので来た道を戻ろうと一歩進んだ瞬間、ジュッと何かが焦げるような音を立てて足が溶けた
「なッ!?」
思わず足を引っ込めると同時にある事に気が付いた、私がいたのはビルとビルの間で丁度太陽が出ているのも分からない場所だ
私がフラフラと歩いている間にとっくに太陽は昇っていたのだ
「…痛つつ……日傘……」
私は足に痛みを感じながらも日傘に手を伸ばし、そしてライを出し血を出してもらう
血は食べ物じゃないのでいつもの血の味がした、私のライの能力は食べ物は味気がなくて食べる以前の問題なのでこう言う時は便利だ、血は普通の人は食べないから
ライが出してくれた血を飲んでからじわじわと治っていた足がようやく戻り、私は日傘をさしながら慌てて荒木荘に向かって戻った、逃げる様に荒木荘の階段を駆け上り玄関を開ける
玄関前では朝が早い吉良が立っていて目を少しだけ大きくしてこちらを見ていた、なんかデジャヴを感じる……
「ジルナ、また散歩か?」
「ハァッ……ハァッ……死にそうだった……」
「……吸血鬼の自覚全くないなお前は……DIOのように少しは対策を練ったらどうだ?」
「私はこれでも……太陽が好きだからさ……」
荒れ始めていた息を整えながら吉良にそう言い、私は床に倒れ込むようにして寝そべった
身体はやけに汗ばんでいて普段動かないのに急に全力疾走したので疲れたのだ、床の冷たさが異常に心地いい
しばらくしてからようやく息が整った頃、吉良がついでに朝ご飯を作ってくれた
それを食べてる間に吉良は出勤してしまったが……吉良の後ろ姿を見て人間は大変だなと実感した、なんだかんだ言って吸血鬼の方が楽なのかもしれない
(さて、寝るか)
(ジルナ、また早い目覚めですね)
(……実はさっきまで外にいた)
(なッ!?大丈夫でしたか!?)
(まあ、ライのお陰で?)
(よかった……貴方は私と天国に行く方……お身体は大切に……)
(重いよ……プッチさん)