荒木荘短編集
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今日はいつも吉良の行きつけのスーパーの特売日で、野菜の袋詰めや卵の特売等様々な物が安くなる
普段から食費や家賃やで貧相な暮らしをしている私達はこの日がとても素晴らしい事をよく知っていた
お父さんと私も朝早く起きて、洗面所でディアボロが死んでいるのを見ながら顔を洗い戦前の支度をする
「準備はいいか?」
玄関前でそう聞いてくる吉良に私達は頷いた、そして私達は玄関を開けて外に出た
「うげぇーーーッ!!」
「ジルナーッ!!」
「何をやってるんだ」
一瞬日傘をさすタイミングが遅れて日光が直接ガンガン当たってしまったが、すぐに血を補給して治した
気を取り直して私達は今荒木荘にいる全員で特売日の買い物をするのだ、近所でも結構目立っていると言う噂の荒木荘メンバーがこうして全員で歩道を一列で歩くのは結構恥ずかしいものだ
前から吉良、ドッピオ兼ディアボロ、プッチさん、私、ディエゴ、そしてカーズとお父さんの順番だ、お父さんは何故自分が一番後ろなんだと拗ねていたがこうした方が黄色いおじさんのお父さんのインパクトが薄れる
ドラ●エ的並び方でスーパーに辿り着き、私達は前日から練っていた作戦通りに動き出す
とりあえず手当たり次第に様々なコーナー前で待機、そして店員さんが特売品様のシールを貼ったらすかさず手に入れる、実に単純な戦法だ
ちなみに私の担当は卵コーナー、卵は普段少し高いのでなかなか重要な役割になってしまった
「WRY!!」
店員さんがシールを貼ったと同時に卵のパックを掴む、周りにおばさんが溢れ返っているが私は一応吸血鬼、スピードでは負けない
しかし、なかなか手強くタイムセールで手に入れた卵のパック数は五個……目標は最高十個だったので半分なのが残念だ
卵だけはタイムセールでもうこれ以上定価価格になった卵コーナーにいる必要も無いので戻る事にした
「……あれ?」
帰りは来た道を同じように戻ればいいと聞いた事もあるが、何故か私は知らない場所に来ていた
このスーパーは基本的に商品が安いのはいいがやたらと広いのが問題点だと言っていた吉良の言葉を思い出した
「まあ、皆やたらと背が高いしすぐ見つかるでしょう」
自分で自分を励ますようにそう呟いて私は近くにあったお菓子コーナーを眺める、食玩やウェハースなどの物もあり、なかなか楽しめるところだ
ボーッと眺めていると私の隣に小さな男の子が母親と一緒に棚を見てきた、私を見るなり男の子は金髪だとかなんだとか言ってくるが母親は必死に口を押さえながら私に小声で謝ってきた
そんな親子に気にしてないと言ってからお菓子コーナーを後にする事にした、なんとなくお父さん達が恋しくなったのは秘密だ
「……私、卵五パックも手に入れたのに……」
皆に自慢しようと思っていた事をポツリと呟いたが、オススメの商品か何かの説明を放送する音でかき消された
いよいよ本当に悲しくなってきてしまった時、かき消された筈の私の言葉に返事をする人物がいた
「それなら吉良も喜ぶだろうね」
いつものように静かな口調でそう言ってくれた人物、慌てて振り返るとそこにはプッチさんが両手に商品を持って立っていた
笑いながらゆっくりと私の方に歩いて来て、プッチさんは少ししゃがみ私と視線を合わせた
「帰りますかジルナ、皆待ってるよ」
「……うん」
プッチさんは私が返事をするとニコリと微笑んで、持っていた商品を移動させて片手を空けて私に向かって手を差し出した
プッチさんの手を強めに掴んで、私は皆が待っている場所へ向かった
(ジルナ見つけたよ)
(WRYYYYY!!ジルナ!!どこへ行っていたんだ!!)
(ジルナ大丈夫か?どこにも怪我はしてないか?)
(心配したよジルナちゃん)
(五パックか…まあまあ頑張ったみたいだな迷子になったのは見逃してやるか……)
(なんだプッチが見つけたか……これを期に久々に吸血鬼を食してやろうかと思ったのに……)
(……相変わらずだね、皆……勝手に寂しくなった自分が恥ずかしい……)