荒木荘短編集
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今日は久しぶりのバイトだったため、晩御飯を食べてから帰りの日傘を用意して荒木荘を出た
相変わらずお父さんとディエゴは心配してくるが私としてはもうだいぶ仲良くなったのであまり命の危険を感じない
「こんばんわー」
「ジルナじゃねぇか、なに?これから?」
「あ、ジョセフ先輩、はい、これから入ります」
「そっか、俺と入れ違いか…頑張ってねン」
コンビニに入るとジョセフ先輩がもう私服に着替えて帰る支度をしていた
少しジョセフ先輩と話した後、私は更衣室に行き、制服に着替える
控え室に入ると、どうやら今日はシーザー先輩と一緒らしく、シーザー先輩がダンボールの中から商品を取り出していた
「ジルナ、これを棚に補充してくれ」
「あ、はい」
どうやらシーザー先輩は私に気が付いていたようで、取り出した商品を私に渡して棚に補充するように伝えた
私は店内に入って、間違えないように商品を入れていく、その間の客はシーザー先輩が捌いている
お父さんとディエゴは波紋使いには気を付けろと言っていたが、私は最近はあまりそう思わない、むしろ助けてもらっている感じだ
商品を全て棚に補充した頃にはもう客足はバッタリと無くなった頃で、シーザー先輩はレジの棚に少しもたれながら暇を持て余していた
そんなシーザー先輩を見ながら私は店の外のゴミ箱を整理しようと思い、店から出ようとした
「おい、いくら吸血鬼とはいえ女なんだから少しは危機感を持ったらどうだ?ゴミ位俺がやろう」
自動ドアが開いた時、シーザー先輩が私の方を見ながらそう言ってきたが、私は夜風に当たりたいのもあって、すぐに戻ると言って外に出た
ゴミ袋を取り出して縛っているとなんとなくお腹が減ってきた
「いやいや、今はバイト中だから……」
シーザー先輩もきっと店内から見ているであろう、食べ物なんて食べたらきっと怒られる……
そう思いながら気を紛らわせるため、ゴミ袋を外のゴミ箱に投げ入れた
しかし、お腹が減っているのは変わなかった
「……今なら誰にも見られないんじゃない……?」
ふと、そう思ってしまいライを出す、そして誰も見てない事を確認しながら血を飲む
ゆっくりと喉を通り、潤っていくのを感じながら私はほんの少しの罪悪感と戦っていた
後少しで全て飲み切る時、自動ドアが開いた音がして、慌てたような足音が響いた
おそらくシーザー先輩だろう、きっと帰ってくるのが遅くて心配してくれたのだろう、そう呑気に状況を理解している場合ではない
私は今血を飲んでいるのだ、いくらライから出した物であれ、傍から見たら夜道を歩く人間を襲って証拠隠滅のため袋に血だけを入れて飲んでいるとしか見えないだろう
慌てて袋から口を離してどうしようかと慌てていると、シーザー先輩の影が月明かりと夜目で確認できた
「ジルナ大分遅いがなにかあったのか!?」
慌てたようにそう言い、私の方を見るシーザー先輩と私が焦りから袋を落としてしまうのは同時だった
パチャンッと液体が落ちる音がした後、シーザー先輩は目を見開きながら私を見ていた
「ジルナ……お前……」
「あ……あの、シーザー先輩、これは……えっとですね……」
絶句しているシーザー先輩に慌てて弁解しようとした時、シーザー先輩は凄いスピードで私の腕を掴み、店内に連れて行った
そして、そのまま控え室に入り、私を少し乱暴にパイプ椅子に座らせた
カシャンッと無機質な音がしたのを聞きながら、私はこれではまるで初めてここの人達と会った時のようだなとどこか他人事のように思っていた
そんな私とは対象的にシーザー先輩は困惑と怒りと悲しみを混ぜたような表情で私を見下ろしていた
「……ジルナ、正直に言ってくれ、あの血は……」
「……シーザー先輩も嗅いだ筈ですよ、あの鉄のような臭い……あれは正真正銘、人間の血ですよ」
「お前……人を…襲ったのか?自分で言っていたじゃあないか……」
「人は襲わない……確かに私は言いました、現に今も守ってます」
「ッ!!なら、あの血はどう理由を付けるんだ!!」
シーザー先輩は私に静かに質問をし続けていた、だが段々と勢いが増していき、怒っているのが分かってきた
そんなシーザー先輩を私は静かに見上げる
「……ジルナ、すまない……ッ」
シーザー先輩は私にそう言って、波紋の呼吸をし始めた、そんなシーザー先輩の様子を私は少し残念に思いながら見続けた
さっきからライを出しているがシーザー先輩は気付かない、つまりシーザー先輩にスタンドは無い、スタンドが無い人にスタンド能力の事を言ってもきっと酷い言い訳に聞こえるだろう
そう思い私はあえてスタンド能力の事を言わなかった、元はと言えば我慢しなかった私がいけなかったのだ
そんな事を思っている間にもシーザー先輩は波紋の呼吸を整え終わり、波紋を右手に溜める
「…シーザー先輩、少し残念ですよ私は……」
「……お互い様だ……俺も辛い……ッ!!」
シーザー先輩は少し涙声でそう言って私の頭目がけて手刀の様にした手を振りおろした
私は目を瞑り、本当に死の覚悟をした、知らない人に殺されるより、知っている人に殺された方がいい
そう思いながら、荒木荘でグータラ過ごしているであろう皆を思い浮かべた
(……む……ジルナ……?)
(どうしたのだ?)
(……いや、今なんとなく嫌な胸騒ぎが……)
(胸騒ぎ如きでなんでジルナの名前が出てくるんだよ)
(ディエゴか…今日はやけに遅いな、貴様は吸血鬼でも、私のような究極生命体でもないのだからこんな夜中まで起きているな、寝るのだ)
(……そうしたいのは山々なんだけどな、なんか少し寝付けなくて……な)
(貴様もか……何故か凄い胸騒ぎがするのだ……(ジルナになにか……あったのか?))