荒木荘短編集
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レジ打ちにも慣れてきて、しばらく奥のスタッフルームにジョセフさんを待機させて、私一人でやっていると、夜中だというのに団体客が入ってきた
「あ、いらっしゃいませ〜……え?」
挨拶をした時、思わず声が漏れてしまったのは、別に荒木荘の皆が来たとかそういうのじゃない
いや、その方がまだマシだったかもしれない……団体客の格好は明らかに異色でそれぞれが個性的な格好をしていた
なんか変な頭巾を被った人もいれば金髪のスーツの人もいる、真っ青なクルクルとした髪の毛の人、片方だけ穴があいたアイマスク的な何かをつけた人、真っ赤な髪の毛で剃り込みが入った人、何本か髪の毛を結っている人、明らかに骨格がおかしい人……
そんな個性的な七人の団体だ、しかも全員鋭い目つきをしている
そして、少し騒ぎながら商品を手に取っている
これはヘルプを呼んだ方がいいのだろうか……怖かったら呼べって言ってたし……あ、でも意外にいい人なのかも……ダメだわ、あんなにコ●ラのマーチが似合わない人初めて見た!!
そんな事を思っていると、リーダーのような雰囲気が出ている、頭巾を被った人が何故か鉄分配合のドリンクをレジに置いた
いやこれはある意味女性用の飲み物ですけども!?
そう心の中でツッコミを入れながら私は商品をレジにかける
そしてお釣りを渡そうとした時、横から誰かに手を掴まれた
「ヒッ!?」
思わず悲鳴を上げてしまったが、ここは冷静に判断する事にして、ゆっくりと顔を上げた
「……え」
私の手を掴んでいたのは、あの片方だけ穴があいたアイマスク的な何かをつけた人だ
「いや……あの……お客様……?」
思わず体を引きながらそう聞くと、その人は私の手をじっと見てきた、まるで吉良みたいだ……
そんな呑気な事を思っていると、私の手を掴んでいる人は目を見開いて
「ディモールトディモールト良い!!人間とは思えないこのキメ細かさ……肌の白さ……ディモールト最高だ!!ベネッ!!」
と、鼻息を荒くしながら言ってきた、そんな変な言葉に私は思わず鳥肌が立ってしまう
「あの……ちょっ……」
「ん?しかし爪が長いなァ……これではこのキメ細かい皮膚が傷付いてしまうぞ?」
「いや、大丈夫なんで……とりあえず手を……あ、これお釣りです、お買い上げありがとうございます」
「あ……ああ」
変態的発言に引きながらも、私はとりあえずお釣りを無事渡す事に成功した
後はこの変態さんをどうしようかと思っていると、急に変態さんが縮んでいった
「え!?変態さん!?」
「おい……ホルマジオ……」
「お前のせいで後ろが詰まってんだよォーしょうがねェだろォ?サラッと変態さんって呼ばれてるぞ」
「あっ!!……すいません……ついうっかり」
「……チッ……」
変態さんが縮んだのは、ホルマジオと言う赤毛の剃り込みさんに何かをされたようだ、そして変態さんと言う邪魔者を退かし、残りの人達がドッとレジに押し寄せた
「悪かったな嬢ちゃん、ああ言う奴なんだ……と言うか嬢ちゃん一人か?」
「あ……いや、一応先輩がいます……」
「ほォ……ならその先輩とやらを呼んだ方がいいな、俺の後ろにあと五人いるからな……おいペッシ、お前の分も俺がまとめて払ってやるよ、まあ、後で返してもらうけどな」
「マジですか兄貴!!じゃあお願いします!!」
金髪のスーツを着た人は一番常識的でなんとなく頼りがいがあった、兄貴と呼ばれているのも何となく分かる気がする……
そんな兄貴さんの言葉に甘えてジョセフさんを呼んだ
「んー?どうしたよジルナちゃん……」
ジョセフさんはのそのそと私の方に来ると頭を掻きながらどうしたのか聞いてきた、が、すぐに手を降ろして顔を青くした
そしてお客さんには聞こえないように私に耳打ちをしてきた
「なにあれ!?なんであんなに怖い人がいるの何したのジルナちゃん!?」
「何もしてませんよ!!なんか団体が来たと思ったら……」
「オーノーッ!!マジかよめちゃくちゃ怖い!!」
「とりあえず二手に分かれて早めに終わらせましょう!!」
「そ……そうだな……」
そう言い合い、私とジョセフさんは二手に分かれてレジ打ちをした
私の方はさっきの兄貴さんとホルマジオと呼ばれていた人+ちっさい変態さん、ジョセフさんは青い髪の人と何本か髪の毛を結っている人だ
ちっさい変態さんはビンの中に入っていたが変わらず変態発言をしていた
そしてある意味恐怖の団体客は嵐の様に過ぎ去っていった
「……」
「……」
「「怖かったァァ!!」」
私とジョセフさんはお互いに無言で見つめ合ってから恐怖から逃げるように抱き合って同時に叫んだ
それ程まで怖かったのだ、いくら吸血鬼といえども怖いものは怖い
「めちゃくちゃ怖かったんだけど!!あの青いやつなんてイライラしてたのかめちゃくちゃ舌打ちしてた!!」
「私なんてほとんどセクハラ発言されてましたよ!!ジョセフさん、やばいッスよあの人達!!」
「ああ……俺もやばいと思う……つーか、ジョセフさんなんてなんかモヤモヤするからジョセフでいいぜ」
「いや、いくらなんでも先輩を呼び捨てには……あっ!!シーザー先輩と同じでジョセフ先輩でいいですか?」
「おう、改めてよろぴくねージルナちゃん」
「ちゃんなんてやめて下さいよ、ジルナでいいです」
「そっか、じゃあジルナ」
後半のほとんどは全く関係なかったが、ある意味、あの怖い人達のおかげでジョセフ先輩との距離が縮んだ気がする
ほんのちょっぴりだけあの怖い人達にお礼を言ってから、私とジョセフ先輩は時々くだらない話をしながら客が来るのを待った
まだまだ夜は長い
(それにしても本当にジルナは人を襲わないんだな)
(え!?もしかして信用してなかったんですか!?)
(いや、少しは信用してたけど……さっきので完全に信用した、人を怖いと思っても殺しはしなかったからな)
(殺せませんよ……後が怖い……)
(……うん、そうだな……あ!!あと、大丈夫だったか?俺に抱きついて)
(……ジョセフ先輩、波紋の呼吸してました?)
(いや、俺、小さい頃から波紋の呼吸してるから……意識するようになったのは最近)
(……でも、外傷はないから大丈夫でしょう)
(そっか、よかった、無害なやつ殺しても特になんねぇしなー)
((この人絶対いい人……ッ!!))