荒木荘短編集
name changes
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一度は崩れかけたダンボールだったが、なんとかほとんどを店の裏口に運べた
私は大きく息を吐いて、そのダンボールに凭れかかった
約二時間弱ぶっ続けで運んでいたので、腕が痺れ、腰が悲鳴をあげている
「ハァ……疲れた……」
そう呟きながら腕を伸ばすと、パキパキと嫌な音がなった
全く人間は吸血鬼使いが荒い……
そう思いながら溜め息をつき、控え室にいるであろうシーザーさんを呼びに行く
「失礼しまーす……?」
控え室に入ると、シーザーさんが一人だけ居た、いや、正確に言えばシーザーさんが寝ていた
おそらく店内はスージーQさんとリサリサさんがやっているのだろう
私はなるべく起こさないようにシーザーさんに近付いた
「……あの……シーザーさん?」
名前を呼びながらゆっくりと肩に手を置いたがシーザーさんは目を覚まさない
私は手を離し、近くにあったタオルケットをシーザーさんに被せた
「……じゃあ私は何をすればいいんだろ……」
思わずそう呟いたが答えは返ってこなかった
私はとりあえず念の為持ってきた小説を開き、椅子に座って読む事にした
何度か読んだ小説を読むのは展開が分かっているのが、少し違った発見がある時もある、そこがまた面白い……
お父さんに似てか、私は小さい頃から度々本を読む、何度も読んでいるうちに気付いた事だ
そんな事を思いながらも、ドップリと小説の世界に入り込んでいると
「う……しまった……寝てたか……」
と、シーザーさんの声が聞こえた
「あ、起きたんですか」
そう言い、私は本を閉じてシーザーさんに近付いた、するとシーザーさんは眠そうな目で私を見て、二、三度瞬きをした
そんなシーザーさんの不思議な行動に逆にこっちが驚いていると
「お前が、タオルケットを?」
と、シーザーさんはタオルケットを手に取って言った
「そうですけど……なんか、ダメなものでしたか?」
「いや……別に……なんでもない」
シーザーさんの言葉に首を傾げて返すと、シーザーさんはフッと視線を逸らしてタオルケットを片付けた
もしかして……なんか汚かった!?ヤバイ……波紋来るか!?
内心そう構えていたがシーザーさんは怒っているようには見えなかった、少しホッとしているとシーザーさんは壁にかけてある時計を見て
「……今日はもう帰っていいぞ……しばらくはこんな感じで行くからな、帰り道で人を襲ったりするなよ」
と、シーザーさんは言い残して店内のレジに向かって行ってしまった
ポツンと一人残された私は二、三秒してからようやくバイトが終わったのだと気が付き、更衣室に向かおうと、控え室を出ようとした時
「あ、後それから……シーザーさんなんて距離を置いた呼び方はやめろ、せめてシーザー先輩にでもしろ」
と、シーザーさんは少し扉を開けて言ってきた
「あ、はい……分かりました……」
「……次も今日みたいにキビキビと動けよ、ジルナ」
シーザーさんの言葉に戸惑いながらも答えるとシーザーさんは、扉を閉めながらそう言い残して行った
一瞬、意味がわからなかったが、少ししてシーザーさんに少しは認められたのだと理解した
初めて名前を呼んでもらい、なんだかウキウキとした気持ちで私は荒木荘に戻った
((……ジルナ……か……))
(シーザー?どうかしましたか?)
(え?いえ……何故?)
(いえ……なんだか少し口角が上がっていたので……)
(!!……なんでもないですよ!!)
(そうですか?……それよりもジルナはどうでしたか?)
(!!アイツは……アイツは、新人としては有能です……が、吸血鬼なのには変わりないです……(だが、俺が寝ている時、いつでも殺せたはずだ…何故?本当に人は襲わない吸血鬼なのか?))
(……そうですか……(なかなか気に入ったみたいね……))
(ハックショーーン!!!!誰かが私の噂をしている!?)