荒木荘短編集
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花京院君と別れて、荒木荘に帰るつもりだったのに、私は捕まっていた
いや、不審者としての捕まったとかそういうのじゃなくて……
私は花京院君と別れてから、なんとなく公園に寄り道をした、それが仇となったのだ……
真っ直ぐに荒木荘に、帰っておけば良かった……
公園に入り、ベンチに座ってボーッとしていた私の前に、シャボン玉がフワフワと飛んでいたのだ
「?なんか、このシャボン玉……変じゃない?」
思わずそう呟いて不思議な感覚がするシャボン玉に触れた
すると、シャボン玉は私の触れた手を溶かしながら弾けたのだ
「ーーーーッ!?」
思わぬ事態に手を引っ込め、改めて傷を見る、どうやら波紋を帯びていたようだ、シャボン玉の形に指が溶けている
吸血鬼にとって、波紋や太陽エネルギーは全て弱点……それに触れてしまったのだ
消えた指をなんとか隠そうとしていると、男が二人公園に入ってきた
「おい、シーザー、なんだよ急に」
「ジョジョ、おかしいんだ…俺が今日練習用に出したシャボン玉の数は五個、なのに見てみろ……四個に減ってる」
「割れたんじゃあねぇの?」
「アホか、俺のシャボン玉は波紋を帯びている、そう易々と割るか!!」
「……じゃあ、なんで減ってんだよ」
「……吸血鬼が、ここにいるのかもしれない……さっきここを通った時は五個あった……だが、控え室から見たら四個に減っていたのだ……」
「じゃあ……まだ近くに?」
「ああ……」
男達は明らかに一般人とは違う会話をしていた、私は吸血鬼なので人より耳がいい、なので全て聞こえた
コイツらは波紋戦士……私達吸血鬼の敵、そして吸血鬼の存在も知っている……
マズイな……非常にマズイ……このまま日傘をさして公園を出たら吸血鬼だとバレるし、かと言ってここにいるのも見付かるし指をなんとかしないと……
男達にバレないように必死に策を考えるが、私は戦いとか策とかそういうのは苦手だ
結局冒頭でも言ったように、慌てて公園に出ようとした結果、日傘が仇となり波紋戦士に見つかり私は捕まったのだ
それから近くのコンビニに連れてかれ、パイプ椅子にガムテープで固定された
「……こんな女の子が吸血鬼……?」
「そうです先生、日が登っている時に日傘をさし、何よりその波紋で削られた指が何よりの証拠」
「でもどうするんだよ、捕まえて」
今は長い髪の毛の女の人も参加して私をどうするか話し合っていた
私は必死にこの状況を打破する策を考えているが、下手な動きをするとすぐに殺されるだろう……好きで吸血鬼やってる訳じゃないのに……
人間をやめて吸血鬼になったお父さんの遺伝子を少し呪っていると、カツカツとヒールを鳴らして女の人が私に近付いた
「……貴女、本当に吸血鬼?」
「…………」
吸血鬼かどうか聞かれ、私はあえて黙った、どうせ喋っても殺されるんだ
女の人を睨んでいると、今度はさっきの男の一人、金髪の男が出てきた
「早く言っちまいな、吸血鬼なんだろ」
「…………」
「……波紋を直接食らわせてやろうか」
金髪の男はそう言ったが、見た目は優しそうだ、だからあえて黙った
すると、黙っている事にイラついたのか女の人はゆっくりと呼吸をした
パチパチと光っているように見え、私は咄嗟に床を蹴る、その直後、女の人は私に向かって踵落としをした
ガシャン!!とパイプ椅子は大きく音を立てて私ごと倒れた、だがそのお陰で女の人の踵は私には当たらなかった
「……吸血鬼ですね」
「そうみたいです」
女の人と金髪はそう確認し合った、私を悪い吸血鬼と決め付けるような口調に思わず溜め息が出る
私の溜め息を聞いて女の人はゆっくりと振り向いた、そして何か言いたいことがあるようですね、と言ってきたので、私は倒れた体を起こして口を開いた
「私は一応、半分人間だし、人の生き血とか直接飲むの駄目だし、袋で飲んでるし、確かに血は飲んでるけど基本ご飯食べてるし……無害だよ」
そう言ってみたが信用していないようだった
金髪と女の人が話す中、さっきまで静かだったマフラーをつけた茶髪の男が近寄ってきた
「なあ、お前本当に吸血鬼?」
「……さっきからそう言ってるでしょ」
「ならなんで逃げねぇんだ?」
「…………逃げたところで痛い波紋が飛んでくるだけだから」
なにやら軽い口調に警戒したがそこまでする必要はないみたいだ
男の行動がよく分からず疑問に思っていると急に波紋の呼吸をしてきた
思わず私は気化冷凍法でガムテープを凍らし、向かってくる拳を避けるため粉々に砕いて跳躍した
「!?ジョジョ、なにをしているのです!!」
「吸血鬼が拘束を解いたぞ!!」
ガムテープが割る音にさっきまで話していた二人が来た
「あばばば……ちょっと待って……すいませんって、だって急に波紋の呼吸するから……痛いの嫌いなんだってば!!下手したら死ぬし!!」
凄い形相で見てくる二人に慌てて謝るが、聞いてくれない、それどころか急に攻撃してきた茶髪はニヤニヤしている
これからどうすればいいのか迷っていると、金髪が私を指さし
「おい吸血鬼、まさか逃げるなんて考えちゃあいねぇよな、ここから逃げられると思うなよ」
と、怒鳴ってきた、もう台詞が悪役だが今、人類にとっての悪は私だ、吸血鬼だから
金髪の言葉に必死に謝っていると
「シーザー、その辺にしておきなさい」
と、女の人が金髪を止めた、その辺にしておきなさいって、どういう事?後は私が殺るって事?
かなり警戒しながらそう思っていると、女の人は私には近寄ってきた
「うわあ!!波紋だけはやめて!!マジ痛いから!!現にさっきシャボン玉でやった指もかなり痛いから!!」
女の人にそう必死に伝えるが歩みを止めない、ああ、私はここで死ぬのか……花京院君、ごめん友達になれたのに……荒木荘に早く帰っておけばよかった……と言うか、元の原因は吉良だよね?死んだら吉良を重点的に驚かそう
死を覚悟して目を瞑ったが、一向に痛みは来ない、不思議に思い目を開けると女の人は私の目の前で凛と立っていた
「貴女、さっきの方法で脱出する事はいつでも出来た筈、なのに何故逃げなかった」
「え?……いや……私、別に貴方達と殺し合いする気ないし……人間好きな方だし……」
女の人の問いにタジタジと答えると、女の人はニヤリと笑った、そして、私を指さして
「貴女が自主的に人を襲わないのはよく分かりました、ですが吸血鬼である以上危険は高い、なので波紋使いとして私達は貴女を監視させてもらいます!!」
と、凛とした声で言ってきた
驚いたのは私だけではないようで、金髪も驚いていた、そして驚いている私をスルーして女の人は私にコンビニの制服を投げ渡した
「今日から貴女はこのコンビニのバイトです、バイトをしている間人と沢山接するでしょう、その間に人を襲わないように私達が監視します」
女の人は私にそう言ってきた、つまりバイトとしてここに働かせ、監視もするという事だ
めちゃくちゃな提案に絶句していると、女の人は金髪と茶髪に自己紹介するように言った
「ジョセフ・ジョースター、よろしくな、まあ、人間好きなら大丈夫だよな」
「……シーザー・A・ツェペリ……先生が言うなら仕方ない、だが少しでも変な行動をしたら俺が貴様を殺す」
「あ……ジルナで……す……?殺されないようにがんばります……ん?」
若干おかしな自己紹介だったが、こうして私はコンビニのバイトをする事になったのだ
(あの……今日はもう帰っていいですか?お腹減っちゃって……)
(なに!?貴様人間の血を吸う気だな!?)
(違う違う違う!!普通に晩ご飯!!ライスorパン!!)
(まあ、いいでしょう、シフトを渡しておきます、明日は日が暮れたら来なさい)
(へへッこれで夜はだいぶ楽になるぜ)
(ジョジョ!!吸血鬼を監視する事が最優先だぞ!!)
(分かってるって)
(ではジルナ、明日必ず来てくださいね、来なかったら波紋ですよ)
(は……はい……(もう泣きたい…))