荒木荘短編集
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妙に胸がざわつき目が覚めた、体をゆっくりと起こして窓を確認する
真っ暗な空に明るい月が昇っていた、それを見て私は納得した
お腹がすいたんだ……人間としてではない、吸血鬼としての
「あー……お父さん起きてるかな」
伸びをしながらそう言い、部屋を出ると
「む?……ジルナか」
「あ、お父さん、ナイスタイミング」
丁度靴を履き、外に出ようとしているお父さんを見付けた
そして私の顔を見て何が言いたいのか分かったようで
「玄関の前で待っているから、早く来るがいい」
と、言い残して出て行った
何故かお父さんは夜だけやたら偉そうにしている、これも吸血鬼の特徴なのか?
そんな事を思いながら、私は簡単な服に着替えて玄関を出た
お父さんは私が来ると降ろしていた腰をゆっくりと上げて
「ジルナ、迷子になるといけないから手でも繋ぐか」
と、言ってきた、思わず手を掴もうとしたがすぐに引っ込めた
「?どうした?」
「なんでそんなに息が荒いの…下心丸出し」
「WRY……」
お父さんにそう言うと、いつもの少し訳が分からない声を出して手を降ろし、ゆっくりと真っ暗な夜道を歩いた
お父さんの後を私は早足で着いて行った
今日のご飯はお父さんの格好から見て女の人だろう、まあ、いつも女の人なんだけど……
「お父さん、お父さんが"ご飯"と話している間私は何すればいいの?」
「……迷子にならない程度にその辺を歩いていいぞ」
「ん、OK」
そう言い合って、私はまたお父さんの隣を歩いた、街までまだ少しある、その間だけ隣を歩くだけだ
途中、お父さんが私の手を掴もうとしたが即刻振り払い、私は隣だけを歩いた
「そろそろだね、じゃあ、頑張ってね~」
「ああ、迷子になるなよ」
街に着いて、私はお父さんと別れた
ポツポツとネオンが輝く道を歩けば、サラリーマンやOLが私を珍しいものでも見るように振り向く
そりゃあ、金髪の人が歩いていたら振り向くよね……
少し自分の髪の毛を見て、心の中で溜め息をつく
お父さんには歩いていろって言われたが、特になにも面白そうなのはない
夜中だからかほとんどの店が閉まっていた、私は近くのベンチに座り、この間買った漫画の袋の中に入っていた岸辺露伴の漫画を読む
おそらく知らぬ間に漫画を入れられていたのだろう、最初のページにメモ帳が挟まれていて"これを見て漫画を知れ!!"と書かれていた
漫画代が浮いたので文句は言わなかったが、岸辺露伴のあのオレ様は中々癪に障る
「ハァ……どうせならお父さんと一緒に行動すればよかった」
そんな事を呟きながら私は漫画を読む、そうは言ってもお父さんの濡れ場を見る事になるので今はお父さんと一緒に居たくはない、それにしても相変わらずグロテスクな絵だ
少し気分が悪くなり、漫画を閉じてボーッとしていると
「ジルナ」
と、後ろからお父さんに名前を呼ばれた、振り向くと苦虫を噛み潰したようななんと言えない顔をしたお父さんが立っていた
「早いね、どうしたの?」
「いや……実はな……血が吸えなかったのだ……」
お父さんのその一言に思わず目を見開く、お父さんがこう言うので失敗をしたのは初めて見たからだ
思わずベンチから勢い良く立ち上がり、お父さんに詰め寄る
「なんで?」
「実はな……一度吸ったら不味くてな……」
理由を聞くと、お父さんは顔を青くしてそう言ってきた、その言葉に少し納得する
今の世の中、偏った栄養等を取ったりする人間が増えている、そのせいで鉄分が不足していたりするのだ
まあ、本当に稀だけど……
でも、今回そんな人にお父さんは出会ってしまったのだ……
「すまん……このDIO、一生の不覚」
「大丈夫だよ、お父さん……そんなくだらない一生の不覚なんていらないよ」
「……そうか……あ、だが代わりの物なら調達してきたぞ」
何故か、偏った栄養等を取った人間に当たった事を一生の不覚にするお父さんをなだめると、今度は自身ありげに言ってきた
そして、何を調達してきたのか聞くと、お父さんはポケットから縦長の紙に包まれた何かを渡してきた
それを手に持って様々な角度から見ても何も分からなかった
「これ何?」
「あの女が言うには、ガムと言う物だ」
「……ガム?」
お父さんの言葉にますます疑問は増えていく、これは一体なんなのか……
するとお父さんは包み紙を剥がし、これを食べるのだ、飲み込むなよ?と言い、薄いオレンジ色をした固形物を渡してきた
少し警戒しながら口に入れると
「う……うまぁぁぁぁぁぁ!!」
思わず大きな声で叫んでしまった、ガムと言う物を口にした瞬間、オレンジの風味がフワッと広がったのだ
驚いているお父さんにも勧めて、私達はガムを噛みながら満足して荒木荘に戻った
ー翌日ー
(吉良ァ~!!ガムって知ってる?昨日お父さんと食べて美味かったんだ!!)
(ガム?なんだジルナ、今更そんな物を知ったのか?)
(えっ)
(ガムにハマったのなら買ってきてやる)
(………うん(吉良がガムを知っていただと……!?))