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仗助に頼まれて承太郎さんと隣町へ買い物に行く事になってしまい、普段あまり話す事のない承太郎さんと電車に乗ることになった、車やタクシーを使える事が出来ればよかったのだが渋滞に巻き込まれる可能性があったのでそれを避けたのだ
行き先や時間を確認してやって来た電車に乗り込む、承太郎さんは体が大きいので近くにいれば自然とスペースが取れたが周りは私達の予想とは外れて混んでいた、何かのラッシュに当たってしまったのだろうか
「混んでますね……すいません」
「いや、謝る事は無い」
承太郎さんの顔を見て謝ると承太郎さんは視線を私に向けて落としながら口角を少し上げた、仗助と同じでハーフな事もあってか承太郎さんは誰が見ても美形に位置する顔だと思う、そんな人に微笑まれたら誰でもその気がなくても顔に熱が集まるだろう、現に私がそうなのだから
一つ目の停車駅に着いて何人か人は降りたが降りた人の倍近くの人が電車に乗り込んできた、何故この時間にこんなに混むのかと一瞬パニックになった瞬間、電車内のアナウンスが響き渡った、混んでいるせいで内容はあまり詳しく聞こえなかったが"電車のダイヤが乱れる"と言う単語は聞き取れた
アナウンスの内容を頭が理解する前に電車は大きく揺れながら進み出した、その揺れによって私はよろけてしまい承太郎さんの大きな胸筋に完全に凭れる体制になってしまった、慌てて離れようとしたが私が移動する程のスペースは既に埋められてしまったようだ
「す……すいませんッ!!」
「まさかダイヤが乱れるとはな……やれやれだ」
声を少し張り上げて謝るが承太郎さんは気にしてない様子でダイヤが乱れている事を気にしていた、ガタガタと揺れる満員電車より辛いものは無いと思う程に今の状況は厳しい物だった
よろけたせいか私の体制は背伸びの体制になっていて既に足がつりそうだ、上半身は完全に承太郎さんに預ける様になっていて行き場を失った手は承太郎さんのコートを申し訳ない程度に掴んでいる、シワにならない様になんて気を遣えるほどの余裕はないのでもしかするとシワを作ってしまっているのかもしれない
一度後悔が押し寄せると段々と他の事についても後悔してしまうのが私の悪いクセだろう、もっとしっかりと吊り革を掴んでおくべきだっただとか、それ以前にダイヤが乱れている電車に乗るべきではなかっただとか、しっかりと調べておくべきだっただとか、様々な後悔が押し寄せてくる
しかしそんな私のマイナスな思考を遮る様にまた電車は激しく揺れた、周りの人も驚いた様な声を上げていたりフラついていた、もちろん私もフラついてしまい今度は承太郎さんではなく全くの赤の他人に凭れてしまいそうになったが瞬きをした瞬間、私は瞬間移動をしたかの様にまた承太郎さんの大きな胸筋に顔を埋めていた
先程は少し身体が横に向いていたが今度は承太郎さんに抱き着く様な体制になってしまっている、慌てて離れようとしたがまた電車が揺れそれは叶わなかった、何度も揺れる電車に周りの人達も文句を呟き始めた時アナウンスが流れた、流れた内容はとんでもない物で"前の電車の走行不良でしばらく停車する"と言う物だった
「停車って……!!」
「しばらくこのままの状態になるだろうな」
「う……嘘……」
「ナマエ、別に俺に凭れたままでも構わない、気にするな」
駅員の停車発言に思わず息を呑んでいると承太郎さんが落ち着いて様子でしばらくはこの状態が続くと言った、その言葉に思わず冷や汗が流れてしまう、しかし承太郎さんはそんな私の様子を見て帽子の鍔を指で押さえながら気にする事はないと言ってくれた、だが私は気にしてしまう
あの承太郎さんに抱き着く体制になってしまっているのだ、先程は赤の他人に凭れそうになったがこれならいっそ赤の他人に凭れて、謝ってから自分のスペースを確保した方が良かったかも知れないとさえ思えてしまう
承太郎さんにこれ程近付いていると言う事は私が今とてつもなく心臓を激しく動かしている事も承太郎さんに知られているだろう、それがとても恥ずかしい
「……心臓が、騒がしいな」
「えぇっ!?」
「つい聞こえてしまってな、すまない」
「いえ……その、勝手に騒がしくしてるのは私ですから……?」
ポツリと呟いた承太郎さんの言葉を聞いて私はあからさまに驚いてしまう、先程まで気にしていた事を指摘されたのだ誰だってそうなるだろう、完全にパニックに陥ってしまい意味の分からないフォローをしてしまったが承太郎さんは気にしていない様だこれが大人の余裕と言うものだろうか
静かな車内で承太郎さんと二人なのに会話もなく代わりに響くのは私の激しい心音のみ、そんな状況にいよいよ耐えきれなくなり私は承太郎さんに話を振ろうと俯き気味だった顔を上げた、しかしまたタイミング悪く車内が揺れた、どうやら電車が動き出した様だ
「う…わっ」
思わず声が漏れる程バランスを崩してしまった、私に体幹という物はないのだろうかと疑う程先程からバランスを崩してしまっている、しかし今度は誰かの体にもたれる事はなく、咄嗟に承太郎さんの腕にしがみついてしまった
幸いしがみついたのは一瞬だったので承太郎さんに迷惑はかからなかったと思うが、どうにも今日の私は体幹がおかしいようで電車が普通に動き始めているのにフラフラとバランスを崩してしまう、掴まる吊革も周りの人達が使っていて使えないので私は申し訳なく思いながら承太郎さんのコートの袖口を掴んだ
「……ナマエ?」
「本当すいません……ちょっと、掴ませて貰えますか?」
「……揺れるから仕方ない、無理せず危ないと思ったらもっとちゃんと掴むんだぞ」
「はい、すいません承太郎さん」
承太郎さんは一瞬驚いた顔をしたが事情を理解してくれたのか私の心配までしてくれた、承太郎さんの優しさに甘えながら私はなるべくシワにならないように承太郎さんのコートを掴み続けていた
ガタンゴトンと通常よりゆったりとしたスピードで走る電車、いつもならのんびりと窓の外の景色を楽しんだのだろうがどうも今日は調子が悪く自立ができない、気を抜くとフラフラと動いてしまう
そしてカーブに差し掛かった時私はまたバランスを崩してしまい、承太郎さんの手首を掴んでしまった、ハッと息を呑む様な声が頭上から聞こえた気がしたが顔を上げても承太郎さんはいつも通りの表情で窓の外を見ている
「……!!」
しかし私は先程の息を呑む様な声が気のせいでないと確信した、手に意識を集中させると承太郎さんの少し早い脈拍が確認できた、そのテンポはまるで先程の私の様だった、思わず視線を承太郎さんの手首から顔へと移動させると承太郎さんの耳がほんのりと赤みを帯びているのが見えた
今度こそ気のせいかと思ったが承太郎さんがこちらを見て目と目が合った瞬間承太郎さんは気まずそうに咳払いをして帽子のつばを下げた、それと同時に手首から伝わる脈拍はドクリと一際強く脈打った
それからと言うもの目的地に着くまで私は承太郎さんのコートの袖口を掴んだままだった、目的地に着くまで私達の間には会話はなくとても気まずかったが不思議と嫌な気分はしなかった、それは承太郎さんも同じだったのか不機嫌そうな顔はしていないが、そう見えたのは私の気のせいなのかもしれない
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