揃わない歩幅
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午後の授業はチラチラと僕の方を見つめるクラスメイトの視線に耐えながら過ごし、帰りに教室を出る途中先生に止められたりしたがなんとか一日を過ごしきれた
一人で門をくぐった時、後ろからナマエさんの声が聞こえた気がして思わず立ち止まった
「花京院君!!」
僕の勘違いではなかったようで今度はハッキリとナマエさんの声が聞こえて僕は振り返った
ナマエさんは元気良く僕に向かって手を振りながら走っていた
「ナマエさん?どうしたんですかそんなに慌てて……」
「ごめんごめん、花京院君が帰る方面が一緒だって聞いて、折角だし一緒に帰ろうかと……」
僕の目の前まで来て息を整えながらナマエさんが言った言葉に僕は少し期待した、しかしどうやらナマエさんの友達も一緒に帰るそうで僕が思っているような事ではないと分かり、少し恥ずかしくなった
門の前でナマエさんの友人を待つついでに話をする、やはり記憶の中のナマエとナマエさんは容姿こそ似ているが距離感は全く違う
記憶と現実の差に少し戸惑ったが今はナマエさんとして見ようと決めて話を続けた
「あ、来た」
ナマエさんがふとそう呟いて門の中に向かってまた元気に手を振った、僕はナマエさんの視線に合わせて目を向けた
ナマエさんの友人が目に入った時、僕はまたあの朝体験したような感覚に陥った
「承太郎紹介するね、私のクラスの転校生花京院君」
ナマエさんと僕の前にやってきたのはあの承太郎だった、承太郎に向かってナマエさんは僕の事を教える
相変わらず背が大きいと思いながらどんな言葉が出てくるのかとドキドキしながら待っていると記憶と少しの違いもない承太郎の声が聞こえた
「……空条承太郎だ」
素っ気なく言われた言葉に僕は思わず涙が溢れそうだった、またこの三人で話せると、スタンドが見えなくてもきっと彼らは僕の友人だと思った
「花京院典明です、よろしく承太郎君」
いきなり呼び捨てはいけないと思い慣れない君付けをしたが、承太郎は呼び捨てでいいと言ってそのまま歩き出した
ナマエさんが追いかけるのと同時に僕も歩き出す、一瞬ここが学校の門の前ではなくエジプトあたりだと錯覚してしまったので思わず小さく首を振った
それから他愛もない話をして僕らは歩いた、途中ナマエさんが自動販売機で飲み物を買いたいと言ったので数歩先で待つ事になった
今の承太郎にスタンドの事を聞いていいものかと考えていた時、承太郎が静かに僕に話しかけてきた
「……花京院、これが見えるか?」
承太郎はそう言って静かにスタープラチナを僕の前に出した、そんな承太郎に僕は少し笑いながらハイエロファントグリーンを出す
すると承太郎は帽子のつばを下げて静かに笑った、もしかしたら嬉しかったのかもしれない、実際僕も嬉しい承太郎に記憶がある事に
「……もう知ってるかもしれねぇが、今のナマエには記憶がない」
「ええ……知ってます」
「ポルナレフやジジイ、アヴドゥルには記憶があった」
「……三人ともいるんですね、イギーは?」
「さあな、記憶があるか分からねぇがアヴドゥルの言う事に少し従ってる」
承太郎の口から他の皆の現状を聞いて僕はまた嬉しくなった、それと同時に何故ナマエさんだけ記憶がないのかと少し残念に思った
すると僕の考えている事がなんとなく分かったのか承太郎は小さく溜め息をついて
「ナマエの事は気にするな、俺達みたいにいずれ思い出す」
と言ってきた、なにか返そうかと口を開いた時タイミング悪くナマエさんが戻ってきたので何も言えなかった
お待たせと言って笑うナマエさんはやはりナマエと似ていて、ナマエの死に際を思い出してしまい僕の瞳が涙目になった気がした
「ナマエ、花京院、今日これから予定あるか」
「え?なに?私は何もないけど?」
「僕も……特に予定はないです」
承太郎が急に立ち止まってそう言ったので僕は持っていた携帯電話を確認してそう言った、すると承太郎はニヤリといつもの笑顔をして
「俺の家に招待してやってもいいぜ」
と少しだけ高校生らしい冗談をいつもの声色で言ってきた、そんな承太郎の言葉にナマエさんはケラケラと笑ってお邪魔させてもらうと言ったので僕も釣られて行く事にした
親に連絡を入れてから空条家に向かって歩く事にした、なんだったらナマエさんが席を外した時にまた現状報告をすればいいと思った
もしかしたら承太郎もそのつもりかも知れないと思い承太郎の方に視線を動かしたが帽子の影で表情はよく見えなかった
「相変わらず大きいねぇ承太郎の家は」
「本当ですね……」
空条邸の門前でナマエさんとそう呟いていたが承太郎は気にせずそのまま家に入って行った
ナマエさんが入った後に僕もお邪魔すると、元気なホリィさんが挨拶をしてきたので僕も笑顔で話をした
あの時は経験できなかったナマエとホリィさんの笑顔が見る事ができて僕は嬉しかった、ナマエがDIOとの戦いで死んでしまった事を知った時のホリィさんはとても悲しそうで申し訳なさそうにしていたのだ
しばらく二人が話しているのを見ていると、どうやらおやつを二人で作ってくれるそうで二人は僕達に一言言ってから台所へ向かって行った
「……承太郎、僕はナマエとホリィさんの笑顔が見る事ができて嬉しく思うよ」
「……そうだな」
「ナマエは思い出すのかな……」
「……さあな、俺は去年ナマエと高校で再会してから思い出したが、ナマエは全くその素振りを見せねぇ」
承太郎の言葉に僕はまた少し悲しくなった、なぜナマエだけが思い出さないのか、もしかすると彼女はあの旅の事をあまり良く思ってないのではないのかと思ってしまう
そんな話をしばらくしているとナマエさんがホリィさんと作ったおやつを持ってきてくれた、僕はそれを大切に味わって食べて今ここにいるナマエさんの存在を確かに感じていた
あまり長居してもいけないと思ったので少しナマエさんも混じえて話してから僕達は空条邸を出る事にした
ホリィさんはもう少しいてもいいと言ったがそれをナマエさんと一緒にやんわりと断って僕達は一緒に歩道を歩いた
「承太郎とは仲良くできそう?」
「はい、承太郎とは話も合いますし」
「アハハッ随分仲良くなったね」
承太郎と僕の仲に問題がない事がわかるとナマエさんはカラカラと笑い出した、それと同時にまた悲しみが込み上ってくる
何故こんなにも悲しいのかと一瞬困惑するが理由は記憶が戻った時に知っていた
僕は彼女が好きで、とても大切に思ってて、そんな彼女を亡くした事がとても悲しかったのだ
だから今ナマエさんに記憶がないのが悲しい、彼女は花京院典明と言う存在を転校生としか認識していないのだ
そこで僕はある事を考えた、思い出させる事はできないのかと、ただ僕はもう一度ナマエと話したいのだ、例えこの時代のナマエさんを殺しても僕はナマエに会いたかった
「……ナマエさん」
僕はゆっくりと喉から声を絞り出し、ハイエロファントグリーンを呼び出す、そしてナマエさんの目の前に移動させた
なんとか思い出してくれないかと願ったが彼女はハイエロファントグリーンと目を合わせない、彼女は純粋に僕を見ているだけだった
「どうしたの?花京院君」
トドメと言わんばかりに僕の事をまた"花京院君"と呼んだ、今日一日中僕の事をそう呼んでいたのに何故か今聞こえたそれが酷く僕の心を痛めつけた
僕はなんでもないと言って誤魔化して止めていた足を動かした、今はまだ僕とナマエさんの歩幅は揃ってないけれどいつか絶対この歩幅を揃えてまた歩きたいと願った
エジプトに向かって一緒に歩いた時と同じように、隣にナマエの存在を感じながら歩きたいと