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私が住むこの杜王町を徐々に蝕んでいる殺人鬼の存在を知ってからそう時間は経ってないある日、私はいつものようにカメユーデパートへ行き食品の買い溜めをしていた
一人暮らしではないが両親が共働きでほとんど家にいないので買えるうちに買っておかないと後で後悔するからだ、この間は帰宅した後すぐに寝てしまい起きてからご飯を食べようと思ったら冷蔵庫に何も無く、深夜に殺人鬼や不審者の陰に怯えながら買いに行った
もうそんなことを繰り返したくないため人の目もあり明るいうちの休日の昼に買いに行くのが最近の日課だ、休日はゆっくりしたいタイプなのだがこの際仕方ない
ある程度買い込み、帰宅するため家へ向かい歩いていると、途中カフェ・ドゥ・マゴが空いている事に気付き慌てて荷物を置きに行き店内へ入った
家がドゥ・マゴに近くて本当に良かったと思っている、最近飲めるようになったカプチーノを頼みボーッと杜王町を行き交う人達を眺めて暇を潰す
「あ……」
ふと目立つ白色が見えた、確か仗助君の親戚の……そう、空条承太郎さんだ、あの人はいつも探し物をしているイメージがあるので今日は何を探しているのかと眺めているとふと目が合った
思わず肩をビクつかせてしまったが空条さんは特に気にしてないようでそのまま私から視線を外し人混みに紛れてしまった、目が合ったのは私の勘違いだったのかと思う程だった
空条さんと同じくらいの年齢の人と関わった事がないのでどう接していいのか分からないのが本音だ、なのである意味私の勘違いで良かったと思う
「お待たせしましたカプチーノです」
そう言いながら店員さんが私の前にカプチーノを置いた、礼を言って少し砂糖を入れようとした時店員さんが相席は大丈夫かと聞いてきた、人にもよるので誰が座るのかと後ろを振り向くとあの白色が見えた
「空条さん?……あ、知り合いなので大丈夫です」
思わず名前を呼んでしまったが店員さんに大丈夫だと伝え空条さんを席に案内してもらった、私の向かいの席にドサッと座った空条さんは大きいので存在感はバッチリだ
空条さんは私にお礼を言ってから店員さんにコーヒーを頼んだ、店員さんがオーダーを取り終えて去っていった時空条さんが私の方を向いた
「ナマエ君、迷惑じゃなかったか?」
「いえ、丁度一人じゃ寂しいと思っていた所です、気にしないでください」
「……そうか」
空条さんはそれだけ言うと帽子の鍔をクイッと下げた、必然的に空条さんの目は隠され表情が読めなくなる、元々無表情な方だがもっと表情が無くなって逆に怖くなる
なにか話題はないかと焦ってしまい無意識にキョロキョロと周りを見渡してしまう、しかし話のネタになるような事は何も無かった
どうしようかと本気で焦り、軽く混乱しかけた時空条さんは少し伏せ気味だった顔を上げた、今度こそ私の勘違いではなくバチッと目が合った
「……あっ……」
「この時間帯は特別混むって訳じゃないんだが、何故俺が相席にしたか分かるか?」
空条さんの綺麗な瞳に思わず声が漏れた時空条さんは学校の先生が教科書の問題を読むように質問をしてきた、いきなりの事で答えられずただアタフタしていると空条さんが軽く笑みを零した
なんだか恥ずかしくなり先程入れそびれた砂糖をカプチーノに入れて備え付けのスプーンでカプチーノを混ぜながら、分かりませんと一言聞こえるか聞こえないかの声で呟いた
空条さんは聞こえていたようでまた笑みを零した後、答えを言おうとしたのか口を開いた時タイミング悪く空条さんのコーヒーが届いた
店員さんに礼を言ってから空条さんはまた私の方を向いたが、先程の質問の答えを教えずそのまま淹れたてのコーヒーを飲んだ、私も冷めないうちにとカプチーノを飲む
「……ナマエ君と話をしたかったからだ」
先に一口コーヒーを飲み終えた空条さんがカップから口を離しそう呟いた、思わず飲み込もうとしたカプチーノを噴き出しそうになりむせてしまう
ゲホゲホと咳き込んでいると空条さんは大丈夫かと声をかけて私の背中をさすってくれた、誰のせいでこうなったと思っているのだろうかと思ったが助けてくれているのには変わりないので空条さんに礼を言う
「そんなに驚く事か?」
困ったように眉を下げながら笑う空条さん、ハーフと聞いたその顔に思わず見とれてしまう、逆に見とれない女性がいるなら見てみたいものだ、それ程の人が私なんかと話がしたいと言う理由でわざわざ来てくれるなんて思いもよらなかった
「ケホッ……はい…あまりにも意外な理由だったので……」
「そうか……まあ、そういう理由だ、俺と話をしてくれないか?」
「私なんかでいいんでしょうか、空条さんが満足するような話のネタ無いですよ」
「いいんだ」
そう言うと空条さんは目を伏せ口角を少し上げてまたコーヒーを飲んだ、私はもう二、三回咳き込んでから喉の違和感を無くすためにカプチーノを流し込んだ
カップを置くと空条さんは頬杖をしながらこちらを見ていた、私を見る目はやはり親戚だからか仗助君に似ている気がする
「さて、どんな事を話そうか」
気が付くとどうやら私は無意識にジーッと空条さんを見ていたらしい、空条さんの声にハッと意識が戻った、なんだか失礼な事をしてしまった気がする
思わず視線を下に向けて飲みかけのカプチーノを眺める、泡のせいで私の顔は反射しないがきっと私今顔を赤くしてしまっているだろう
それよりも話題だ、空条さんと気が合う話のネタは生憎今持ち合わせていないのでどうしたら良いのか分からない、自然と口は閉じてしまう
「困らせてすまないな」
「いえ、そんな事は……」
先程からしどろもどろしているが、正直私は空条さんとこんなに話せるのはむしろ光栄な事だと思っている、誇り高い気持ちになるのはきっと空条さんと話しているこの状況のお陰だろう
空条さんに失礼のないように、且つ話の内容が釣り合うような話題が私にはあるのだろうかと一瞬心配になったがふと空条さんの職業を思い出した、確か海洋生物の学者と仗助君から聞いた気がする
「あの……杜王町って海に面してますよね」
「ん?ああ……そうだな」
勇気を振り絞って空条さんに海の話題を出す事にした、正直海の事はほとんど知らない、海について詳しく調べようなんて思った事などほとんど無いのだ、それでも私が分かる範囲で少し疑問を振ってみる事にした
これなら私の長年の疑問はようやく答えが出るしきっと学者の空条さんも少しは楽しめるだろう、自分の好きな事を話して楽しくない事は無いのだから
「……海ってなんで青いんでしょうか」
私の長年の疑問、それは海はなぜ青いのかと言う素朴なものだ、幼い頃この質問で父親をとても困らせてしまった記憶があるので今までそれを聞かないで過ごしてきた、答えを知ってる人からしたら馬鹿みたいな質問だろうが私は本当に疑問なのだ
空条さんの方を見ると空条さんは珍しい事に豆鉄砲でも食らった様な顔をしていたが、私が見ている事を知って少し慌てながら顔を隠すようにクイッと帽子の鍔を指で下げた
「やれやれだぜ……」
聞こえるか聞こえないかの声でそう呟いた空条さん、しかし言葉とは裏腹に空条さんの口元は上がっていて若干嬉しそうだ、この質問はなかなか上手くいったのではないだろうか
空条さんを楽しませる事に成功したのと長年の疑問にようやく終止符を打てる喜びに少しワクワクしながら空条さんの返事を待った、気のせいか周りがザワザワと騒がしくなっている気がするが今は空条さんの言葉に集中した
「……混んできたな」
「え?」
空条さんはそう呟くと飲みかけだったコーヒーを一気に飲み干しカップを丁寧に置いた、そんな空条さんの行動に呆気を取られていると空条さんは今度は私のカプチーノを指さした
「早く飲みな、冷めちまうぜ」
「え……ああ、はい」
空条さんの言葉に私は慌ててカプチーノを飲み干した、長い間話していたからかカプチーノはほとんど冷めきっていて申し訳程度に底の方が温かいだけだった、飲み干してカップを置くと空条さんは席を立ち上がった
質問の答えは一体いつ返ってくるのかと心配になり思わず空条さんを見上げた、すると空条さんは帽子の影がかかっている目を伏せて口を開いた
「ナマエ君の質問は今度直接海に行って話した方がいいだろう、今度の調査の時にでも付いて来て話そうと思うが……連絡先を教えてくれるか?」
「いいですけど……私邪魔になりませんか?」
「調査と言っても俺一人だ、ナマエ君が邪魔だなんて思わん」
名案だと言わんばかりに口角を上げ、少しだけ嬉しそうにそう言う空条さん、悩んだが邪魔にならないと言い切った空条さんの押しの一言に私は心を動かされ、今度調査にお邪魔する事になった
家の電話番号を空条さんが渡してきた手帳に書いていると、空条さんがどこかへ行ってしまった、あとを追いかけようと思ったがトイレとかだとお互い気まずくなるので気にせず手帳に書き記していた
終わったと同時に空条さんが戻って来たので手帳を返し、店を出ると言うのでカプチーノ代を払うため伝票を探したが見当たらない、思わず空条さんに伝票を見てないかと聞くと空条さんはまた少し微笑みながら
「ナマエ君の連絡先が聞けたからな、嬉しくて思わず支払ってしまった、気にしなくていいぞ」
と言ったが私は申し訳なくて鞄から財布を取り出そうとしたが店内が混んできたらしく空条さんは私の手を引き外に出た、外に出てから改めて財布を取り出し空条さんにお代を渡そうとしたが大きな手がそれを制した
「言っただろう、君の連絡先が聞けただけでいいと、気にするな」
「でも……!!」
「こういうのは潔く奢られるものだ、無理に払おうとすると逆に失礼だぞ?授業で習わなかったか?」
「……ありがとうございます……」
空条さんと少しの攻防戦を繰り広げたがやはり大人には叶わず、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになったがなんとかお礼を言った、それを聞いて空条さんは微笑みながら私の頭に手を置いた
今日は空条さんに甘えっぱなしな気がするが、今度の調査の日になにかお返しをしようと思い私は空条さんにもう一度お礼を言ってから別れた、空条さんはしばらく私に向かって手を振っていたがもう一度振り返った時はジッと私の連絡先が書かれている手帳を眺めていた