JOJO
name changes
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
サラッとカーテンが揺れる音がやたらと響く、部屋の隅にあるベッドには友人のジョセフが規則正しい呼吸で眠っている
ゆっくりとした時間、あんなに忙しく動き回って戦っていたのが嘘のように今は時計の針がゆっくりと過ぎている感覚がする
サラッとまたカーテンが揺れた、その音に反応するようにジョセフの睫毛は微かに動く、しかし疲れているのであろう目覚める様子は全くない
「…………」
私は静かにジョセフのベッドの隅に腰をかけた、微かにベッドのシーツのシワが増えた
私はシーツが擦れる音も気にせずジョセフに手を伸ばす、彼は全てを終わらせる代わりに左腕を無くした、義手でも付ける予定なのか部屋にある机には医者が書いたのか簡単な設計図があった気がする
ゆっくりとジョセフの頬に手を滑らせようとした時、カチャリと静かにジョセフの病室の扉が開いた
コツコツとハイヒールなのか靴の音が無音の空間にやたらと響く、入ってきたのは看護師だ、ジョセフの点滴や包帯のチェックをしている
人の気配がしたからか動かされたからか、ジョセフがゆっくりと目を開けた、それを見て看護師は起こしてしまった事に謝罪をしてからやる事が済んだのか部屋を出て行った
「……なあ、そこにいるんだろナマエ」
ジョセフが寝ていたためか少し乾いた声で私を呼んだ、そう言うジョセフに私はデコピンを食らわせる
小さい声で痛がったジョセフは何回か瞬きをするとしっかりと私を捉えたようで、私の顔をジッと見てくる
「……やっぱりいた」
「……私が病室にいたらいけない?」
「いや、いて欲しい」
ジョセフは情けない笑顔で私にそう言って自分の右手でクシャリとシーツを握った、しばらく沈黙が続きあの無音の空間が再び訪れる
私とジョセフがお互い黙っているとカチャリとまた扉が開いた音が響いた、入ってきたのはジョセフの担当の医者でカルテを片手にジョセフの傍に寄って怪我の様態などを詳しく聞き始めた
ジョセフはそんな質問にヘラヘラと軽く笑いながら答えていく、私はそんなジョセフに微かに怒りを覚えたのを感じた
一通りの質問を済ませ医者は礼を言って怪我が早く治るようにと言ってから部屋を出て行った、ジョセフがまだ扉の向こうの医者に向かってヘラヘラしているのを見て私は遂にジョセフに強めに言ってしまった
「ジョセフ……どう言うつもり?」
思っていた以上に低めの声が出てしまい自分でも驚いたがあくまでも平静を装った、するとジョセフは首を傾げながら
「なんの事?」
と不思議そうに言ってくる、私はそんなジョセフに溜め息をつきながらゆっくりとベッドから立ち上がり、サラサラと揺れるカーテンを軽く押さえながら窓の外を眺めた
眩しい太陽の光が視界を包みついつい目を細めてしまう、しかしそれもすぐに終わり私は外の景色を眺めながらジョセフと話す
「なんの事って、分かってるでしょう?さっきの笑顔の事」
「……俺はいつもこんな笑顔だろ?」
「違うよ」
ジョセフの言葉を私は否定する、ジョセフ自身も知っている筈だジョセフの笑顔がこんな貼り付いた笑顔ではない事を
私とシーザーが死んでから心の底から笑った事がない事を
シーザーはワムウとの激闘の末血で作ったシャボン玉を残して、私はカーズにジョセフを怒らせる為の駒として殺された、それでも私達は自分の人生に満足ていたのだなのにジョセフはそうは思ってないようだ
私達が死んでからヘラヘラしてはいるものの本当の笑顔ではない、偽物の笑顔をしている
「ジョセフ笑ってよ、心の底から」
「……シーザーもナマエも死んだのに?」
「…………」
「俺が心の底から笑ったら、二人が本当に死んでしまう気がするんだよ」
「ジョセフ、私達はもう死んでいるの」
「言うなよ……違うんだ、俺が笑ったら二人が死んだ事を認めちゃうから、二人がいないのに心の底から笑えねぇよ」
ジョセフはきっと酷く傷付いたのだろう、シーザーと喧嘩別れした時になんとなく辛そうな顔をしていたのを覚えている、私が死んだ時に薄らと涙を浮かべていたのを覚えている
ジョセフはそんな私達の死を認めたくないのだ、心の底から笑ったら自分からこの戦いの終わりを認めてしまい私達が死んだ事を認めてしまう事になると言う
その気持ちが分かるような分からないような気がするが、それでも私達はジョセフには笑っていて欲しいいつまでも後ろばかり見ていないで前を向いて生きて欲しいと思う
「ナマエ……俺の事、嫌いになった?」
「何を馬鹿な事を……でも、今のジョセフを見ても私は生きていた頃より楽しくないよ」
「そうだよな、ナマエ死んでから笑ってくれねぇもんな」
ジョセフが自嘲的な笑いをしながらそう言ったのを聞いて、私は窓の傍から離れてジョセフに近付いた
ジョセフは俯いていて表情は見えない、私はなんとなくジョセフを撫でてあげたくて手を伸ばした、だがその手はスルリとジョセフの体を通り過ぎた
そこで私は本当に死んでしまったのだと現実を突きつけられる、知っているがこうしてジョセフと話せていたので信憑性がなかったのかも知れない
勿論死ぬ寸前の激痛は覚えているし、意識がなくなる瞬間の事も覚えている、死んでしまったシーザーと出会った時に自分が死んだ事を理解した時の事もハッキリと
「私達がこうしてジョセフの元にいるのはきっとジョセフをこのまま置いて行けないからなんだよ」
「俺は、二人にずっといて欲しい……」
「……それじゃあダメなのは知っているでしょ?」
「……ナマエ……」
「ジョセフ、笑ってよ」
私の名前を涙声で呟くジョセフにもう一度頼むとジョセフは俯いていた顔を上げた、ジョセフは静かに涙を流していてなんだか私は申し訳なくなってしまった
サラッとまたカーテンが揺れる音がした、その音が響いた瞬間ジョセフは震えながら口角を上げた
ジョセフはようやく本当の笑顔を私に見せてくれた、ホッとした瞬間シーザーが私の肩に手を置いてきた
「ナマエ、もういいか?」
「……うん、安心したよ」
ジョセフに聞こえないようにそう言い合い私は立ち上がった、その瞬間ジョセフが目を見開いたきっと行こうとしている事が分かったのだろう
「ナマエ……シーザー……待って……!!」
身を乗り出しながらそう言うジョセフに私は手を振って返した、シーザーは少し悲しそうに笑っていてジョセフに怒っていた
サラッとまたカーテンが揺れた、私が最後に見たのは涙をボロボロと流しながらこちらを見ているジョセフの顔で、最後の最後まで放っておけない人だと思ってしまった
チラリと横を見るとシーザーもそう思っていたようで溜め息混じりにジョセフの事に悪態をついていた
私はそんなシーザーに向かって思わず笑ってしまった、ジョセフが最後に泣いてしまったのは確かに残念だったがこれからジョセフは少しずつ私達の死を受け入れてくれればいいと思う
サラッとカーテンが揺れた音がまだ耳に残っていて、私は思わずゆっくりと目を瞑った