終ワル
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どんな人間も他人に気に掛けて貰えると嬉しい物だ、自身の存在がその人の中に確かにあって、人との繋がりを感じる事ができ、不思議とそれが安心に繋がる……だからこそ、きっと人間は他人と繋がる事を無意識のうちに求めるのだろう、家族であれ、親戚であれ、他人であれ……人間は他の誰かの中に必ず存在している
特に、全く関係ない時にでも自分を思い浮かべて貰えたと知った時は嬉しい物だ、他人を通して物事を見ている様な感覚になり、そこから枝を伸ばす様に更なる繋がりを求めているのかもしれない
だからと言って気に掛け過ぎるのも良くないと私は思う
「オイ、ナマエ聞いてんのか?日が暮れる前には帰って来い、知らねぇ場所、人間には近付くな、もちろんクソ神様にもな、忘れ物はねぇか?最近空気が乾くから飲み物持ってけ、ナマエその荷物重くないか?靴紐しっかり結んだか?良いか、居場所は常に知らせろ、戦乙女達から支給されたこの謎の機械ちゃんと使えるからな俺様は、ナマエ使い方分かるか?地図持ったか?あと……」
「あぁッ‼︎もう‼︎大丈夫だって‼︎」
まるで機関銃の様に投げかけられる言葉を一蹴した、おそらく私の声は恥ずかしい事にこのヴァルハラ闘技場内に響いてしまっただろう、だがそれ程大きな声を出さないと彼の、レオニダス王の言葉は止まらないのを私はよく知っている
「なんだテメェその態度は‼︎人が心配してやってんのに‼︎」
いや、前言撤回、大きな声出したらもっと大きな声で返された
レオニダス王が愛煙している葉巻の香りが一気に私を包み込んだ、と言うか先程の無数の確認事項の時点で葉巻の香りは私の衣服に染み込んでいるだろう、表情筋が働かなくなってしまうのも無理はない
このヴァルハラ闘技場に呼ばれてから私はレオニダス王の強い要望で控え室に篭っていたが、レオニダス王の武器となる戦乙女を呼ぶ為に控え室から出る機会を得た、半ば戦乙女側の気遣いでもあるが、良い気分転換になると浮き足立っていたのも今は昔の話だ
私が一歩控え室から出ようとするだけでこの心配症の、いや、過保護のレオニダス王は牙を剥いた
「レオニダス王、私子供じゃないんですよ」
「あぁ、そうだな、ったく一丁前に"レオニダス王"なんて堅苦しい呼び方しやがって、昔みたいに"レオさん"って呼べよ」
「ちょっ、いつの話……」
溜め息混じりにレオニダス王に苦言を呈したが思わぬ変化球で返されてしまい目を白黒させてしまう、そんな私の様子を見てレオニダス王はニィと口角を上げる、"レオさん"なんて以前の呼び方をしてしまったら周りの人間から何を言われるか分かった物じゃない、例え天地がひっくり返っても二度と呼ぶものか
「第一な、お前は何も分かってねぇ、俺様が後ろで見てねぇとどっかの男にすぐ連れてかれるぜ」
痛む頭に手をやった時、不意にレオニダス王が真剣な声色でそう話し始めた、彼の蒼い目が私を静かに捉えている、確かにいつもはレオニダス王がそばにいて目を光らせていたがレオニダス王が居なくなってすぐにトラブルに巻き込まれる様では逆に凄いだろう、私はトラブルを寄せ付ける女だと思っているのだろうか
だが実際はそんな事はない、むしろレオニダス王が近くに居ないから筋骨隆々の身体では通れない狭い通路も悠々と通れるだろうから遠回りしなくても良いだろうし、葉巻の香りが服に染み込まなくて済む、レオニダス王が無駄に周囲の人を威嚇する事もないのでむしろ安心して戦乙女を迎えに行く事ができる
「……レオニダス王が居なくても私はしっかりできますよ……そんなに信用ないですか?」
そもそも、自分はそんなにも頼りないのかと少々気落ちしてしまう、レオニダス王の中で自分は一体どれだけちっぽけで頼りなくて手のかかる存在なのだろうか、自信のなさからあの真っ直ぐな蒼い目を見る事ができなくて視線を逸らしてしまう
レオニダス王は静かに葉巻の煙を燻らせるだけで何も言わなかった
無言、それが答えなのだと思った、承諾は沈黙をもって答えよ……つまり、レオニダス王は私を信用していない……なんて事実は知りたくなかった、だが遅かれ早かれその事実を知る事にはなっただろう、ただ今がその時だっただけだ
「ッ……もう、いいです……」
知ってしまった事実に耐えきれず、レオニダス王の顔を見ずに部屋を出て行く為にその場から離れた、扉の前まで来て、ふと、このまま出て行ったとしても次はどんな顔でレオニダス王と顔を合わせれば良いだろうと考えてしまい、つい目尻が熱くなる
信用するに値しない私が傍にいる必要はないだろう、だが何故レオニダス王は私を呼んだのか、いや……もしかすると私を呼んだのはレオニダス王自身ではないのかもしれない、誰かが気を遣って生前傍にいただけの私を思い出しただけなのかもしれない、あぁ、そう考えると益々目尻が熱くなった
気が付けば私の目には分厚い涙の膜が張っていてほんの少しの振動で涙が溢れ出てしまう程になっていた、泣くならせめてレオニダス王を不快にしない様に部屋を出てからにしようと思い扉に手を伸ばす
「どこ行く気だ、まだ話は終わってねぇ」
「ッ……‼︎」
頭上からレオニダス王の声がしたかと思いきや扉に伸ばした手を力強く掴みそのままグイッと自身の方に私を引き寄せた、ポスンッと情けない音と共に私はレオニダス王の鍛え上げられた身体に体重を預ける形になる
「レオ、ニダス王……」
「なんだぁ?泣いてんのか」
顔を上げれば口から葉巻を離し紫煙を吐き出すレオニダス王と目が合った、私の背中とレオニダス王の鍛え上げられた腹筋が当たった微細な振動から涙が頬を伝った時レオニダス王は眉を顰め、そのまま私とは違う太くゴツゴツとした指で器用に涙を掬い上げた
「ッちが、……これは……ッ」
傷心ごときで涙を流す弱く面倒くさい女だと思われたくなくて否定しようとしたが思う様に言葉が出てこない、何も言えないまま、流れ落ち続ける涙すら止められないまま、私はただレオニダス王を見上げる事しかできなかった
レオニダス王は私を見据えたまま葉巻を地面に落とし足で火をもみ消した、呆れられてしまっただろうか、面倒くさいと思われてしまっただろうか、そんな不安な気持ちが涙と共に溢れ出して止める事ができない
「俺様が口煩く言うから信用されてない……だっけか、そんな事思ってたのかナマエ」
「…………ッ」
「そんな事ある訳ねぇだろ、泣くなって……あぁ、もうどうすりゃ良いんだよ」
「すみ、ませ……」
依然、私の両目から流れ落ちる涙を見てレオニダス王は困った様に頭に手をやった、レオニダス王を困らせてしまっている事実に申し訳なくなって思わず謝罪の言葉が漏れるが泣いているせいで上手く言えない
あぁ、なんて情けない姿なのだろうか、勝手に傷付いて、勝手に泣いて、その結果レオニダス王を困らせてしまっている、子供の様に泣きじゃくる事しかできない自分が恥ずかしい
せめてもの抵抗として、レオニダス王を見上げていた顔を伏せ泣き顔を隠す、しかしすぐにレオニダス王はその場にしゃがみ込み私の身長と自身の身長を合わせ、私の身体を自分の方へと向かせた、レオニダス王と向き合う形になったがこんな情けない姿を見ないで欲しくて両手で目を覆い隠し続ける
「こっち向けナマエ、顔見せろ……ほら、手離せ、目が腫れちまうだろうが」
私のささやかな抵抗はそんなレオニダス王の言葉と共にすぐに崩された、レオニダス王の大きな手が私の手首を包み込む、グイッと目から離れる様に動かされれば私の手はいとも簡単に剥がされてしまう
レオニダス王の綺麗な蒼い目に、私の情けない泣き顔が反射した
「すぐに、止めます、から……」
そう言っても厄介な事に勝手に涙は流れてくる、自分の身体の事なのに涙腺は私の言う事を全く聞いてくれない、少しの間私とレオニダス王の間には私が呼吸を整えようとする息遣いだけが響いた
「なぁ、聞いてくれ……ギリシャにいた頃は俺だけじゃなく家臣や兵士達もいて、どこにいてもナマエを守る事ができた」
そんな小さな静寂を切ったのはレオニダス王の言葉だった、彼が話したのは生前のギリシャの事、それが今とどの様な関係があるのかと疑問に思いながら私は流れ落ちる涙と闘いながらレオニダス王の言葉に耳を傾けた
「どこにいても、どんな時でも、ナマエを守る事ができた状況のギリシャから打って変わって、この場所では俺だけの力でしかナマエを守れない……何人か兵士を傍に付けさせても良いが、それじゃあナマエが可哀想だろ?ここじゃあナマエから離れた俺様は無力だ」
「そんな事、無いです……レオニダス王はいつだって力強いお方です……」
レオニダス王が話すのは生前のギリシャの状況とここの状況が違うと言う事、レオニダス王曰く、ギリシャでは人脈の広さ、人望、カリスマ性、権力、等々全ての力が抜きん出ていたが、ここでの自分はそれらが無いと言う
そんな事はない、いつだってレオニダス王は力強くて、追い掛けたくなる背中をしていて、頼りになれる存在だ、無力だなんてレオニダス王自身でもそんな事を言うなんて許せない、思わず声を上げるとレオニダス王は驚いた様に目を丸くした後ニヤリと微笑んだ
「ハハッ……ありがとな、だがいくら力強くったって駆け付けるのが遅かったらナマエを怖い目に遭わせる事になる……おまけにここにいるのはギリシャ人だけじゃあねぇ」
続けて話すのはギリシャとこの場所の異なる点、ここにいるのは天に召された全ての国、全ての時代の魂、一国のギリシャとは違い、文化も生活も生き方も全てが異なる人間が多数存在している事、そんな人間と無計画に関わろうなんて私は考えていないがレオニダス王は絡まれた時の事を懸念しているのだろう
「ここにいると、ナマエを守りたい気持ちがちょっとばかし強くなるんだ……信用してないからじゃあない、心配だから口煩くなっちまうんだ……って、こんな女々しい事本当は言いたくなかったんだけどな」
レオニダス王の真っ直ぐとした綺麗な蒼い目が私を静かに捉える、レオニダス王が私を気に掛け過ぎるのはただの心配だったからなのだと知らされて反射的に嘘なのではと疑心暗鬼になってしまうが、レオニダス王の真っ直ぐな瞳がそんな感情をかき消す
困った様な笑みを浮かべるレオニダス王に私はなんて幼稚な勘違いをしていたのだろうと恥ずかしくなった、むしろレオニダス王を信用してなかったのは私の方だったのでは無いかとすら思えてしまう
「とんだ勘違いをしてすみません……ッ、でも私、そんな危険な場所には行きませんよ」
「あ?そうじゃなくて……」
レオニダス王にそう謝罪をしつつも、私はそんな危ない場所にホイホイと近寄る無防備な女に見えるのかと疑問に思ってしまいレオニダス王にそう問いかけた、そんな私の問いかけにレオニダス王はキョトンとした表情をしながら答える
「ギリシャ一、いや全人類一可愛い女が一人で歩いてたら危ねぇだろ」
「な、ッえ?、ッ、ぅえ!?」
当然の事を言う様な口調で急に投下されたレオニダス王の爆弾発言に、あれだけ止めようとしても止まらなかった涙は一瞬にして引っ込み、それと入れ替わる様に顔に熱を帯びた、きっと今私の顔は真っ赤になってしまっているだろう、口からは間抜けな声が漏れてしまう
真っ赤な顔で目を白黒させている私を見て、今度はレオニダス王が目をパチクリとさせる
「あー……言わないとダメだったか、あれだけ気を掛けておけばてっきり伝わってると思ってたんだけどな」
困った様にそう言うレオニダス王だが、彼の気の掛け方はさながら保護者のそれで、伝わる物も伝わらないと思うし、むしろこちらとしては親に注意されている感覚だったので意表を突かれた様なものだ
「って訳で、俺様の可愛くて大切なナマエはちゃんと俺様の言う事を聞いてくれるよな?」
「……ぅ、……はい」
呆気に取られている私の頬に優しくキスをしながらレオニダス王にそう言われ、私は真っ赤な顔で力無く返事をする事しかできなかった、まさかこんな展開になるとは思ってもいなくて驚いてしまう程力強い直球で告げられたレオニダス王の想いは私の不安は簡単にどこかへと飛んで行ってしまった
生前から伝えられていた為レオニダス王の想いは知っていたが、"ギリシャ一"どころか"全人類一"だなんて考えた事もなかったし思われているとは想像できなかった、流石レオニダス王色々と規模が違う
顔の熱が引かないまま、私はレオニダス王が話す愛が込められ過ぎた確認事項に静かに耳を傾けた
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