警鐘
name changes
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花言葉とは色や数で意味が変わる事があるらしい、恐ろしい花言葉もあれば祝福の言葉の花言葉もあると言う、私は花は好きだが花言葉などには疎いので残念ながら詳しくは話せない
だが何故そんな私が花言葉について考えているのかと言うと、現在進行形で私の上官である沖田さんとシロツメクサが咲き乱れる地元では少し有名な観光地に来て花を眺めているからだ
オフの日が沖田さんと合ったのでどこかに出掛けようと言われてホイホイと着いて行ったらこうなった、周りにはカップルや家族連れが多く私達だけ場違いな気がしてならない
「沖田さん帰りましょうよ」
「え、なんで?もしかしてナマエシロツメクサ嫌いだった?」
「そう言う訳じゃないですけど……周り見てくださいよ」
「周り……シロツメクサ綺麗だなぁ」
「そうじゃなくて!!周りの人ですよ……」
沖田さんに私が感じている肩身が狭い思いに気付いて欲しくて声を掛けたが沖田さんは気付かないようだ、シロツメクサを楽しそうに摘んでいる沖田さんに小声で周りの人達について話すが沖田さんは気にしてないらしい
思わず溜め息をついた時沖田さんの手元にある物に目が行った、沖田さんが先程からちまちまと何かやっていると思っていたらどうやら花冠を作っているらしい、沖田さんはああ見えて手元が器用らしい、ちなみにここの観光地のルールは緩めで常識の範囲内であれば花を摘んだりしても大丈夫なのだ
沖田さんは帰る気がないようですっかり夢中になって花冠を作っている、私も観念して沖田さんの手の中で姿を変えていく花冠を隣でしゃがんで眺める事にした
「誰かにあげるんですか?」
花冠を誰にあげるのか聞くと沖田さんはピタリと手を止めた、顔を上げると沖田さんは私の方をキョトンとした表情で見ていたが、すぐにいつもの笑顔に変わった後少しだけ悪巧みをする子供のような笑顔をして沖田さんは自分の人差し指を口元に持って行った
「ナイショ」
そう言うと沖田さんはまた黙々と作業に戻った、一瞬だけだが沖田さんの笑顔を見て思わず狡いと思ってしまった、それと同時に密かに沖田さんが女性自衛官に人気がある理由が分かった気がした、サラッとあんな少女漫画のヒーローがする様な事が出来るなんて伊達に三十年生きてないなと思った頃、不意に作業中だった沖田さんが私の肩をトントンと叩いた、顔を上げると沖田さんはニッコリと笑ったままこちらを見下ろして
「ナマエ目を閉じな」
と言ってきた、何故かと聞く前に沖田さんが急かしてきたので戸惑いながらも目を瞑る、すると沖田さんが動いた気配の後頭に軽い重みを感じた、どうやら頭に何か乗せられたらしい
すぐに沖田さんから目を開けていいと言われたのでゆっくりと目を開けると満足そうに笑う沖田さんが見えた、思わず頭に乗せられた物を手で触れると少し湿ったような、冷たいような、そんな植物独特の触感がした
「なんですかコレ」
「んー?花冠」
「それは分かります」
思わず沖田さんに質問をすると沖田さんは笑いながら当たり前の事を言ってきたので即座に言い返す、すると沖田さんは困った様に頬を掻きながら視線を下に向けた、別に困らせるつもりは無かったので慌てて前言撤回しようとした時
「ナマエ、前に花が好きだって言ってただろ?」
ヘラリと笑って沖田さんは私の方を見ながらそう言った、そんな沖田さんの言葉に私は思わず目を見開いた、確かに前に沖田さんと雑談した時にポロッと口にしたかもしれないが私自身言ったかどうか覚えていないような事を沖田さんは覚えていて、しかもわざわざこうして私が花が好きだからと言う理由でこう言う場所にまで連れて行ってくれた
こんな私なんかの為に、沖田さんは何故そこまでしてくれるのだろうか、私なんて無愛想だしさっきも沖田さんを困らせる様な事を言ってしまう酷い女なのに、いや、沖田さんは誰にでもこうして優しく接してくれるのだ、私以外の人にもこうして笑いかけてくれるのだ
私がそれが嬉しくもあり悲しくもある私だけが特別と言う意味ではないのだ……いや、私は何を考えているのだ、沖田さんは私にとってただの上官だ、それ以上でもそれ以下でもない筈なのに、何故私は傷付いているのだろうか
「……あれ?ナマエやっぱりシロツメクサ嫌い?」
「えっ!?なんでですか?」
「あんまり嬉しそうにしないから……嫌ならそう言ってくれてもいいぞ?」
「そ……そんな事ないです!!ただ、沖田さんが私が花が好きなのを覚えていた事に驚いてしまって……」
嬉しそうにしない、その言葉に私は軽く自己嫌悪に陥ってしまう、無愛想な私、嬉しい癖にそれが素直に顔に出ない、それなのに嘘などをついた時にはすぐに顔に出てしまう、なんて不便な表情筋なのだろう働いて欲しい時に限って働かずに働いて欲しくない時に働くのだ
思わず自己嫌悪に陥った時、沖田さんがシロツメクサを一本新たに摘んでクルクルと回しながら私の方を見た、その一連の動作があまりにも綺麗に見えて思わず見とれそうになってしまった、惚けている私に向かって沖田さんはクスリと笑って
「花言葉って、一本や花冠になると意味が変わるのって知ってたか?」
とまるで教師が生徒に教えるような優しい口調で言った、花言葉が花の状態によって変わるのは初耳だった、色が変われば花言葉も変わると言う事は聞いた事があるが状態によっても変わるのかと思わず感心した時沖田さんがまたクスリと笑った
「まあ俺もあんまり詳しくはないんだけど……確か一本だけだと"私を思い出して"だとか"幸福"だとかそんな意味だったなぁ……」
「へぇ……じゃあ花冠になるとどうなるんですか?」
ちょっと興味が出てきて思わず食い気味に沖田さんにそう質問した、沖田さんは一瞬目を見開くと私の頭に乗った花冠に手を伸ばして触れるか触れないか位まで近付かせた、この構図だとまるで沖田さんに頭を撫でられているような気分になる
沖田さんは花冠に向けていた視線を私に向けていつもの笑った顔ではなく少しだけ訓練の時のような真剣な顔になった、そして口角だけ上げるとようやく花言葉を教えてくれた
「"結婚しましょう"って意味になるんだよ」
素敵だよねと言いながら私を見下ろす沖田さん、少しだけ頬が赤く染まっているのは私の気のせいだろうか、確認したい所だが私は恥ずかしさのあまり俯いてしまい確認は無理だ
一体何を言っているのかと怒りたくなるが顔に熱が集まりそれどころではない、思わず手を頬に当てるとやはり頬だけがやたらと熱い、アワアワとしている私に向かって沖田さんは緩い笑顔を向けながら
「あれ?ナマエ照れてる?」
と茶化してきたので思わず顔を上げて照れてないと言うがきっと言葉と行動が矛盾しているのだろう、沖田さんは沖田さんで、三十過ぎたオジサンを貰ってよなんて言ってくる始末で、私のペースはもう完全に崩されてしまった気がする
後半は茶化されたりと有耶無耶にされた気もするがこれはひょっとして期待してもいいのかと沖田さんに聞きたかったがそんな勇気は私には無い、今はただ茶化す沖田さんと茶化される私、その関係で良いと思っている