第二十八訓
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パトカーの側面はきっともうボロボロだろうが攘夷浪士を捕まえるためなので仕方がない、修繕費はきっと経費で落ちるだろう、むしろそうじゃないと困ると思いながら再び一般車両を避けながら車を追い掛ける
サイレンの音を聞いてか一般車両は避けてくれるが交差点の場合はそうはいかない、例えば私が赤信号止まっている車両を避けて進んでも交差点を横切る車の方は青信号だ、緊急事態とは言え信号無視をしているのだから気は抜けない
そう思った直後、交差点を抜けようとした途端、右側から大型トラックがこちらに向かって進んで来た、運転席にいるトラックの運転手が驚いた表情をしている顔が見えた、思わず力が抜けてしまいそうになったがここで減速すると確実にトラックと接触してペチャンコだ
アクセルを踏み付けて加速するとタイヤがまた悲鳴を上げたが無事にトラックとは接触せず交差点を抜ける事が出来た、チラリと隣を見ると副長が放心状態になっていた
「副長しっかりしてくださいよ」
「う……ん」
呆れた声でそう言うと副長は冷や汗でベトベトな顔をこちらに向けて弱々しく返事をしてきた、そんな事をしているうちに攘夷浪士の車はもう目と鼻の先だ、先程のスピーカーでの一言でも止まらなかったので実力行使しかないと考え、私は更にスピードを上げる
車体の後部を潰してしまえば車も動かなくなるだろうと考えて確実に車を衝突させる勢いでスピードを上げたのだが、散々暴れまくった私を宥めるためか屯所にいる局長から無線が入ってきた
「花無為!?何をしているんだ!!ものすっごい通報の数だぞ!!」
「仕方ないじゃないですか、犯人確保の為です……沖田と比べれば街を壊してないだけマシでしょ」
「そういう問題じゃねぇんだよ!!オイットシ!!花無為を止めろ!!このまま突っ込まれたら事故を起こしてしまうかもしれん」
「いや……近藤さんすまねぇ……俺には無理だ」
「安心してください局長、事故なんて起こしませんから、ちょっとぶつけて相手の車動かなくさせるだけです」
恐らく私の暴走運転について市民から沢山の声が上げられたのだろう、背後で電話の音が鳴り響いている状態で局長が私を止めようと声を上げたが犯人の車まであと少しなのだ、ここで引き下がる訳にはいかない、局長は副長に私を止めるように声をかけだが副長は少し前から意気消沈してしまっている
そんな副長を横目に、私はあと少しで激突できる犯人の車との距離を確認する、相手も激突されるのを恐れているのかかなりのスピードを出して逃げようとしている、チラリとパトカーに取り付けられているナビを確認するがこの先に行き止まりの道などはない
ならば速さで競うしか手はない
「副長、今からスピード上げますからね」
「ヒュッ……」
犯人の車から目を離さず前方を見据えたまま副長にそう言うと、副長は何も言わずにただただ息を飲んだ、微かに聞こえてきた副長の息を飲む音と同時に私は意を決してアクセルを踏み潰す勢いで力強く踏み込んだ
「オラァッッ!!!!」
急激なスピードの変化に車体が一瞬ガクついたが私の指示に素直に従い、パトカーは大きな音と共にハイスピードで走り出した、犯人の車の後部座席に乗っていた攘夷浪士の驚いた表情が見えた時だった
凄まじい衝撃と共に轟音が鳴り、私が運転するパトカーと攘夷浪士の車が衝突した、当然両車は動きを止めてガソリン漏れからの爆発を防ぐための冷却水が流れ込み煙が立ち込める
「犯人確保!!急げェェ!!」
「はいッ!!」
運良くまだ生きていた無線を使い他の隊士達に犯人確保を命じる、返事と共に待機していた隊士達が一斉に駆け付け攘夷浪士達に次々と手錠をかけていく、私も車が爆発などする危険があるのですっかり放心状態となった副長を連れてパトカーから降りる
「ふぅ……かなり手こずりましたが、なんとか捕まえる事ができて良かったですね副長」
「……花無為、お前……もう……怖い、怖い」
「は?何言ってんですか」
次々と確保されていく攘夷浪士達を見ながら副長に声をかけたが副長は子犬のようにプルプルと震えてそう呟く、副長が言っている言葉の意味が分からず思わず顔を顰めてしまう、この人は偶に気の弱い部分を見せる時があるのだがいつも頼れる存在な分、その時は本当に頼りないと思ってしまう
そんな副長を冷めた目で眺めているとサイレン音と共にパトカーが数台やって来て、中から慌てた様子の局長と沖田が出て来た、この二人も犯人確保に加勢するのだろうか、なんて呑気に考えていると血相を変えた局長がこちらにやって来てなんの前触れもなく私の頭に拳骨を落とした
「痛ァァッ!?何するんですか局長!?」
「それはこっちのセリフだこの暴走娘!!花無為お前一体どういう運転すれば通報が六十八件も来るんだ!!それにあのパトカーはなんだ!?グッチャグチャじゃねぇかァァッ!!」
「近藤さんの言う通りでさァ花無為さん、俺も通報の対応させられたんですから、全く……ピーピーピーピー喧しいったらねェですよ」
局長の拳骨は中々の重さで痛みから生理的に涙が出てきてしまう、頭を擦りながら局長に文句を言うとむしろ物凄い剣幕で怒られてしまい珍しく沖田からも苦言を漏らされた、二人の剣幕に言い返そうと開いた口を閉じてしまう
私が黙っているのを見て反省していると思ったのか局長は深い溜め息を着いた後、目立った怪我がなくて良かったと呟き、もう二度とこんな事はしないようにと私に釘を刺して犯人確保の為に隊士達に加勢した
残されたのは頭にタンコブの出来た私と、震えている副長、そんな副長を写真に収めている沖田だけだった、ピロリンッピロリンッと気の抜けたシャッター音が聞こえる中ボロボロになったパトカーに目を向けた
確かに犯人確保の為とは言え反対車線を走り抜け、ハウリングを起こす程スピーカーで怒鳴り散らし、パトカーが傾く程狭い道を通り、交差点では信号無視をして、更には大型トラックと衝突しそうになり……明らかにやり過ぎてしまったかもしれない
「沖田」
「なんですかい?」
ニタニタと意地の悪い笑みを浮かべて写真映りを確認している沖田に思わず声をかける、沖田は携帯から目を離さず私に返事をする、その様子からあまり興味が無い様子なのが伺えるが気にせず今日の運転で胸に誓った事を沖田に話す事にした
「私……しばらく運転控えるよ」
「…………それが良いかもしれませんねェ」
これを機に少し運転を控える事を沖田に伝えると、沖田は長い沈黙の後パトカーに目を向けて私の言葉に賛成した、ハンドルを持つと気が大きくなるとは良く聞くがこれは流石に酷すぎるかもしれない、理由があったにせよ局長の言う通り暴走してしまったのは事実だ
今回の被害は副長の精神で済んだが一歩間違えたら命を落としていたかもしれない、そう思うとほんの少しだけ背筋がゾゾゾッとしてしまう、今後はしっかりと安全運転をしようと心がけたのだった
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