第二十五訓
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私達が戦う気だと言う事を天人達も理解出来たようだ、怖気付いていた天人達が各々武器を構える、しかしその表情はどこか戸惑いを隠せていない様子で、ちょっと脅しをかければそのまま逃げそうな雰囲気だった
「行けェェ!!あの三人の首をとれェェ!!」
硬直状態の天人達に発破をかけたのはピエロのようにも見える真っ白な肌と赤や緑が目立つメイクをした背丈の小さな天人だった、そもそも天人がメイクをするのか謎なのだがそんな事を考えている暇もなく、周りの天人達が野太い声を上げた
天人達が声を上げこちらに向かってくるのを見て左右にいた桂と銀時が走り出す為に体を少し倒した、それを見て私も体を倒し三人同時に天人達に向かって走り出す
真っ先に立ちはだかってきた天人を薙ぎ払うように斬り、道が拓けたと同時に私達はそれぞれ左右中央の天人に目を向けた、桂は左側を銀時は右側を私は中央を倒す、それは声をかけなくてもそれぞれが理解していた
銀時が軽やかに動き天人に跨りながら攻撃を仕掛けているを見て私は目の前に居る天人の急所を狙いながら刀を突く、少し後ろでは桂が二体の天人と戦っていた、片方を倒すためタイミングを合わせて天人を突き刺していた刀を大振りで斬り上げる、そしてそのまま桂と戦っていた天人の脳天を目掛けて刀を振り下ろし叩き斬る
ブシャッと血が噴き出す音が刀を伝わり自分の手に響くが特に気にせず次の天人に目を向けて再び刀を振るう、丁度桂の背後にいた天人を斬った時に雪崩込むようにどこから手に入れたのか短刀を咥えた銀時がやってきた、が、すぐに咥えていた短刀を手に取り銀時は別方向に居た天人に攻撃を仕掛ける
桂は槍を使う天人と交戦している、そんな桂の背後を卑怯にも狙う天人がいるので私はそれを叩き斬る事にした、二体程倒した時槍使いを片した桂が私の背後にいた天人を切り捨てる、少し向こうでは銀時が重傷とは思えない程の身のこなし方で天人と交戦していた
咥えていた短刀を天人の首元に突き刺すとすぐに薙刀を奪い取り、リーチが長いのを物ともせずに薙刀を振り回す銀時、そんな銀時を目指して天人を斬り捨てながら進む、桂も同じように天人を斬り道を拓いて行く
再び銀時の背後に立つ体勢になった時だった、バッタに似た姿をした天人が三体空高く飛び上がったのが見えた、タイミング悪く桂も私も別の天人と交戦をしていて相手の攻撃に対応できるか不安だった、しかしその不安はすぐに解消される
どこかの高所を利用したのか、同じように空高く飛び上がった銀時が三体の天人を倒したからだ、空中で一体に薙刀を刺した後もう一体の頭を蹴飛ばし、落ちてくる間に残った一体を両手に持っていた刀の一本を使い地面に突き刺し、先程頭を蹴飛ばした奴を残った刀で斬り、勢いを殺すため身体を回しながら綺麗に着地する
そんな銀時が天人と共に突き刺した刀を桂が掴み、まだ息があったのか先程のバッタのような天人をもう一度斬った、紫色の血が飛び散るのが見えた時着地した銀時の隙をついて迫って来る天人をすかさず斬り倒す
三人合流する形になったが、すぐにそれぞれの目の前に天人がやってくるので交差する形で天人を斬る、今度は真っ赤な血飛沫が私達の周りに飛び散った
「ひっ……ひるむなァァ!!」
「押せ!!押せェェ!!」
この頭数の差を物ともしない私達を見て焦ったのか、どこからか天人達の声が聞こえてきたが気にする事なく目の前にいる天人を斬り道を進んで行く
途中、自分の持っている刀が刃こぼれを起こしていたのに気が付き、天人の持っていた斧の様な形の武器を奪い取る、大振りの武器なので振り下ろしか横薙ぎの攻撃しか出来なくなるがこの天人達には充分だろう
斧を振り回しながら目の前にいる天人をただただ斬っていく、しかし相手も馬鹿ではない、慣れていない形状の武器ではどうしても扱いが雑になるようで刀の時より数回多く攻撃を防がれてしまう、が、弾き返される反動を利用して更に加速させた一振を浴びせると天人の身体はいとも簡単に真っ二つになった
返り血がべっとりと手に付着した時だった、唸り声の様な低い声を上げながら他の連中とは一回りも二回りも身体が大きな天人が桂に向かって棍棒を振った、しかしそんな大振りは刀を持った桂には通用しない
桂は身を屈めて大振りの攻撃を避けながら天人の巨体目掛けて刀を振った、一瞬両者の動きが止まるが膝から上の部分から血を吹き出し倒れ込む天人、桂の前で膝を付く形になった天人に桂は静かに刀を構えて腹部を一刀両断した
そんな桂と天人の戦いを横目に私は銀時と共に集まってくる天人達を斬っていく、相変わらず足癖の悪い銀時が天人に蹴りを浴びせ動きを一瞬止めた隙に思いっ切り斧を振り下ろす、それを数回繰り返せば手に持っていた斧も刃こぼれを起こす
丁度倒した相手が持っていたのが刀を模した物だったのでありがたく頂戴して巨大天人を倒した桂も加わった状態で、今度は三人で天人達を片していく
「銀時ィ!!花無為ィ!!」
「あ?」
「なに?」
天人を斬り進みながら不意に桂が私達の名前を呼んだ、天人を斬る手を止めずに返事をすると桂が続けざまに話し出した
「世の中というのは、なかなか思い通りにはいかぬものだな!!国どころか、友一人変えることもままならぬわ!!」
天人の攻撃を避けてはそれを返すように隙をついて刀を急所に突き刺す桂は私達に向かって半ば叫ぶようにそう言った、高杉の事だ、桂は高杉を変えようとしていたのだ、手遅れになる前に手を差し伸べたがそれは遅すぎた、思わず顔を曇らせてしまう
「ヅラァ!!お前に仲間なんていたのか!?そいつはァ勘違いだ!!」
「ッグフ……フフフッ」
「斬り殺されたいのか貴様ァァ!!花無為笑うなァァ!!」
桂の言葉に顔を曇らせていたのも一瞬で銀時の言葉に笑いを我慢できずに笑い出してしまう、そんな私達に桂は半ば怒ったように怒鳴る、これがお茶でも啜ってほのぼのとした雰囲気の中で交わされる会話なら実に楽しい時間だっただろう
しかし現実は天人の肉体を斬り裂く音や、それと同時に噴き出す血飛沫、それによって鼻腔をつくむせ返るような血の臭いが立ち込める戦場で交わされる会話だ、楽しいとは正反対のこの状況にその会話は実に不釣り合いな気がする
天人を斬りながらも二人の戦況に意識を向けていると、先程私達の首を取れと叫んでいた真っ白な肌をした天人が銀時に向かって行った、高く高く飛び上がり短刀を銀時に向かって投げるが銀時は天人達の合間を縫って右に左に動き、その攻撃を避けていく、当然短刀は天人達にも向かって行き二、三人の天人が短刀を受けて血を吹き出していた
同士討ちと言う実に愚かな行為をした天人は飛び道具では銀時を仕留める事が出来ないと分かったのか着地をするとすぐに銀時に向かって行った、天人の一太刀を安易に刀で受け止め更に続く攻撃を紙一重で躱していく
数回、鉄と鉄がぶつかり合う甲高い音が響く、そして銀時が刀を両手で持ち大きく振りかぶった、咄嗟に天人は刀を交差させて攻撃を受け止めようとする
しかしそれは銀時のブラフだ、大きな隙が出来た天人の両手に向かって銀時は勢い良く蹴り上げた、天人の短刀が空高く舞い上がる、振りかぶられた刀に意識が向いていた天人は驚いた表情を浮かべていた
そんな天人に向かって銀時は静かに刀を振り上げて大きな一太刀を浴びせた、血を吹き出し、力無く倒れた天人の傍に軽い音を響かせながら短刀が落ちる、厄介な天人を倒した銀時の傍で桂と私は野次馬のように集まってきた天人達を斬っていく、私達を見て集まっていた天人達が一瞬怯んだがすぐに武器を構える
「銀時!!花無為!!」
「あ"あ"あ"!?」
「なぁに!?」
再び桂が私達に声をかける、銀時が少し苛立った様子で桂に返事をした、私も今は正直桂の言葉に集中している暇はないので少々声を荒らげてしまう、が、返事をすると同時に私達三人は背中を合わせてお互いがお互いの背後を守るように立つ
散々動き回ったからか三人共息が上がっている、私達はもう若くないという事だろうか、いやこの三人の中で一番運動をして日々鍛錬をしているのは私のはずだ、だから私はまだ大丈夫だと信じよう、まだ若い筈だ
なんて事を考えていると荒い呼吸を繰り返したまま桂が話し出した
「ハァ…お前らは…変わってくれるなよ……ハァ…お前らを斬るのは…骨がいりそうだ…」
眼前の天人を見据えたままそう話す桂の言葉に思わず苦笑いをしてしまう、桂と本気で斬り合うのを想像してしまったからだ、現状私達は敵対関係ではあるが今のように利害の一致で力を合わせる時もある、その関係があるのとないとでは全く立場が異なるからだ
本気で、命をかけて桂や銀時と戦うとなると……いや、やはり想像したくないな
「一番……大変そうなのは、銀時だね……ハァ……アンタは敵に回したくない……」
思わず銀時の方を向きながらそう呟く、銀時は敵に回すと厄介な事になるのは目に見えている、色々と考えると圧倒的に骨がいるのは銀時だ、私の言葉を聞いて銀時はほんの少しだけ口角を上げた
「ヅラァ、花無為ィ、お前らが変わった時は…ハァ…俺が真っ先に叩き斬ってやらァ…」
私達と同じ様に息を荒くしてそう言った銀時だったが少し息を整えると真剣な表情をして、少し視線を上へやった、釣られて私も上を見るとそこは大きな鉄製の船に乗り込み、甲板からこちらを見下ろしている高杉の姿が見えた、桂も高杉の存在に気付いたようで微かに声を上げる
私達三人は特に声をかけた訳でもないが呑気に煙管を吹かしている高杉に対して揃って同じような行動に出た、ゆっくりと刀を持っている方の腕を上げて刀の切っ先を高杉に向けた
「高杉ィィィ!!」
「そういう事だ!!」
銀時が刀を向けたまま高杉に向かって叫び、続けて桂も声を上げる、二人の声を聞いて高杉は私達を見下ろしながら不敵に笑った、そんな高杉に向かって銀時が先陣して声を上げる
「俺達ゃ次会った時は、仲間もクソも関係ねェ!!全力で……」
「「「貴様/アンタ/てめーをぶった斬る!!」」」
銀時に続いて三人同時に高杉に向かって宣戦布告をした、私達がそう叫んだのにも関わらず当の高杉はまるで他人事のように興味が無いような表情をしている、次とは言わず今斬ってやっても良いが分が悪いので今は我慢する事にした
「せいぜい、街でバッタリ会わねェよう、気をつけるこった!!」
銀時が続けざまに高杉に言ったのと同時に私達はその場から撤退する事にした、合図を出したのは桂で、桂の合図と共に刀を投げ捨てて目の前の壁を飛び越えて船から脱出した
ゴオッと凄まじい風の音が鼓膜を揺らす、まさか二度も船からの紐なしバンジーをするとは思わなかったが、今回に関しては桂が密かに脱出方法を私達に伝えていたので安心して飛び降りる事が出来た、風の抵抗を受けながらもなんとか位置を移動して桂にしがみついた、銀時も私の反対側にしがみついている
私達がしがみついたのを見て桂は勢い良くパラシュートを開いた、桂は上着の下にパラシュートの装置を背負っていたようだ、流石は逃げの小太郎と言うべきか
高杉の船から天人達の怒鳴り声が聞こえて撃ち落とすつもりか爆発音が周りに響くが、こんな小さな標的に当てる事はほぼ不可能だろう、怒号と爆発音が響く中で私はそう思いながら桂にしがみつく力を少し強めた
「ウァッハハハハハ!!さ~らばァァ!!」
「用意周到なこって、ル●ンかお前は」
「本当、まだ何か隠してそう……後で事情聴取しよ」
天人達を挑発するような声を上げた桂に銀時は某大泥棒の名前を使いながら桂の用意周到な部分を指摘した、そんな銀時の言葉に私は深く深く頷く、実際桂の身ぐるみを改めたら様々な逃走道具が出てきそうだ
「ルパ●じゃない、ヅラだ、あっ間違えた桂だ」
「間違えんなよ」
「うるさいぞ花無為、間違いは誰にでもあるだろう、それに俺は事情聴取なんてお断りだ」
銀時の言葉にいつものように返した桂だったが自分で"ヅラ"と言う桂、思わずツッコミを入れてしまったがすぐさま桂に怒られてしまった、事情聴取につてはほとんど冗談だったが桂は少々本気に捉えたらしい、真剣な表情と声色で私に言ってくる
桂の言葉を否定も肯定もせずそのまま何も答えずに周りの風景に目を向けた、パラシュートでゆっくりと降下してあるが鼓膜をゴォォと揺らす風の音が自分が今空にいる事を教えてくる
もしあの時、攘夷戦争の時に私にもこのパラシュートがあったのなら、天人の船に乗り込んですぐに脱出できていたのなら、何かが一つ違えば私達はこうして刀を向け合う事も無かったのだろうか
「しかし、まさか奴も……コイツを持っていたとはな……」
不意に桂がそう呟き、懐に入れていた教科書を取り出した、紅桜の一太刀から桂を守ったその本はパタパタと音を鳴らしながら風に靡いていた
「……始まりはみんな同じだった……なのに、随分と遠くへ離れてしまったものだな……」
「……そうだな」
教科書を見つめた後哀しそうな目をしながら私達の頭上にある高杉の船を見上げた、桂の言葉に思わず同意してしまう、私も先程似たような事を考えていたからだ、しかし私達はもう元には戻れない、昔のように笑い合える日は来るのだろうか
「銀時、お前も覚えているか?コイツを……」
不意に桂が銀時に声をかけた、言われてみれば銀時がこの教科書を手にしていたのは見ていない、高杉も桂も私も、懐に入れていた教科書に護られたから自然と銀時もだと思っていたが、どうやらそうでもないようだ
銀時は高杉を気にしていたのか、船を見上げていたが桂の声を聞きゆっくりと視線を地上へ向けた、そして小さく返事をした後、教科書についての返事をした
「あぁ、ラーメンこぼして捨てた」
いつもの声色でそう言う銀時の言葉を聞いて、思わず銀時らしいなと思い私は笑ってしまう、それと同時に桂の呆れた声が頭上から聞こえてきた