第二十五訓
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船の至る所から爆発音や人と天人の叫び声が響き渡る、少し離れた位置から万事屋の声が聞こえてきたのは気のせいではないだろう、私と桂は春雨の船から止めどなく沸いて出てくる天人を斬りながら通路を進んで行く、皆は無事だろうか、そんな事を思いながら歩みを進めて行く
何人目かの、いや、何匹目かの天人を斬り倒した時だった、ようやく道が開けてエリザベス達の姿が見えた、それと同時に万事屋達の威勢の良い声が聞こえてくる、その声に反応するかのように一人の天人が声を上げたが桂が斬り倒した天人を見て言葉を飲み込んだ
「どけ、俺は今虫の居所が悪いんだ」
天人の返り血を頬に少し浴びながら桂は集まっている天人達に向かって冷たく言い放った、その気迫は後ろに居た私も思わず息を飲んでしまう程だった、まさか高杉との一件でここまで桂がキレるなんて思ってもみなかった
「桂さん!!」
甲板で桂の帰りを待っていた桂一派の一人が声を上げる、エリザベスも近くに居て桂のキレ具合に驚いたように口を開いてこちらを見ていた、ふと周りを見ると新八の肩を借りながら立っている傷だらけでボロボロの銀時の姿があった、岡田似蔵にしばらく意識が無くなる程の重症を負わされたのに先程同じ人とは思えない程の戦闘を行ったのだ傷だらけなのは当然だろう
しかし、傷だらけではあっても、新八の肩を借りながら立っていても、それでも銀時は生きている、あんな状態で岡田似蔵に勝ったのだ誇るべきだろう、思わず銀時に駆け寄って"よく頑張った"と声をかけたい所だったが今は敵の本拠地、そんな事をしている余裕はない、すぐさま万事屋の三人とエリザベスを含めた桂一派達と背中を合わせて守備を固める
「…よォヅラ、どーしたその頭失恋でもしたか?」
「だまれ、イメチェンだ」
お互いの背中を守りつつも銀時と桂はそんないつも通りの気の抜けた会話をする、岡田似蔵に殺されたと言わんばかりに行方不明になっていた桂に再会して一番に話す事がそれかと思わず溜め息を着いてしまうが銀時は元々こう言う奴だったと思い出した、桂も表情一つ変えずに返答する、桂の返答を聞いて銀時は少しだけ嬉しそうに口角を上げる
「花無為は?そのシケた面、お前も失恋か?」
「……んー、かもなぁ」
「えっ!?」
「冗談だ」
銀時は続けざまに私の方にも似たような言葉をかけてきた、失恋と言うより少しだけ昔の事を思い出しすぎて一人で哀しくなっていただけだったがある意味喪失感はあったので仄めかす様な返事をすると、銀時はかなり驚いた様子で勢い良く振り向いて、信じられないと言った表情で私を見つめてきた、なんなら銀時だけでなく桂も驚いたようにこちらを見ている
失恋と言う事を信じられてしまったら、まるで私が高杉の事を好いていたみたいな事になってしまうのですぐさま冗談だと言って訂正する、すると銀時も桂も呆れたように深く溜め息をついた
「貴様こそどうしたそのナリは、爆撃でもされたか?」
「ズタボロだし、顔も傷だらけ……お風呂でしみそう」
「だまっとけやイメチェンだ」
「「どんなイメチェンだ」」
お返しと言わんばかりに桂が銀時の満身創痍な姿に茶々を入れる、すかさず私も便乗して銀時のボロボロ具合に茶々を入れた、そんな私達の言葉に銀時は面倒くさそうな口調で先程の桂の真似か、イメチェンだと言い返してきた、だが明らかにイメチェンなどでは無いので思わず桂と一緒にツッコミを入れてしまう
そんな私達の緩い雰囲気とは対象的に周辺には一触即発の緊張感がピリピリと広がっていた、目の前には鋭い眼光でこちらを睨み付けてくる天人達、そんな中周りにいる桂一派の一人が周囲を気にしながら桂に声をかけた
「桂さん!!ご指示を!!」
「退くぞ」
「えっ!!」
桂に天人達をどう攻め落とすか聞いた仲間に桂は素早くこの場から退く事を伝えた、てっきり戦うと思っていたのだろう、驚いた声を上げる仲間に桂は淡々と理由を話し出す
「紅桜は殲滅した、もうこの船に用はない……後方に船が来ている、急げ」
確かに今回の本当の目的は高杉と戦う事でも、春雨相手に大暴れする事でもない、紅桜の脅威を阻止する事だ、それなら既に桂が爆弾で吹っ飛ばして目的は達成している
つまりここで無理に天人達と戦うと逆に無駄な被害が広がるだけだそれなら退いた方がこの戦いに勝つと言う事だ
相変わらず桂の頭の回転が早く兵をどのように動かせば良いのか、どのタイミングで退けば良いのか、その辺の策の講じ方は本当に目を見張る物がある、だからこそ今まで私達真選組と鉢合わせしても全く捕まる事なく逃げる事が出来るのだろう、感心していると少し遠くの方から船が近付いてくる音が聞こえてきた、どうやら桂が言っていた船が到着したようだ
「させるかァァ!!」
「全員残らず狩りとれ!!」
私達の会話を聞いていた様で天人達がそう叫びながら逃さまいと私達に攻撃を仕掛けてきた、人間とは異なる身体能力の素早いスピードでこちらに向かってくる天人達、幸い私と桂、銀時の方向から襲いかかってきたので二人と息を合わせて三人でそれを迎え撃つ
自然と足を揃えて一歩前へ踏み出し、桂と私は既に手にしていた刀で天人を斬り倒す、丸腰だった銀時は天人の手を掴み素早く武器の刀を奪い取り天人を斬り倒した、あまりにも早く前衛が斬り倒されたのを見て周りの天人達は怖気付いて動こうとしない
むしろそれは好都合で今なら無事に新八と神楽を逃がす事が出来る、もちろん後方の船に向かうまでの間は桂一派に二人を任せるつもりだ、そうなれば自然とこの場を抑え、退路を開くのは誰がやるのかが決まる
「退路は俺達が開く」
「安心して」
「行け」
目の前にいる天人から目を離さずに三人でそう言った、ズタボロの銀時と紅桜に斬られた傷がまだ完治していない私と桂に任せるのはさぞ心配なのだろう、背後の方で新八と神楽が戸惑う声が聞こえてきた、しかしこれから先は恐らく攘夷戦争の時に似た様な凄惨な風景になるだろう、そんな血なまぐさい所を二人には見せたくない
それを汲んでくれたのか、エリザベスが一瞬の隙を突いて二人を抱え上げて素早くその場から撤退した、神楽が私と銀時の名前を呼ぶ声が段々と遠く離れて行くのを聞きながら刀を構えた